2025年7月29日火曜日

「イタリアの金メダリスト」マウリシオ・ステッカ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBO世界フェザー級王者。コリン・マクミラン戦(WBO戦)、ヘルブ・ジャコブ戦(欧州王座戦)を紹介します。


マウリシオ・ステッカ(イタリア)

身長169cm:オーソドックス(右構え)


コリン・マクミラン 12R 判定 マウリシオ・ステッカ

(WBO世界フェザー級タイトル戦、1992年)

「イタリアの金メダリスト」マウリシオ・ステッカ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:マクミランがタイトル獲得。1984年、ロサンゼルス・オリンピックのバンタム級で金メダルを獲得したステッカ(兄ロリスはWBA世界J・フェザー級王座を獲得した「ボクシング兄弟」)。ミラノでのデビュー以来、イタリアを主戦場に連戦連勝(アメリカでも試合)。フリアン・ソリス(元WBA世界バンタム級王者)に勝利後、新設されたWBOのフェザー級王座の初代王者決定戦に出場。ペドロ・ノラスコをTKOして王者に(当時は「超マイナー王座」だったWBO。フェザー級では後にナジーム・ハメドが王者になり、WBO王座も「立派な世界王座」になった)。初防衛に成功したが、実力者ルイ・エスピノサにTKOで初黒星、王座陥落。再び王座決定戦でタイトル奪回。フェルナンド・ラモス、ティム・ドリスコル相手に二度の防衛。マクミラン戦は三度目の防衛戦であり、これまで44勝(22KO)1敗、29歳。22勝(10KO)1敗の挑戦者マクミラン(26歳)はロンドン出身の黒人で、ニックネームは「Sweet C」。デビュー当初に敗北を喫したが、以降は連勝。英国王座(フェザー級)獲得、防衛。英連邦王座(フェザー級)も獲得。残すターゲットは世界王座のみ、といったところ。挑戦者の地元、ロンドンのマスウェル・ヒルでの一戦。スリムなボクサータイプの二人がジャブの応酬。マクミランは典型的なアウトボクサー。ディフェンスしながらジャブを飛ばし、突き刺すような右ストレート。サウスポーに時折チェンジして左フックをかます。ただ、パワーはそこそこ。ステッカはワンツー、右フックを使うが、攻めるパワーに乏しいうえにディフェンス、クリンチされる。マクミランのジャブが目立つ展開が続き、12Rにはマクミランがワンツーを当てて優勢。12R終了。セコンドに肩車されるマクミラン。判定は3-0(二人のジャッジは大差をつけた)。マクミランがアウトボクシングでそのまま勝利。ステッカは残念。相手を追い込む攻めに欠け、敗北。当時WBOはマイナータイトル。そのポジションに合った試合ぶりだった印象。その後のマクミラン。初防衛戦でルーベン・ダリオ・パラシオにTKOで敗北。王座奪回を目指して新王者スティーブ・ロビンソンに挑戦したが、判定負け(ハメドはロビンソンをKOして世界王座初戴冠)。以後、連勝して英国王座(フェザー級)を取り戻したが、ポール・イングルに敗れて引退。世界王者だった時期は短かった。)


ヘルブ・ジャコブ 11R TKO マウリシオ・ステッカ

(欧州フェザー級タイトル戦、1993年)

「イタリアの金メダリスト」マウリシオ・ステッカ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ジャコブがタイトル獲得。マクミラン戦後、ファブリス・ベニシュを2-1で下して欧州王者になったステッカが初防衛戦。挑戦者ジャコブはフランス・カレー出身。デビューから連勝。フランス王座(フェザー級)に挑戦してTKO負け、初黒星。二度目のTKO負け後、二連勝でステッカに挑戦。フランスのブーローニュ=シュル=メールでの一戦。互いにジャブ。ジャコブは積極的で、右ストレートからの左ボディ打ち、右ストレートからの左ジャブなどのコンビネーション。ステッカはジャブ、ストレートなどで応戦するが、攻められてクリンチ。3R、ステッカが力強いストレート、フック攻撃で優勢。その後も中間距離での打ち合い。フック連打のジャコブ、ジャブ、ストレートのステッカ。しかしながら、ステッカ。勢いが続かず、接近戦ではクリンチ多用。11R、ステッカがキズのドクターチェック。試合終了。ジャコブが負傷により新王者に(ヨーロッパでは「負傷した方が負け」という伝統がある。それがバッティングによるものだったとしても)。残念だったステッカ。パワフルなシーンもあったが、この人は戦闘タイプではない。クリンチで休むシーンが多かった。その後の二人。再戦はKOでステッカ勝利、王座奪回。ジャコブはその後、中堅相手に試合をしたが、王座戦はステッカとの再戦が最後となった。王座を取り戻したステッカはまたしても初防衛戦でTKO負け、引退(1993年)。1995年にカムバックしてイタリア王座(J・ライト級)獲得、完全引退。連戦連勝だった頃がベスト。もう少しパワーがあれば、といった選手だった。) 

2025年7月28日月曜日

「強打の英国人」ポール・ホドキンソン「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBC世界フェザー級王者。世界王者になる前のレイモンド・アルマンド戦、ピーター・ハリス戦(再戦)ほかを紹介します。


ポール・ホドキンソン(イギリス)

身長163cm:オーソドックス(右構え)


ポール・ホドキンソン 2R TKO レイモンド・アルマンド

(欧州フェザー級王座決定戦、1989年)

「強打の英国人」ポール・ホドキンソン「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

2R:左フック、左フック、右フックで3度、アルマンドがダウン

(感想:ホドキンソンがタイトル獲得。「いかにも英国人ボクサー」といった感じのホドキンソン。ジャブを連打してワンツー、左フック、の正統派。「ビートルズ」で有名なリバプール出身。アマチュアで国内王者になった後、プロ転向。無敗のまま英国王座(フェザー級)を獲得し、防衛にも成功。ワンランクアップで欧州王座を狙う。これまで13勝(12KO)1分、23歳。アルマンドはフランス・セーヌサンドニ出身。欧州J・ライト級王座に挑戦したときは2-0で敗北。後のIBF世界J・フェザー級王者ファブリス・ベニシュに判定勝ちしたが、その次の試合は判定負け。再起戦でホドキンソンと勝負。北アイルランド・ベルファストでの一戦。ガードを固めて前進するホドキンソン。速いジャブ、右ストレート。基本形はバリー・マグギガンに似ているが、ホドキンソンはショートフックに良さ(強くて正確であるうえにダブルで打ち込むバランスの良さ)。アルマンドは開始から足を使ってジャブ連打。相手から距離を取る作戦。2R、左フックでアルマンドがダウン。立ったが、またしても左フックで二度目のダウン。接近戦。対抗するアルマンドだが、右フックで三度目のダウン、KO。ホドキンソンが正確なパンチで快勝。強さだけではなく、タイミングを捉える巧さもあった。アルマンドは消極的。見た感じでは悪い選手ではなかったが、相手の勢いに押されたか。その後、アルマンドはシェリー・ジャコブ(後、WBC世界J・フェザー級王座獲得)らを相手に負けが込んで引退。)


ポール・ホドキンソン 9R TKO ピーター・ハリス

(欧州・英国フェザー級タイトル戦、1989年)

「強打の英国人」ポール・ホドキンソン「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ホドキンソンがタイトル防衛。英国王座&欧州王座の二冠王ホドキンソン。前英国王者ハリスと再戦。初戦は12RでのTKOでホドキンソンが新英国王者に。再戦はどんな内容となるか? 挑戦者ハリス(27歳)はウェールズ・スウォンジー出身の白人で、これまで13勝(5KO)6敗2分。これがホドキンソンに敗れた再起戦となり、前回の試合から一年以上間が空いている。ウェールズのポート・タルボットでの一戦(レフェリーはジョン・コイル)。ホドキンソンがいつものように左手を忙しく動かしながらジャブで前進。開始から攻めの姿勢。ハリスはガッチリした身体でしっかりしたパンチを打つ男。攻めてくるホドキンソンにジャブ、左フック連打などで応戦。共にダッキングしながら力強いパンチ。しかしながら、ハリスは真っ直ぐ攻めるクセがあり、攻撃の時に微妙に打たれる。7R、サウスポーに少しチェンジしたホドキンソンだが、あまり意味無し。9R、ハリスが右目のドクターチェック。キズによりTKO、試合終了。ホドキンソンが積極さで勝利。ハリスは敗れたが、なかなかタフだった。その後のハリス。後のWBO王者スティーブ・ロビンソンに判定負け。ローカル王座(フェザー級)を獲得できたが、ウェルカム・ニシタ、ジンミ・ブレダルらに敗北。英国の実力者にとどまった。)    


ポール・ホドキンソン 8R TKO フアリ・ベンジェレ

(欧州フェザー級タイトル戦、1989年)

「強打の英国人」ポール・ホドキンソン「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

8R:右フックでベンジェレがダウン

(感想:ホドキンソンがタイトル防衛。ハリス戦の次の試合。挑戦者ベンジェレ(29歳。綴りは「Farid Benredjeb」。読みにくい名だが、リングアナの発音によると「フアリ・ベンジェレ」だそうだ)はフランス人で、これまで25勝8敗2分。マウリシオ・ステッカに判定負け、ベルナルド・ピニャンゴとドロー、フランス王座(フェザー級)獲得、欧州フェザー級王座決定戦で2-1の敗北。それから五連勝で二度目の欧州王座挑戦。英国カークビーでの一戦。開始からジャブ、ストレート、フックの応酬。ベンジェレが右ストレートからの左フックなど。ホドキンソンは実に力強いコンビネーション(特に左フックが強く、左フックダブルからの右ストレート、右アッパーからの左フック、右ボディ打ちからの右アッパー、など)で手数。打ち返す勇敢なベンジェレだが、連打されて動きが止まるシーンも。8R、右フックでベンジェレがダウン。立ったが、正確な攻撃を食らってセコンドからタオル投入。ホドキンソンが素晴らしい攻めで勝利。マイク・タイソンのような激しいコンビネーションを精力的にぶちかましていった。ベンジェレも良い選手。負けたが、手数を出して反撃。より相手の方がエネルギッシュだったのが敗因。その後のベンジェレ。勝ったり負けたり。ラストファイト(1994年)の相手はジュリアン・ロルシー(後のWBA世界ライト級王者。畑山隆則に日本で勝利)で、判定負けだった。)


ポール・ホドキンソン 3R KO ガイ・ベルユーグ

(欧州フェザー級タイトル戦、1990年)

「強打の英国人」ポール・ホドキンソン「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

2R:右ストレートでベルユーグがダウン

3R:左フックでベルユーグがダウン

(感想:ホドキンソンがタイトル防衛。ベンジェレ戦後、マルコス・ビジャサナ(メキシコ)と空位のWBC世界フェザー級王座を争ったホドキンソンだが、ビジャサナの異常なタフさ&強打に屈してKO負け。再起戦は欧州王座防衛戦。挑戦者ベルユーグ(30歳)はフランス人で、これまで12勝(9KO)6敗。連勝しては連敗のキャリアだったが、フランス王座(フェザー級)獲得、二度の防衛。三連勝の勢いでホドキンソンに挑戦。英国ウェンブリーでの一戦。距離を取りながら速いジャブを出すベルユーグ。右フックからの左ジャブなどジャブの使い方が巧い。ホドキンソンはKO負けの影響を感じさせない攻め。ジャブで前進し、ストレート、得意のフック。2R、右ストレートでベルユーグがダウン。3R、強烈な左フックでベルユーグが大の字にダウン。その凄まじい倒れ方にセコンドが直ぐさまリングインして試合終了。ホドキンソンが豪快な勝利。ダウンを奪ったパンチはいずれもタイミングとパワーが良いものだった。ベルユーグは良いボクサー。しかし、長いパンチを使うため、ガードに隙があったようだ。その後のベルユーグ。フランス王座戦で活躍。最後は連勝で、王者のまま引退。)


その後のホドキンソン 

ベルユーグ戦の次の試合は一年以上間が空いて、ビジャサナとの再戦。判定で下してWBC王者に。スティーブ・クルス、ファブリス・ベニシュ、リカルド・セペダを相手に三度の防衛。四度目でグレゴリオ・ゴーヨ・バルガスにTKO負け、王座陥落。それから約一年後の再起戦はスティーブ・ロビンソンのWBO世界フェザー級王座への挑戦。これにKO負けで引退。思ったほど王者としては長続きしなかったが、フェザー級は競争が厳しい世界。あのビジャサナを破っただけでも充分「高評価」に値するだろう。 

 

「右手のハンデを克服」ハワード・ウィンストン「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBC世界フェザー級王者。世界王者になる前のベビー・ルイス戦、ラロ・ゲレロ戦、レニー・ウィリアムス戦を紹介します。


ハワード・ウィンストン(イギリス)

身長165cm:オーソドックス(右構え)


ハワード・ウィンストン 10R 判定 ベビー・ルイス

(J・ライト級戦、1964年)

「右手のハンデを克服」ハワード・ウィンストン「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ウェールズ出身の白人ウィンストン。10代の頃に工場での仕事中に右の手指3本を事故で失った過去。左パンチを中心とした戦いでアマチュアでは立派な戦績(大会で優勝したことも)。プロではこれまで二つの敗北があったが、英国王座、欧州王座(いずれもフェザー級)を獲得。ルイスはキューバのサンチアゴ・デ・クーバ出身。ホセ・レグラ、ビセンテ・サルディバル(共に後、ウィンストンと対戦)に勝利。サルディバルとの再戦にTKO負け。直前の試合はメキシコで判定負け。英国ウェンブリーでの一戦。左ジャブ連打、左フックのウィンストン(ややアップライトスタイル)。右フックは横殴りだが、ワンツーを時折ヒットさせる。ルイスはジャブ、ワンツー、左右フックボディ連打。バランスが良く、左フックをダブルで打ち込んだり、右クロスを狙ったり。中間距離での応酬。左フック連打からの右ストレートなど良い攻めを見せるルイスだが、ウィンストンはクリンチで接近戦をなるべく避けようとする。共に良いところを見せて10R終了。レフェリーはウィンストンの手を上げた(PTSによる判定)。ウィンストンがジャブ、ワンツーで勝利。やはり右パンチは軽めだったが、良いワンツーを決めるシーンもあった。ルイスは惜しい。KOを狙って激しく攻めるタイプではないため、相手のクリンチで攻撃がとぎれがちになってしまった。その後のルイス。アントニオ・アマヤらに連敗するなどスランプ。アメリカに主戦場を移し、連勝。カリフォルニア州ライト級王者に。その次の試合でTKO負けして引退。)


ハワード・ウィンストン 5R TKO エデュアルド・ラロ・ゲレロ

(フェザー級戦、1965年)

「右手のハンデを克服」ハワード・ウィンストン「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ルイス戦後、欧州王座を防衛したウィンストンがノンタイトル戦。ゲレロはメキシコ・パチュカ出身。1956年、デビュー。ジョー・メデルに判定負け&KO負け、米倉健司に判定勝ち。メキシコ王者(フェザー級)になったが、防衛できず。イスマエル・ラグナに判定負け、小林弘に判定勝ち、ビセンテ・サルディバルに判定負け。このところ三連敗でウィンストン戦。英国ウェンブリーでの一戦。手数で押すウィンストン。足でリズムを取りながらジャブ連打、ワンツー、左右フックボディ連打。左フックでカウンターを取る巧さも。ゲレロはジャブ、右ストレートを出すが、単発。攻めるが、クリンチされて不発。5R、ワンツーが入ったところでレフェリーストップ。ウィンストンが手数&クリンチで勝利。ゲレロはもう一つ。実力者に勝ったことがあるとは思えない不器用さ。続行可能だったが、打たれていたためストップされた。次の試合もKO負けで引退。)


ハワード・ウィンストン 8R TKO レニー・ウィリアムス

(英国&欧州フェザー級タイトル戦、1966年)

「右手のハンデを克服」ハワード・ウィンストン「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ウィンストンがタイトル防衛。ゲレロ戦の次の試合でホセ・レグラを判定で下したウィンストン。ビセンテ・サルディバルの世界フェザー級王座に挑戦して判定負け。引き続き欧州王座を防衛。英国王者でもあり、ウィリアムスと二つの王座を懸けて対戦。挑戦者ウィリアムスはウェールズ・マエステッグ出身。デビューから連勝。フランキー・テイラーに二度のKO負け。ウェールズ王座(フェザー級)獲得、防衛。ウェールズのポート・タルボットでの一戦。ウィリアムスはトリッキーなサウスポー。ダッキングしながら右ジャブ、フック。パワフルだが、粗い攻め。そんなウィリアムスにウィンストンは正確なパンチ。ジャブ、ワンツー、右ストレートからの左フック。特に効果的なのはインサイドからのアッパー気味右フック。打たれるウィリアムスは強引に接近してフック、ボディ攻撃を狙うが、ディフェンスされる。8R、ウィンストンがインサイドからのパンチで攻めたところでレフェリーストップ(ゲレロ戦と同様、当時の英国のボクシングはストップが早めだったようだ)。ウィンストンが当てる巧さで快勝。ウィリアムスは力強さはあったが、パワーを込める分、ディフェンスに隙があった。これが最後の試合に。)


その後のウィンストン

サルディバルの世界フェザー級王座にさらに二度挑戦して判定負け、TKO負け(結局、サルディバルには三敗)。その再起戦は関光徳とのWBC世界フェザー級王座決定戦。これにTKO勝ちしてついに世界王者に。ノンタイトル戦に勝利できたが、初防衛戦でホセ・レグラと再戦してTKO負け、王座陥落、引退。右手のハンデがあり、本来は世界王者どころかプロの選手にもなれなかったはずのウィンストン。ハンデを克服し、歴史に残る選手となった。   

 

2025年7月27日日曜日

「規格外のパンチ力」ファン・ラポルテ②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBC世界フェザー級王者。世界王座陥落後のルペ・スアレス戦、ニッキー・ペレス戦、フェリックス・ゴンザレス戦を紹介します。


ファン・ラポルテ(プエルトリコ)

身長165cm:オーソドックス(右構え)


ルペ・スアレス 10R 判定 ファン・ラポルテ

(J・ライト級戦、1987年)

「規格外のパンチ力」ファン・ラポルテ②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ジョニー・デラ・ローサを判定で下してWBC世界フェザー級王座を防衛(1983年)したラポルテだが、その次のノンタイトル戦でジェラルド・ヘイズに判定負け。フェザー級のウェイトでなかったため王座を剥奪されずに済んだが、次の防衛戦でウィルフレド・ゴメスに判定負け、王座陥落。結局、ゴメス戦が「世界王者としてリングに上がった最後の試合」になるとは本人は予想しえただろうか? ゴメス戦後、バリー・マクギガンに判定負け、フリオ・セサール・チャベスのWBC世界J・ライト級王座に挑戦して判定負け。再起二連勝でスアレス戦。これまで29勝(15KO)7敗、27歳。22勝(18KO)1敗のスアレス(26歳)はテキサスの選手。アマチュアではフェザー級で全米王者に。プロではデビューから連勝。レフヒオ・ロハスにTKOで初黒星(ロハスはその次の試合でチャベスのWBC世界J・ライト級王座に挑戦してTKO負け)。その後は連勝。直前の試合は後の世界王者ジョンジョン・モリナにTKO勝ち(モリナの初黒星。モリナは後、スアレス、ラポルテと世界戦)。ラスベガス「Aladdin Hotel & Casino」での一戦(リングアナはチャック・ハル、レフェリーはデイビー・パール)。1R、サウスポーのスアレス。ガードを高く上げて前進。右ジャブ、左ストレート、右フック。パワーはそこそこ。バッティングでダウンしたが、レフェリーにカウントを取られる不運。ラポルテはパワー。右ストレート、フックに迫力があるが、攻撃がとぎれがち(そのためパワーの割にはKO勝ちが少ない)。スアレスがリズミカルな動きからジャブで先手を取るパターン。ワンツーからの右フックで手数も出していく。接近戦ではもみ合うような打ち合い。9R、ラポルテがローブローで減点(ラポルテはパワーがあるため、レフェリーは厳しい対処。「パンチが軽い選手」だったらどうか?)。その後ももみ合い、スアレスの手数。10R終了。判定は3-0。ラポルテは残念。相手よりもパワーがあるにもかかわらず、負け。どのパンチにもパワーを込め、スムーズに攻撃できない欠点。手数で相手のリードを許してしまった。その後のスアレス。中堅どころには勝利できたが、アズマー・ネルソンのWBC世界J・ライト級王座に挑戦してTKO負け、モリナのIBF世界J・ライト級王座に挑戦してTKO負け。パワー不足なのだろう。後の世界王者を破ることはできたが、世界王座は獲れなかった。)


ファン・ラポルテ 12R TKO ニッキー・ペレス

(北米J・ライト級タイトル戦、1988年)

「規格外のパンチ力」ファン・ラポルテ②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

11R:ワンツーでペレスがダウン

12R:右フックでペレスがダウン

(感想:ラポルテがタイトル獲得。スアレス戦後、中堅相手に三連勝のラポルテ。王者ペレスはアリゾナ州のベテラン。1977年のデビュー戦はKO負けだったが、連勝。北米、次いで全米J・フェザー級王座獲得。ウィルフレド・ゴメスのWBC世界J・フェザー級王座に挑戦してTKO負け。北米フェザー級王者になったが、サルバドル・サンチェスに判定負けしてからは負けが目立つ。北米J・ライト級王座を獲得。しかし、フリオ・セサール・チャベス、バリー・マクギガンにTKO負け。アリゾナ州ツーソンでの一戦。ペレスは動きのテンポが良く、ショートパンチに巧さ。ジャブ、ワンツー、左フックからの右ストレート、右アッパーからの左フック。踏み込んで打つ右フックに威力。器用さと手数で勝負。ラポルテはいつものように伸びとパワーのある右ストレート、振りが大きめの左フック。パワーでラポルテ。6Rには迫力のある左フックからの右ストレート。9Rには勢い余って相手の背中にパンチ。11R、強烈なワンツーでペレスがダウン。これが効いたペレスは12Rに右フックでダウン。立ったが、マウスピースを自ら吐き出してギブアップ。ラポルテが強打発揮。ペレスの手数をディフェンス&タフネスで弾き返した。ペレスはこれが最後の試合に。)


ファン・ラポルテ 8R 負傷引分 フェリックス・ゴンザレス

(ライト級戦、1990年)

「規格外のパンチ力」ファン・ラポルテ②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

2R:右カウンターでゴンザレスがダウン

(感想:ペレス戦後のラポルテ。北米王座初防衛後、ジョンジョン・モリナのIBF世界J・ライト級王座に挑戦して判定負け。ブルーノ・ラバナレス(ビクトルの兄)らを相手に北米王座防衛。ゴンザレスとノンタイトル戦。これまで36勝(19KO)9敗、30歳。17勝(15KO)6敗のゴンザレス(28歳)はカリフォルニア州サンフランシスコ出身。ニックネームは「Jawbreaker(アゴ砕き屋)」(本当に相手のアゴを割ったことがあるのかは不明)。1982年、デビュー。中堅選手と対戦してきた。直前の試合はカリフォルニア州ライト級王座戦で、判定負け。モンタナ州ビュートでの一戦。身長差のある対決。背が高いゴンザレスはスリムな体型のボクサータイプ。ガードを上げて左ジャブ、左ボディ連打。左のテクニックがあり、手数が多い。しかし真っ直ぐ攻めるクセがあり、パワーはそこそこ。ラポルテは踏み込んでジャブ、右ストレート。2R、強烈な右がカウンターとなってゴンザレスがダウン。立ったゴンザレスにラポルテは激しい攻撃。真っ直ぐ攻めるゴンザレス、踏み込んで攻めるラポルテ。バッティングでラポルテが右マブタをカット。5Rにキズのドクターチェック。その後も手数のゴンザレス、パワーのラポルテ。8R終了後、ラポルテのキズが悪化して負傷判定に。ドロー。ラポルテが勝ち損ねた試合。もっとスムーズに連打できていたら勝てた。ラポルテらしい引き分けだったと言えよう。ゴンザレスはパワーが乗らない手打ち気味パンチが多かった。少なくとも「アゴ砕き屋」の印象は無し。その後、ゴンザレスは後の世界王者シャンバ・ミッチェルらを相手に全敗でキャリア終了。)


その後のラポルテ

アズマー・ネルソン(WBC世界J・ライト級王座戦)、コンスタンチン・チュー、チャールズ・マレー(IBF世界J・ウェルター級王座戦)、ザック・パディーリャ(WBO世界J・ウェルター級王座戦)に敗北。ラストファイト(1999年)の相手はビル・コステロ(80年代にWBC世界J・ウェルター級王者だった男)。オールドタイマー同士の対戦に2-1で敗北。手数が少なくなってしまう欠点により、相手よりパンチがあるにもかかわらず敗北するもどかしい試合があったのが惜しい。 

「規格外のパンチ力」ファン・ラポルテ①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBC世界フェザー級王者。世界王座防衛戦のルーベン・カスティーヨ戦、ジョニー・デラ・ローサ戦ほかを紹介します。


ファン・ラポルテ(プエルトリコ)

身長165cm:オーソドックス(右構え)


ファン・ラポルテ 12R 判定 ルーベン・カスティーヨ

(WBC世界フェザー級タイトル戦、1983年)

「規格外のパンチ力」ファン・ラポルテ①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

10R:連打でカスティーヨがスタンディングダウン

11R:右ストレートでカスティーヨがダウン

12R:左ボディでカスティーヨがダウン

(感想:ラポルテがタイトル初防衛。歴史に残る強豪と数多く戦ったラポルテ。プエルトリコ出身で、ニューヨークに移住。アマチュアでキャリア(タイトルも獲得)。プロではデビュー五戦目で負けてしまったが、その後は連勝。サルバドル・サンチェスのWBC世界フェザー級王座に挑戦して判定負け。そして大勢を「アッ!」と言わせたロッキー・ロックリッジ戦。全米フェザー級王者ロックリッジを右フックで強烈にKO。しかし、WBA世界フェザー級王者エウセビオ・ペドロサへの挑戦は、判定で敗北。WBC王者サンチェスが急死。マリオ・ミランダとの決定戦にTKO 勝ちしてWBC世界フェザー級王座奪取。カスティーヨと初防衛戦(ミランダ戦は「15回戦」だったが、この試合から「12回戦」。世界戦での死亡事故(レイ・マンシーニにKOされた金得九がダメージにより死去)により世界戦は12Rで行われるようになった)。挑戦者カスティーヨはテキサス州ラボック出身。1975年にデビュー以来、連勝。全米フェザー級王者になり、防衛にも成功。しかし、当時はハイレベル。アレクシス・アルゲリョのWBC世界J・ライト級王座に挑戦してTKO負け、初黒星。サンチェスのWBC世界フェザー級王座に挑戦して判定負け。そして、この三度目の世界挑戦。サンチェスに敗れた者同士の対戦はどんな内容に? プエルトリコ・サンファンでの一戦(レフェリーはデイビー・パール)。共に若い二人(ラポルテ23歳、カスティーヨは25)。ジャブ、そして強打の応酬。ラポルテはパワーを込めて右ストレート、フック。カスティーヨはワンツー、斜め下からの左フック、ショート連打。ただ、ラポルテはパワーに頼りすぎて単発傾向。カスティーヨは真っ直ぐ攻めるクセ。一進一退だが、時折ラポルテの強打がクリーンヒット。カスティーヨは左ボディダブル、ワンツーなどで攻めるが、ラポルテはタフ、8R、右ストレート、左フック、右フックがヒットしてラポルテ優勢。10R、連打でカスティーヨがスタンディングカウントを聞く。11R終了直前、右ストレート、左フックが連続ヒットし、右ストレートでカスティーヨがダウン。12R、左ボディでカスティーヨがダウン。12R終了。判定は3-0。ラポルテが強打で勝利。特に12Rにダウンを奪った左ボディがスムーズで良かった。ただ、パワーを込めすぎて、流れるような攻め、地道に追い込む攻めができない欠点(これはキャリアを通じて克服できなかった)。カスティーヨは頑張ってショート連打をまとめるなどしたが、ラポルテのタフネス&ディフェンスを突破できなかった。その後のカスティーヨ。フリオ・セサール・チャベスのWBC世界J・ライト級王座に挑戦してTKO負け。以後はブランクがちにリング。何と1996年にNABOライト級王座を獲得。息の長いリングキャリアだった。) 


ファン・ラポルテ 12R 判定 ジョニー・デラ・ローサ

(WBC世界フェザー級タイトル戦、1983年)

「規格外のパンチ力」ファン・ラポルテ①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ラポルテがタイトル防衛。23勝(13KO)3敗のラポルテ。カスティーヨ戦の次の試合は二度目の防衛戦。WBA・WBC9位の挑戦者デラ・ローサ(20歳)はドミニカ共和国のサント・ドミンゴ出身。これまで21連勝(17KO)。サント・ドミンゴでデビュー。主戦場をフロリダ州に。全勝の勢いでラポルテに挑戦。ただ、これが初の王座戦。「経験」という点でどうか? サンファンでの一戦(レフェリーはアーサー・マーカンテ。ラポルテのセコンドにエミール・グリフィス)。プエルトリコをデザインした帽子&ガウンのラポルテ。トランクスはトレードカラーの赤。身長で上回る白トランクスのデラ・ローサはボクサータイプ。相手から距離を取ってジャブ、ワンツー。ディフェンスもしっかり。ラポルテの戦い方は実にシンプル。重そうなパンチに一発一発パワーを込めてジャブ、ストレート、フック。パワーで上回る。4R、デラ・ローサが斜め下からのフック連打、ボディ打ちで攻勢。タフなラポルテは打ち返す。9R、デラ・ローサが明らかに低いローブローで減点。その後、ラポルテが強烈なフック攻めで優勢。12R、激しい接近戦。12R終了。判定は2-1。ラポルテがパワーで勝利。もう少し強弱を付ければ、良い勝ち方ができるのだが。デラ・ローサはジャブを使っていたが、相手の強打に慎重になるシーンも。試合運び次第では勝てたのではないか? その後のデラ・ローサ。後のWBA王者アントニオ・エスパラゴサにTKO負け、WBC米大陸王座(J・ライト級)獲得。ロッキー・ロックリッジのIBF世界J・ライト級王座に挑戦してTKO負け。以後はホルヘ・パエスに判定負けするなど勝ったり負けたり。世界王者にはなれなかった。)


ジェラルド・ヘイズ 10R 判定 ファン・ラポルテ

(J・ライト級戦、1983年)

「規格外のパンチ力」ファン・ラポルテ①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:デラ・ローサ戦の次の試合はノンタイトル戦。ヘイズ(31歳)はニュージャージー州の黒人で、これまで23勝(11KO)19敗4分。1975年のデビュー以来、勝ったり負けたり。ルペ・ピントール、ボビー・チャコン、ロッキー・ロックリッジ、アレクシス・アルゲリョ、バーナード・テーラーに判定負け、後の世界王者フレディ・ペンドルトンに判定勝ち、マルコス・ビジャサナに判定負け。強打者相手に判定まで持ち込むしぶとさがある。アトランチックシティ「Sands Casino Hotel」での一戦(リングアナはマイケル・バッファ)。開始から積極的なヘイズ。ダッキングしながら前進し、速いジャブ、ワンツー、やや振りが大きめのフック。接近戦にも挑む勇敢さがあり、ディフェンスしながら右アッパー、ボディ攻め。右ストレートをボディに突き刺す大胆な攻撃、右ストレートからの左ジャブといったテクニックも披露。ラポルテは欠点を露呈。自身のパワーを過信しているのか、手数が少な目で受け身の試合ぶり。5R、ラポルテの強烈な左フックがヒット。しかし、その後も勢いで攻めるヘイズ、攻められて反撃するラポルテ。10R終わり頃、ラポルテがラッシュをかけるが、時すでに遅し。10R終了。判定は2-0。ヘイズが現役世界王者に勝利。積極的で、パンチにはスピードがあった。しかしこの後、エウセビオ・ペドロサ、バーナード・テーラー(再戦)らに三連敗で引退。)

 

2025年7月25日金曜日

「四階級制覇」ファン・マヌエル・マルケス④「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

世界四階級王者。ついに世界王者に。オルランド・サリド戦、ビクトル・ポロ戦、ジムレックス・ハカ戦ほかを紹介します。


ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)

身長170cm:オーソドックス(右構え)


ファン・マヌエル・マルケス 10R TKO マルコス・リコナ

(ライト級戦、2003年)

「四階級制覇」ファン・マヌエル・マルケス④「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

8R:右アッパーでリコナがダウン

(感想:WBA世界フェザー級王者フレディ・ノーウッドに判定負けして以来、連勝のマルケス。決定戦で古豪マヌエル・メディナをTKOしてIBF世界フェザー級王者に。リコナとノンタイトル戦。これまで40勝(32KO)2敗。20勝(7KO)3敗1分のリコナもメキシカン。来日経験があり、日本選手に判定勝ち。イスラエル・バスケスに2-1で勝利してNABOスーパーバンタム級王座獲得。カリフォルニア州王座(フェザー級)も獲得できたが、オスカー・ラリオスらに敗北。三つの負けは全て判定。粘り強いタイプと思われるが、強打者マルケスのパワーに耐えることができるかどうか? コネチカット州アンカスビルでの一戦(リングアナはマイケル・バッファ。マルケスのセコンドにナチョ・ベリスタイン)。完璧に「リカルド・ロペスのコピー」になったマルケス。左腕を高く上げるガード、ジャブ、ワンツーからの左フック。攻撃のバリエーションも多く、パワフル(斜め下からの左フック、左ボディ打ち、右ストレートの組み合わせ)。リコナもガード上げてジャブ。右フックからの左フックなど振りが大きめのパンチに迫力があるが、マルケスの多彩さと比べると「普通の選手」に見える。ディフェンス&コンビネーションでマルケス優勢。8R終了間際、強烈な右アッパーでリコナがダウン。9Rの終了間際には強さと伸びがある右ストレートを食ってダメージ。左目下のキズもあってリコナはこのラウンド終了後に棄権。マルケスがディフェンス&パワーで勝利。リコナはよく前に出たが、当てさせてもらえず。その後のリコナ。勝ったり負けたり。IBAフェザー級王座挑戦に判定負けした後、四連続判定負けで引退。)


ファン・マヌエル・マルケス 12R 判定 オルランド・サリド

(WBA・IBF世界フェザー級タイトル戦、2004年)

「四階級制覇」ファン・マヌエル・マルケス④「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:マルケスがタイトル防衛。リコナ戦の次の試合でWBA王者デリック・ゲイナーと統一戦を行ったマルケス。負傷判定勝ちで王座統一と共にIBF王座の初防衛に成功。次の防衛戦の相手は何とマニー・パッキャオで、ドロー。そしてサリドと防衛戦。これまで23勝(15KO)8敗2分の挑戦者サリドはメキシコ・ソノラ出身。連続KO負けを喫したり、ローカル王座(スーパーバンタム級)を獲得したりといったキャリアだったが、レジリオ・ツールに判定勝ち。元世界王者アレハンドロ・ゴンザレスに判定負けしたが、それからは好調。連勝中の勢いでマルケスに挑戦。ラスベガス「MGM Grand」での一戦(メインは「バーナード・ホプキンス vs. オスカー・デラ・ホーヤ」の世界ミドル級王座戦。リングアナはマイケル・バッファ、レフェリーはトニー・ウィークス。会場ではパッキャオが観戦)。ジャブで先手を取るマルケス。ワンツー、左フックからの右ストレートで相手の隙を狙う。サリドは受け身。ディフェンスの巧さがあり、フックに強さが感じられるが、自分から攻めない。マルケスは右ストレートに強さがあるがディフェンスされがちなため、相手に攻めさせてカウンターを取ろうとする。サリドの連打もディフェンスされるため、あまり盛り上がらない展開。12R、右パンチを食ったマルケスが用心深い姿勢に。12R終了。判定は3-0。マルケスがディフェンスで勝利。サリドは残念。打ち返してはいたが単発で、自分から試合の流れをつくるような動きではなかった。ところがその後、IBF、次いでWBOの世界フェザー級王座獲得。ワシル・ロマチェンコに勝利したり、WBC世界スーパーフェザー級暫定王座も獲得したりするなどフェザー級の中心選手になった。)


ファン・マヌエル・マルケス 12R 判定 ビクトル・ポロ

(WBA・IBF世界フェザー級タイトル戦、2005年)

「四階級制覇」ファン・マヌエル・マルケス④「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

7R:ワンツーでポロがダウン

(感想:マルケスがタイトル防衛。サリド戦の次の防衛戦(試合間隔が空いた)。これまで34勝(24KO)4敗3分の挑戦者ポロ(世界12位)はコロンビア・ボリーバル出身の黒人サウスポー。コロンビアが主戦場だが、アメリカでも試合。WBCの地域王座、IBFインターコンティネンタル王座(いずれもフェザー級)を獲得後にマヌエル・メディナのIBF世界フェザー級王座に挑戦したが、敗北。その後、地域王座を獲得したが、WBO王座戦に敗北&ドロー。「世界王座にあと一歩」といったポジション。ラスベガスでの一戦(リングアナはジミー・レノン・ジュニア、レフェリーはリチャード・スティール)。互いにジャブ。ポロはディフェンシブ。足で距離を保ちながら右ジャブ、左ストレート、フック。2Rに右フック、4Rに左カウンターを決めたが、倒しに行かない(中南米の選手によくあるパターン。良いパンチを持っているが、KOを狙う激しさに欠ける)。マルケスは得意のワンツーをディフェンスされて難しい試合に。中間距離で互いに隙を狙う展開。7R、ワンツーでポロがダウン。その後もパワーのある連打で押すマルケス。時折、連打からの右パンチをヒットさせる(9Rほか)。12R終了。判定は3-0。マルケスが手数&ディフェンスで勝利。ポロは残念。これまで「あと一歩」だったのを物語るような試合ぶり。挑戦者はもっと積極的でなければ。これが最後の試合に。)


ポロ戦後のマルケス

指名試合が行えず、王座剥奪。ややこしいことにマルケスが剥奪されたWBA王座は「スーパー王座」で、「正規王座」はインドネシアのクリス・ジョンが保持。ジョンの王座に挑戦したが、判定負け。その次の試合はWBO世界フェザー級暫定王座決定戦。これにTKO勝利して王座獲得。ジムレックス・ハカと初防衛戦。


ファン・マヌエル・マルケス 9R KO ジムレックス・ハカ

(WBO世界フェザー級暫定タイトル戦、2006年)

「四階級制覇」ファン・マヌエル・マルケス④「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

9R:左フックでハカがダウン

(感想:マルケスがタイトル防衛。これまで27勝(12KO)2敗1分の挑戦者ハカはフィリピン・ドゥマゲテ出身のサウスポー(綴りは「Jimrex Jaca」。「ジャカ」ではなく「ハカ」と読むらしい)。ニックネームは「Executioner(死刑執行人)」(バーナード・ホプキンスと同じ)。2000年、デビュー。連勝でフィリピン王座(バンタム級、スーパーバンタム級)、東洋太平洋王座(スーパーバンタム級)獲得。日本で国見泰央(くにみ やすお)にKO負け、初黒星(東洋太平洋王座戦)。階級を上げ、フィリピン王座(スーパーフェザー級)獲得。しかし、またしても日本で敗北。再起戦に勝利してマルケスと戦うチャンス到来。テキサス州ヒダルゴでの一戦(リングアナはルペ・コントレラス。会場ではバーナード・ホプキンスが観戦)。「いかにもフィリピン人サウスポー」といった感じのハカ。右ジャブ連打からの左ストレート、右フック。一本調子な攻めで、ディフェンスされがち。マルケスはいつもの戦い方。ワンツー、フック、カウンターで連打しながら隙を突くパンチ。5Rにバッティングで右眉の上をカットしたマルケス。そのキズが悪化して8Rにドクターチェック。それで勝負を急ぐことにしたのか、マルケスが9Rに強打。左フックでダウンしたハカは座ったまま10カウント。マルケスがコンビネーションで勝利。共にディフェンスができる者同士だったが、攻撃のバリエーションではマルケスだった。その後、ハカは地元で地域王座戦などに出場。しかし、日本で二度のTKO負け。日本とは相性が悪かった。)


その後のマルケス

正規王者スコット・ハリソンが王座返上で正規王者に。その後は階級を上げながらビッグマッチ路線。WBC世界スーパーフェザー級王者マルコ・アントニオ・バレラに判定勝ちして二階級制覇。マニー・パッキャオに敗れ、王座陥落。ファン・ディアスを決定戦でKOしてWBA・WBO世界ライト級王座獲得(2009年)。フロイド・メイウェザー・ジュニアに判定負け。WBO世界ウエルター級王者になったパッキャオとの三度目の対戦はまたしても惜しい判定負け。WBO世界スーパーライト級暫定王座を決定戦で獲得し、正規王者に昇格。フェザー級だった選手がウェルターでも戦うとは。階級を上げるとパワー負けすることが多いが、マルケスとパッキャオは階級を上げるたびにパワーアップ。まさに怪物。

 

「四階級制覇」ファン・マヌエル・マルケス③「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

世界四階級王者。世界王者になる前のウィルフレド・バルガス戦、ロケ・カシアニ戦ほかを紹介します。


ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)

身長170cm:オーソドックス(右構え)


ファン・マヌエル・マルケス 2R TKO ウィルフレド・バルガス

(スーパーフェザー級戦、1999年)

「四階級制覇」ファン・マヌエル・マルケス③「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

1R:右フック、左フックで2度、バルガスがダウン

2R:右ストレート、左フックで2度、バルガスがダウン

(感想:NABOフェザー級王座を七度防衛したマルケス。どうやら王座を返上したらしく、バルガスとノンタイトル戦。これまで28勝(22KO)1敗、25歳。23勝(18KO)11敗のバルガス(29歳)はサウスポーのプエルトリカン(ポンセ出身)。後の世界王者ダニエル・ヒメネスをKOするなど連勝でWBO世界J・バンタム級王座に挑戦したが、TKO負け(1990年)。デューク・マッケンジー、ラファエル・デル・バーレのWBO世界バンタム級王座に挑戦して、いずれもTKO負け。ダニエル・サラゴサにもKO負け。すっかりベテランになったが、このところ二連続KO勝ち。カリフォルニア州イングルウッド「Great Western Forum」での一戦(リングアナはジミー・レノン・ジュニア。マルケスのセコンドにナチョ・ベリスタイン)。1R、互いにジャブ。ワンツーのマルケス。バルガス(マルケスと比べると小柄)は相手から距離を取って左カウンターを狙うが、右フック、斜め下からの左フックで二度ダウン。ラウンド終了間際には右ストレートを食ってダウン寸前に。2R、オーソドックスにスイッチしたバルガスが右ストレートを当てる。しかし、パワーの差。右ストレート、左フックで二度ダウン。タオルが投入されて試合終了。セコンドの判断に怒りのバルガス。続行可能な様子だったが、マトモに打たれていたため棄権は致し方ないところ。マルケスが快勝。次の試合はいよいよ初の世界挑戦。バルガスはその後、プエルトリコ・フェザー級王座に挑戦して1RでTKO負けするなど勝ち星無しでキャリア終了。)


ファン・マヌエル・マルケス 8R TKO レミヒオ・モリナ

(フェザー級戦、1999年)

「四階級制覇」ファン・マヌエル・マルケス③「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

2R:左ボディでマルケスがダウン

8R:左フック、右ストレートで2度、モリナがダウン

(感想:NABOフェザー級王座を七度防衛したマルケス。WBO世界フェザー級王者ナジーム・ハメドへの挑戦権を持っていたが、ハメドは挑戦を受けず。ターゲットをWBA世界フェザー級王者フレディ・ノーウッドに変更。初の世界挑戦は判定負けに終わり、モリナと再起戦。これまで35勝(14KO)3敗1分のモリナはアルゼンチン・コリエンテス出身。1992年のバルセロナ・オリンピックにバンタム級で出場(メダルは獲得ならず)。プロでは地元で連戦連勝。初の海外試合(英国)は初の世界挑戦で、WBO王者ハメドに2RでTKO負け。メキシコでWBC世界J・フェザー級王者エリック・モラレスに挑戦したときは6RでTKO負け。地元では強いが、敵地では結果を出せていない。ラスベガス「Hard Rock Hotel and Casino」での一戦(レフェリーはケニー・ベイレス)。足でリズムを取りながらジャブ、ワンツーのマルケス。左腕を殊更高く上げるガードの仕方はリカルド・ロペスそっくり。サウスポーのモリナは残念。用心深い姿勢で左カウンターを狙うディフェンシブなスタイル。そんなモリナにマルケスが左フックカウンター、左フックからの右ストレート。2R終了間際にハプニング。左ボディがカウンターとなってマルケスがダウン。しかし、大したダメージはなく、その後もディフェンシブなモリナの隙を狙うパンチで攻めの姿勢。5Rには右フックをクリーンヒット。8R、左フックが効いたモリナ。左フックで二度ダウン。立ち上がり、抵抗するモリナ。しかし、最後は強烈な右ストレートで三度目のダウン。それと同時にレフェリーは試合を止めた。マルケスが安定感のある動きで勝利。モリナは狙い通りカウンターでダウンを奪うことができたが、最後にキツいパンチを食らった。もっと思い切りのいい攻めをして欲しかったところ。その後、モリナはアルゼンチン・フェザー級王座戦、WBFスーパーフェザー級王座戦に敗北するなど勝ったり負けたりだった。)


ファン・マヌエル・マルケス 12R 判定 ロケ・カシアニ

(NABOフェザー級王座決定戦、2000年)

「四階級制覇」ファン・マヌエル・マルケス③「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:マルケスが王座奪回。モリナ戦の次の試合。黒人カシアニ(30歳)はコロンビアのサン・バシリオ・デル・パレンケ出身。IBFインターコンティネンタル王座、コロンビア王座(いずれもフェザー級)に挑戦してKO負け。ウィルフレド・バスケスのWBA世界フェザー級王座への挑戦は判定負け。重要な試合を落としてきたキャリアで、直前の試合は判定負け。ネバダ州ステートライン「シーザース・タホ」での一戦。互いにジャブ、パワフルな左フック。マルケスが得意の左フックからの右ストレート。カシアニはワンツーからの左フックに力強さがあるが、真っ直ぐ攻めるクセ。互角の勝負。ディフェンスしながらジャブ、パワーを乗せたストレート、フック、ボディ打ち。6R、右パンチを決めたカシアニだが、マルケス全力の左ボディ打ちがローブローになって苦悶の表情。その後も一進一退。コンビネーションのマルケス、単発のカシアニ。互いにディフェンスし合うため、どちらかが大きくピンチになるシーンもなく12R終了。判定は大差の3-0。マルケスがパワー&手数で勝利。ただ、ポイント差ほど大きな実力差は無し。コンビネーションで攻める分、ジャッジからはマルケスの方が見栄えが良かったのだろう。その後のカシアニ。勝ったり負けたり連敗したり。実力に見合わないキャリアとなったが、2005年までリングに上がった。)