WBC世界クルーザー級王者。アンドレイ・ルデンコ戦、チャールズ・ディクソン戦、マルセロ・ドミンゲス戦を紹介します。
アナクレト・ワンバ(フランス)
身長190cm:オーソドックス(右構え)
①アナクレト・ワンバ 5R TKO アンドレイ・ルデンコ
(WBC世界クルーザー級タイトル戦、1992年)
(ダウンシーン)
5R:連打でルデンコがダウン
(感想:ワンバがタイトル防衛。ワンバはコンゴ出身で、フランス国籍を持つ黒人。主戦場はフランス。長身を活かしてアマチュアで活躍し、モスクワ・オリンピックにも出場(メダル獲得はならず)。プロ入り後、連勝。英国で判定負けを喫してしまったが、欧州クルーザー級王座を獲得。マッシミリアノ・デュランのWBC世界クルーザー級王座に挑戦したが、優勢に試合を進めながらラフな攻め方をして反則負け。再戦でデュランから王座奪取。初防衛戦の相手もデュランで、TKOでワンバ防衛。ルデンコ戦は二度目の防衛戦となる。挑戦者ルデンコはロシアの白人。デビューから連勝後、ベテランのフランキー・スウィンデルに判定負け。決定戦でWBCインター王座を獲得して、この世界挑戦(ソ連崩壊後、世界王座に挑戦する初のロシア人)。「対戦相手の質」に問題があるようなキャリアだが、どんな試合を見せるか? フランス・ルヴァロワ=ペレでの一戦(レフェリーはジョー・コルテス。TVコメンテーターは元IBF世界クルーザー級王者グレン・マクローリー)。まずはフットワークとジャブを使いながら相手の様子をチェックするワンバ(慎重な戦いぶり)。ルデンコは動き、パンチの打ち方がジェリー・クォーリーのような男。フェイントをかけながら前進し、ジャブ、ワンツー、ショートフック、左ボディ打ち。共にパワーを感じるが、ワンバがパワー&ディフェンス。特に右ストレート、左フックに力強さがあり、インサイドからのアッパー、コンビネーション「右ボディ打ち、右アッパー、左フック」も見事なもの。打たれるルデンコ。5R、まさに「打ちのめす」といった感じの連打でルデンコがダウン。立ったが、レフェリーに止められた。ワンバが快勝。豪快な長いパンチ、接近戦での正確な強打。ディフェンスもしっかり。ルデンコも悪くはなかったが、相手の強さにやられた。そしてこれが事実上のラストファイトに。後、カムバックしたが、KO負けだった。)
その後のワンバ
ノンタイトル戦を挟みながら王座防衛。アンドリュー・メイナードに判定勝ち(三度目の防衛)、デビッド・ベターに判定勝ち(四度目の防衛)、アキム・タフェにTKO勝ち(五度目の防衛)、アドルフォ・ワシントンとドロー(六度目の防衛)。
②アナクレト・ワンバ 1R KO チャールズ・ディクソン
(クルーザー級戦、1994年)
(ダウンシーン)
1R:右アッパーでディクソンがダウン
(感想:ワンバがノンタイトル戦。ディクソンはルイジアナ州の黒人。フランキー・スウィンデル、リッキー・パーキーらを相手に連続KO負けの男であるが、たまの勝利はKO勝ち。「勝つも負けるもノックアウト」といったキャリア。アルゼンチンのサン・ミゲル・デ・トゥクマンでの一戦。身長差。共にアップライトな姿勢。身長で上のワンバがジャブ、ボディ攻め。ディクソンは足で距離を取りながらジャブ、そして意表を突くタイミングで右ストレート。右アッパー、思い切りのいいフックは悪くないが、真っ直ぐ攻めるクセがあり、ガードに甘さ。強烈な右アッパー。まるで棒を飲んだかのようにゆっくりとダウンしたディクソンは立てず、10カウント。ワンバがゴツいパンチで楽勝。相手の隙を見逃さないのが一流の証。ディクソンはディフェンス、バランスに難。パワーはあったが、これが最後の試合に。)
③アナクレト・ワンバ 判定12R マルセロ・ファビアン・ドミンゲス
(WBC世界クルーザー級タイトル戦、1994年)
(感想:ワンバがタイトル防衛。七度目の防衛戦。挑戦者ドミンゲスはアルゼンチン・ブエノスアイレス出身。ニックネームは「El Gordo(大柄な男)」「El Toro(雄牛)」。アルゼンチンの選手らしいガッチリした体格であるが、身長は177cmでアメリカの重量級選手ほど大きくはない。地元を中心にリング活動。デビューから無敗でアルゼンチン王座(クルーザー級)獲得。これが初の世界戦。アルゼンチン・サルタでの一戦。足でリズムを取りながらジャブを出す両者。ドミンゲスは相手から距離を取って踏み込んで右ストレート、連打。右フックにパワーがあり、左のテクニックも(左フックをダブルで打ち込んだり、メキシカンのように突き上げるように打ったり)。ワンバはブロックしながら前進し、ワンツーからの左フック、左ボディ打ち。手数を出すドミンゲス、正確に当てようとするワンバ。10R、ワンバの右アッパーでドミンゲスのマウスピースが吹っ飛ぶ。さらにドミンゲスは反則打(?)で減点。その後も前に出るワンバ、距離を取るドミンゲス、の展開で12R終了。共に両手を上げて自身の勝利をアピール。会場のファンも「ドミンゲス勝利」と見て大歓声。判定は2-0。ワンバがディフェンス&攻撃の正確さで勝利。しかし、目が腫れるなど苦しい試合だった。ドミンゲスは闇雲に連打するなどスタミナのあるところ、器用さを見せたが、ブロックされて決定打を打ち込めず。精力的な攻撃は良かったが、受け身になるシーンが目立ったのが惜しい。その後の二人。ドミンゲスはこの王座(WBC世界クルーザー級王座)を獲得。防衛にも成功。王座陥落後もWBO王座に挑戦したり、南米ヘビー級王者になったりするなど息の長い活躍。ワンバはこれが最後の防衛戦。この後、ノンタイトル戦に勝利。負傷を理由に引退を表明。王者のままリングを去った。)