2025年3月31日月曜日

「コンゴのクルーザー級」アナクレト・ワンバ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBC世界クルーザー級王者。アンドレイ・ルデンコ戦、チャールズ・ディクソン戦、マルセロ・ドミンゲス戦を紹介します。


アナクレト・ワンバ(フランス)

身長190cm:オーソドックス(右構え)


アナクレト・ワンバ 5R TKO アンドレイ・ルデンコ

(WBC世界クルーザー級タイトル戦、1992年)

「コンゴのクルーザー級」アナクレト・ワンバ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

5R:連打でルデンコがダウン

(感想:ワンバがタイトル防衛。ワンバはコンゴ出身で、フランス国籍を持つ黒人。主戦場はフランス。長身を活かしてアマチュアで活躍し、モスクワ・オリンピックにも出場(メダル獲得はならず)。プロ入り後、連勝。英国で判定負けを喫してしまったが、欧州クルーザー級王座を獲得。マッシミリアノ・デュランのWBC世界クルーザー級王座に挑戦したが、優勢に試合を進めながらラフな攻め方をして反則負け。再戦でデュランから王座奪取。初防衛戦の相手もデュランで、TKOでワンバ防衛。ルデンコ戦は二度目の防衛戦となる。挑戦者ルデンコはロシアの白人。デビューから連勝後、ベテランのフランキー・スウィンデルに判定負け。決定戦でWBCインター王座を獲得して、この世界挑戦(ソ連崩壊後、世界王座に挑戦する初のロシア人)。「対戦相手の質」に問題があるようなキャリアだが、どんな試合を見せるか? フランス・ルヴァロワ=ペレでの一戦(レフェリーはジョー・コルテス。TVコメンテーターは元IBF世界クルーザー級王者グレン・マクローリー)。まずはフットワークとジャブを使いながら相手の様子をチェックするワンバ(慎重な戦いぶり)。ルデンコは動き、パンチの打ち方がジェリー・クォーリーのような男。フェイントをかけながら前進し、ジャブ、ワンツー、ショートフック、左ボディ打ち。共にパワーを感じるが、ワンバがパワー&ディフェンス。特に右ストレート、左フックに力強さがあり、インサイドからのアッパー、コンビネーション「右ボディ打ち、右アッパー、左フック」も見事なもの。打たれるルデンコ。5R、まさに「打ちのめす」といった感じの連打でルデンコがダウン。立ったが、レフェリーに止められた。ワンバが快勝。豪快な長いパンチ、接近戦での正確な強打。ディフェンスもしっかり。ルデンコも悪くはなかったが、相手の強さにやられた。そしてこれが事実上のラストファイトに。後、カムバックしたが、KO負けだった。)


その後のワンバ

ノンタイトル戦を挟みながら王座防衛。アンドリュー・メイナードに判定勝ち(三度目の防衛)、デビッド・ベターに判定勝ち(四度目の防衛)、アキム・タフェにTKO勝ち(五度目の防衛)、アドルフォ・ワシントンとドロー(六度目の防衛)。


アナクレト・ワンバ 1R KO チャールズ・ディクソン

(クルーザー級戦、1994年)

「コンゴのクルーザー級」アナクレト・ワンバ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

1R:右アッパーでディクソンがダウン

(感想:ワンバがノンタイトル戦。ディクソンはルイジアナ州の黒人。フランキー・スウィンデル、リッキー・パーキーらを相手に連続KO負けの男であるが、たまの勝利はKO勝ち。「勝つも負けるもノックアウト」といったキャリア。アルゼンチンのサン・ミゲル・デ・トゥクマンでの一戦。身長差。共にアップライトな姿勢。身長で上のワンバがジャブ、ボディ攻め。ディクソンは足で距離を取りながらジャブ、そして意表を突くタイミングで右ストレート。右アッパー、思い切りのいいフックは悪くないが、真っ直ぐ攻めるクセがあり、ガードに甘さ。強烈な右アッパー。まるで棒を飲んだかのようにゆっくりとダウンしたディクソンは立てず、10カウント。ワンバがゴツいパンチで楽勝。相手の隙を見逃さないのが一流の証。ディクソンはディフェンス、バランスに難。パワーはあったが、これが最後の試合に。)  


アナクレト・ワンバ 判定12R マルセロ・ファビアン・ドミンゲス

(WBC世界クルーザー級タイトル戦、1994年)

「コンゴのクルーザー級」アナクレト・ワンバ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ワンバがタイトル防衛。七度目の防衛戦。挑戦者ドミンゲスはアルゼンチン・ブエノスアイレス出身。ニックネームは「El Gordo(大柄な男)」「El Toro(雄牛)」。アルゼンチンの選手らしいガッチリした体格であるが、身長は177cmでアメリカの重量級選手ほど大きくはない。地元を中心にリング活動。デビューから無敗でアルゼンチン王座(クルーザー級)獲得。これが初の世界戦。アルゼンチン・サルタでの一戦。足でリズムを取りながらジャブを出す両者。ドミンゲスは相手から距離を取って踏み込んで右ストレート、連打。右フックにパワーがあり、左のテクニックも(左フックをダブルで打ち込んだり、メキシカンのように突き上げるように打ったり)。ワンバはブロックしながら前進し、ワンツーからの左フック、左ボディ打ち。手数を出すドミンゲス、正確に当てようとするワンバ。10R、ワンバの右アッパーでドミンゲスのマウスピースが吹っ飛ぶ。さらにドミンゲスは反則打(?)で減点。その後も前に出るワンバ、距離を取るドミンゲス、の展開で12R終了。共に両手を上げて自身の勝利をアピール。会場のファンも「ドミンゲス勝利」と見て大歓声。判定は2-0。ワンバがディフェンス&攻撃の正確さで勝利。しかし、目が腫れるなど苦しい試合だった。ドミンゲスは闇雲に連打するなどスタミナのあるところ、器用さを見せたが、ブロックされて決定打を打ち込めず。精力的な攻撃は良かったが、受け身になるシーンが目立ったのが惜しい。その後の二人。ドミンゲスはこの王座(WBC世界クルーザー級王座)を獲得。防衛にも成功。王座陥落後もWBO王座に挑戦したり、南米ヘビー級王者になったりするなど息の長い活躍。ワンバはこれが最後の防衛戦。この後、ノンタイトル戦に勝利。負傷を理由に引退を表明。王者のままリングを去った。) 

2025年3月28日金曜日

「カザフスタンの世界王者」オレグ・マスカエフ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBC世界ヘビー級王者。世界王者になる前のラルフ・ウェスト戦、シェーン・サトクリフ戦、デリク・ジェファーソン戦を紹介します。


オレグ・マスカエフ(カザフスタン)

身長191cm:オーソドックス(右構え)


オレグ・マスカエフ 3R TKO ラルフ・ウェスト

(ヘビー級戦、1996年)

「カザフスタンの世界王者」オレグ・マスカエフ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

3R:右フックでウェストがダウン

(感想:カザフスタン出身マスカエフ。ニックネームは「The Big O」。炭坑労働者からボクサーに。アマチュア時代にはビタリ・クリチコを破ったこともあるそうだ。カザフスタンでプロデビュー。その後はアメリカが主戦場。PABAヘビー級王座を獲得したが、オリバー・マッコールに敗れた。これまで17勝(13KO)1敗で、27歳。ウェストはケンタッキー州の白人で、ニックネームは「Wild, Wild」(相当、荒っぽいボクシングをやらかすのだろう。いつのことかは不明だが、ナイトクラブの用心棒をやっていたこともあるそうだ)。10連勝中(8KO)。ニューヨーク州メルビルでの一戦(レフェリーはアーサー・マーカンテ)。口ヒゲを生やし、いかにも気が強そうな表情のウェスト。ジャブを連打して、右ストレート、フック。腕っぷしで勝負するタイプで、積極的に前へ。マスカエフは慎重にディフェンス。動きは速くない。ジャブ、ワンツー、右ストレートからの左フックといったコンビネーション。2R、マスカエフの右アッパーがヒット。3R、斜め下からの右フックでウェストがダウン。レフェリーは試合を止めた。マスカエフが丁寧な試合ぶりで勝利。正直なところ、あまり迫力がない。しかし、隙を突く巧さがあった。ウェストはケンカのような打ち方で攻めたが、ディフェンスされた。負けたが、気合いが入った戦いぶりは良かったのではないか。その後もウェストはリングへ。中堅相手に勝ったり負けたり。最後は連敗で引退。)


オレグ・マスカエフ 2R TKO シェーン・サトクリフ

(PABAヘビー級タイトル戦、1999年)

「カザフスタンの世界王者」オレグ・マスカエフ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:マスカエフがタイトル防衛。ウェスト戦後、デビッド・トゥア(WBCインター王座戦)にTKO負けしたマスカエフ。中堅どころには勝つが、それ以上の強敵に苦戦。決定戦で獲得したPABA王座の二度目の防衛戦。挑戦者サトクリフ(23歳)はカナダの白人。ピークを遙かに過ぎたレオン・スピンクスに勝利。カナダ王者になったが、直前の試合で古豪トレバー・バービックにTKO負けで王座陥落。これまで21勝(12KO)6敗1分。ミシシッピ州トゥーニカでの一戦。似た体格、構え方、ジャブの打ち方。しかし、マスカエフの方が正確な攻撃。右ストレートを当て、左ボディ打ちで相手を追い込む。サトクリフはブロックするが、打たれる。2R、左眉付近をカットしたサトクリフがドクターチェック。再開したが、さらに打たれて負傷が悪化したところでレフェリストップ。マスカエフが正確さで勝利。特に右ストレートがよく当たっていた。サトクリフは悪い選手ではないが、打たれた。ゴツい身体で鋭さにやや欠けていたのが原因か? その後、サトクリフはブライアン・ニールセン、デビッド・トゥア、トレバー・バービック(カナダ王座を懸けた再戦)に連敗。カナダの実力者にとどまった。)


オレグ・マスカエフ 4R TKO デリク・ジェファーソン

(ヘビー級戦、2000年)

「カザフスタンの世界王者」オレグ・マスカエフ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

1R:右フックでジェファーソンがダウン

2R:右フックでジェファーソンがダウン

(感想:サトクリフ戦後、後のWBC王者ハシム・ラクマンをKOしたマスカエフ。さらに連勝でジェファーソン戦。ジェファーソンはミシガン州の黒人。大型で(身長198cm)、アマチュア時代には大会で優勝経験も。プロでは連戦連勝でNABA王座を獲得したが、実力者デビッド・イゾンリティにTKO負け(初黒星)。マスカエフ戦はその再起戦となる。アトランチックシティでの一戦(会場ではジェファーソンの母ジャラが観戦。息子の劣勢に落ち着かない表情だった)。ジェファーソンは距離を取って戦うボクサータイプ。ヘッドスリップしながらジャブ、右ストレートを打つ。ところが右カウンターを食うミス。右フックでダウン。この時、左足を痛めたらしく、その後は足を引きずるような動き。2Rにも同じような右フックでダウン。3Rには左フックを食ってピンチ。4R、攻められるジェファーソン。ついに試合ストップ。マスカエフがガードの隙を突く攻撃で勝利。ジェファーソンは大型選手。それだけに動きも大きく、隙があったようだ。その後の二人。ジェファーソンはウラジミール・クリチコのWBO王座に挑戦して2Rで敗北。世界王者にはなれず。マスカエフも苦難。カーク・ジョンソン、ランス・ウィテカーに連続KO負け。コーリー・サンダース(WBO王者になった南アフリカの選手とは別人)にもTKO負け。連勝後、WBCインター王座獲得(2005年)。ハシーム・ラクマンを再戦で破りWBC王者に(2006年)。オケロ・ピーターに勝利して初防衛に成功。しかし、次の防衛戦でサミュエル・ピーターにTKO負けして王座陥落。王者として活躍した期間が短かったこと、そのスタイル(隙を突く戦い方)から地味な印象があるが、実力は確かなものがあった。ただ、マイク・タイソンやイベンダー・ホリフィールドと比較できるようなレベルではなかった。)

 

「世界王座&銀メダル」クリス・バード「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBO・IBF世界ヘビー級王者。ティム・ピュラー戦、ジョン・サージェント戦、ダバリル・ウィリアムソン戦を紹介します。


クリス・バード(アメリカ)

身長183cm:サウスポー


クリス・バード 5R TKO ティム・ピュラー

(ヘビー級戦、1995年)

「世界王座&銀メダル」クリス・バード「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

5R:左ボディでピュラーがダウン、連打でスタンディングダウン

(感想:ミシガン州フリント出身の黒人サウスポー、バードは「ボクシング一族」。レイモン・ブリュースターは従兄弟。ニックネームは「Rapid Fire(速射)」。1992年バルセロナ・オリンピックではミドル級で銀メダルを獲得。プロではこれまで11連勝(8KO)で、24歳。試合数はまだ少ないが、全米ヘビー級王座を獲得。直前の試合ではアーサー・ウィリアムス(後、IBF世界クルーザー級王者に)に2-1で勝利。ピュラー(24歳)はイスラエル出身で、主戦場はアメリカ。中堅どころを相手に13勝(7KO)2敗。バードの地元フリントでの一戦(バードのパンチが当たるたびに客席が沸いた)。受け身の姿勢のバード。右ジャブ、左ストレート。動きはそれほど速くなく、身体も特に絞られておらず、見た感じではあまり強そうに見えない。ピュラー(星条旗&イスラエルの「星」トランクス)はジャブを使いながら前進し、右ストレート、フックを狙う。しかし、ディフェンスされて空転。バードは打つときはまとめて打つタイプで、一気にコンビネーション(「左ストレートからの右フック」「右ジャブ、左ストレート、右ジャブ」など)。細かいパンチを当てる。5R、一気にラッシュするバード。左ボディでピュラーがダウン。立ったが、連打でスタンディングダウン。左目のキズのチェックを受けたピュラーだが、連打(Rapid Fire)を浴びてレフェリーストップ。バードが爆発力で勝負。のらりくらりとしたボクシングをしながら攻めるときは一気。これが彼の強味か。ピュラーはボディ攻めは良かったが、ディフェンスされた。その後、ピュラーはティム・ウィザスプーン、ルー・サバリースに敗れて三連敗。その後は中堅どころに連勝したり、ピークを遙かに過ぎたジェームス・ティリスに勝利したり。ローカルな実力者としてキャリアを全うした。)


クリス・バード 2R TKO ジョン・サージェント

(ヘビー級戦、1999年)

「世界王座&銀メダル」クリス・バード「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

1R:ワンツーでサージェントがダウン

2R:連打でサージェントがスタンディングダウン

(感想:好調のバード。ナサニエル・フィッチ、ユーライア・グラント、バート・クーパー、ジミー・サンダーらを相手に連勝。しかし、アイク・イベアブチ(ナイジェリア)にTKO負け(初黒星)。その再起戦でサージェントと勝負。サージェントはミネソタ州の白人。ニックネームは「Hogman」(「豚男」の意。なぜこんなヒドい呼ばれ方?)。1990年にデビューして中堅相手に連勝。ブランクを作り、判定で初黒星。その後もブランクがちにリングに上がり、連勝。そしてこのバード戦。ペンシルベニア州フィラデルフィアでの一戦。とても太っているサージェント(「四回戦チャンピオン」のバタービーンに似た体型)。ジャブ、フックを出すが踏み込みが甘く、打ち方も微妙。バードはジャブ、連打。軽いパンチをまとめる。ワンツーでサージェントがダウン。2R、バードが連打。左ストレートを食って後退したサージェントが連打を浴びてスタンディングダウン。再開に応じることはできたが、連打されてレフェリーストップ。バードが楽勝。勝っても自慢にならない相手だったが、ボディ打ちを交えた連打には勢いがあった。サージェントは太りすぎ。マトモにパンチも打てず、動きも鈍かった。この後、サージェントはブランク。カムバックして無名相手に連勝したが、シャノン・ブリッグスとのIBU王座決定戦で1RでTKO負け。サージェントはアルコール依存症だったらしく、ブランクと敗北はそれが原因。デビュー当初、好調だった頃はどんな動きをしていたのだろう?)


その後のバード

ホセ・リバルタらに連勝後、ビタリ・クリチコのWBO王座に挑戦して王座獲得。しかし、ビタリの弟ウラジミールに敗れて初防衛ならず。全米王座返り咲き。デビッド・トゥアを相手に初防衛。イベンダー・ホリフィールドとのIBF世界ヘビー級王座決定戦に判定勝ちして世界王座返り咲き(2002年)。アンドリュー・ゴロタ、ジャミール・マクラインらを相手に連続防衛中。


クリス・バード 12R 判定 ダバリル・ウィリアムソン

(IBF世界ヘビー級タイトル戦、2005年)

「世界王座&銀メダル」クリス・バード「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:バードがタイトル防衛。これまで38勝(20KO)2敗1分のバードが四度目の防衛戦。挑戦者ウィリアムソンはワシントンD.C.出身の黒人。元々はフットボールをやっていたが、25歳でボクシングを始める。アマチュアの大会に数多く出場。2000年、プロデビュー。ジョー・メシ、ウラジミール・クリチコらには敗れたが、北米王座、NABO王座、WBC米大陸王座などを獲得。22勝(18KO)3敗。「IBF3位」としてこれが初の世界挑戦。ネバダ州リノでの一戦(会場ではウィリアムソンの妻シャリファが観戦)。左右の構えの違いはあるが、似たタイプ。慎重姿勢でジャブ、ストレート。踏み込んで左ストレートのバード。ウィリアムソンは右ストレート。パンチのキレはバード。しかしながら、実に残念な試合。特にウィリアムソン。自分から攻めない。パンチのキレがないうえに打ち方も微妙。「おっかなびっくり」な試合ぶりで、クリンチを多用。王者バードも元々一発で相手を倒すようなパンチャーではないため試合を盛り上げることができず、接近してもクリンチされてそれっきり。全く盛り上がらないまま12R終了。判定は3-0。前に出たバードが勝っただけの実に残念だった「世界ヘビー級タイトル戦」。マイク・タイソンが王者の時代だったらウィリアムソンが挑戦することはなかったろうし、挑戦したとしても2R以内に終わっていただろう。カネを払って観戦していたリングサイドの客が気の毒に思えたほどの凡戦だった。その後の二人。ウィリアムソンは地域タイトル戦、WBC王座挑戦者決定戦に敗れてキャリア終了。二度目の世界挑戦ならず。バードは次の試合でまたしてもウラジミール・クリチコに王座を奪われ、王座陥落。その後もリングに上がったが、それが最後の世界戦に。連打の回転は速かったが、そのため「軽いボクシング」のイメージを残した。)


 

「ロシアの大巨人」ニコライ・ワルーエフ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBA世界ヘビー級王者。世界王者になる前のテレル・ネルソン戦、シンクレア・バブ戦、ボブ・ミロビック戦ほかを紹介します。


ニコライ・ワルーエフ(ロシア)

身長213cm:オーソドックス(右構え)


ニコライ・ワルーエフ 2R TKO テレル・ネルソン

(ヘビー級戦、1997年)

「ロシアの大巨人」ニコライ・ワルーエフ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

1R:ワンツーでネルソンがダウン

(感想:ソ連・サンクトペテルブルク出身のワルーエフはプロレスラーよりデカい。様々なスポーツを経験(アマチュアボクシング、円盤投げ、バスケットボール)。ドイツでプロデビュー。ロシア、英国、オーストラリアでも戦い、これまで7連勝(6KO)、23歳。ネルソン戦は初のアメリカでの試合。ネルソン(26歳)はニュージャージー州の黒人で、ニックネームは「Baby Bull」。6勝(4KO)3敗。このところ二連続TKO勝ち。アトランチックシティ「Trump Taj Mahal」での一戦(リングアナはマイケル・バッファ。ネルソンのセコンドにあのバディ・マクガート)。ワルーエフの驚くべき大きさ。ネルソンは個性的な髪型(長い髪をくくって「サザエさん」のような雰囲気)。ゴング。ジャブ、ワンツーを基本とするワルーエフ。ネルソンは相手の大きさに対抗するため接近して左右フック、ボディ攻め。コンビネーション(ワンツーからの左フック)、細かいフックなどで応戦するワルーエフだが、フックを食う。そしてワンツーでネルソンがダウン。2R、大きさでワルーエフ優勢。ネルソンが左眉あたりをカットしてドクターストップ。ワルーエフが圧力で勝利。しかし、身体が大きすぎてパンチをもらう欠点。デカいとそれだけ動きも遅くなるのが難点。ネルソンは勇敢に攻めたが、及ばず。相手の大きさに飲まれる形となった。その後のネルソン。再起二連勝後は勝ち星無し。「中堅の個性派」としてキャリア終了。)


ニコライ・ワルーエフ 1R KO シンクレア・バブ

(ヘビー級戦、1997年)

「ロシアの大巨人」ニコライ・ワルーエフ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

1R:右フック連打、右ストレートで2度、バブがダウン

(感想:ネルソン戦の次の試合を日本(横浜アリーナ)で行い、判定勝ちしたワルーエフ。未だ連勝中。バブはニューヨークの黒人。36歳で、2勝(1KO)2敗。記録によるとジェレミー・ウィリアムスにKOされて(1992年)からブランクがあり、これがカムバック戦らしい。オーストラリア・タウンズビルでの一戦。テレル・ネルソンと同じ作戦のバブ。距離を取って右ストレートを狙い、接近して連打。ワルーエフはディフェンスしながら応戦。右フック連打でバブがダウン。立ったバブ。サウスポーにスイッチして抵抗を試みるが、強烈な右ストレートでロープ外に落ちるダウン。今度は立てず、KO。ワルーエフが豪快な勝利。巨大な相手の本気のパンチを食ったバブは真の恐怖を味わった。その後、バブは数試合。勝ち星無しでキャリア終了。)


ニコライ・ワルーエフ 8R 判定 ボブ・ミロビック

(ヘビー級戦、2003年)

「ロシアの大巨人」ニコライ・ワルーエフ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

2R:ワンツーでミロビックがダウン

(感想:バブ戦後のワルーエフ。空位のロシア王座を獲得したり、日本で試合したり。PABA王座獲得、防衛。韓国でも勝利。対戦相手のレベルはわからないが、「勝てる相手」を選んでいる印象も。ミロビック(37歳)はクロアチアの白人で、身長196cmの大型選手。オーストラリアが主戦場で、これまで20勝(12KO)11敗2分。ローカル王座獲得、超ベテランのジョー・バグナーに判定負け、オーストラリア王座連続防衛、ダニー・ウィリアムスにTKO負け(英連邦王座戦)、WBFインター王座獲得、といった経歴。ドイツ・ニュルブルクでの一戦(マルクス・バイエルのWBC世界スーパーミドル級王座戦が行われた興行。ワルーエフ戦の時点では客席に空席が目立っていた)。大型のミロビックだが、相手はもっと大型。そのため相撲のようなクリンチを使いながら隙を見て単発のフック攻撃。ワルーエフはジャブ&巨体で相手にプレッシャーを掛け、ワンツー&フック。2R、ワンツーでミロビックがダウン。その後、フック連打などで攻めるワルーエフ。ミロビックは時折反撃のフックを当てるが、単発のため相手を止めることができない。4Rにはまるで抱きつくかのようなクリンチ。ワルーエフ優勢で8R終了。判定は3-0。ワルーエフは勝ったが、パンチを食う欠点は変わらない。相手の攻撃が単発だったことに助けられた。一方、この試合では相手の大きさに押されっぱなしだったミロビック。その後も多くの試合。日本でオケロ・ピーターに判定負けしたり、南アフリカでフランソワ・ボタに判定負けしたり。ローカルな実力者としてキャリアを全うした。)


ニコライ・ワルーエフ 1R KO オーティス・ティスデイル

(ヘビー級戦、2003年)

「ロシアの大巨人」ニコライ・ワルーエフ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

1R:ワンツーでティスデイルがダウン

(感想:ミロビック戦の次の試合。ティスデイルはノースカロライナ州シャーロット出身の黒人。身長は183cmで、ヘビー級としては大きい方ではない。1996年、デビュー。これまで中堅どころと対戦。マイナー王座を獲得したり、連勝したり。一定の実力はあるが、コーリー・サンダース、元世界王者マイケル・モーラーに敗れるなどこのところ連敗中(サンダースはティスデイル戦の次の試合でウラジミール・クリチコを破り、WBO王者に)。ドイツ・ツウィッカウでの一戦。体格差。ワンツーで早くもダウンのティスデイル。しかし、「スリップ」扱い。ワルーエフがワンツー、左右フックボディ打ち。ところが一発。ティスデイルの狙い澄ました強烈な右ストレートがクリーンヒット。タフなワルーエフは反撃。右ストレートでティスデイルをダウンさせたが、これも「スリップ」扱い。そしてワンツー。片ヒザをキャンバスに着いたティスデイルは左目を痛めたらしく、カウントアウト。1Rでアッサリ終了。ワルーエフは打たれ強い。右ストレートを食ったが、一発ぐらいならマトモに食っても大丈夫らしい。ティスデイルはガードを固めてダッキングしたり、一発を決めたりしたが、やはり体格差があった。この試合では惨敗だったが、この後も多くの試合。ブルース・セルドン、ランス・ウィテカーといった実力者に敗れたり、マイナー王座を獲得したり。2009年までリングに上がり続けた。)


その後のワルーエフ 

WBAインター王座を獲得。無敗のまま世界初挑戦。王者ジョン・ルイスからWBA王座奪取。三度防衛したが、ルスラン・チャガエフ(ウズベキスタン)に判定負けして王座陥落、初黒星。ジョン・ルイスとの決定戦でWBA王座奪回。イベンダー・ホリフィールド相手に防衛成功。イギリスのデビッド・ヘイに敗北して王座陥落、引退。その後、政治家に転身し、ロシア下院議員に当選。巨体に似合わない細かいボクシング、引退後の進路。何かと「意外性」のある男だ。

 

2025年3月27日木曜日

「ボクシング一族」レイモン・ブリュースター②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBO世界ヘビー級王者。世界王者になる前の試合。ゲーリング・レーン戦、ルイス・モナコ戦、チャールズ・シャフォード戦を紹介します。


レイモン・ブリュースター(アメリカ)

身長188cm:オーソドックス(右構え)


レイモン・ブリュースター 10R 判定 ゲーリング・レーン

(ヘビー級戦、1998年)

「ボクシング一族」レイモン・ブリュースター②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:これまで16連勝(15KO)のブリュースター(24歳)。レーン(34歳)はメリーランド州ヒルクレストハイツ出身の黒人で、16勝(8KO)15敗2分。レイ・マーサー、リディック・ボウ、ラリー・ホームズといったトップ選手に負けてきた過去。このところオベド・サリバン、ランス・ウィテカー相手に二連敗中。ただし、いずれも判定で、タフネスはありそう。アイダホ州ボイシでの一戦。共に左のガードを下げた構えからジャブ。このところパワーアップが著しいブリュースターだが、相手のゴツさを警戒して距離を取る。攻めるときは得意の左フック中心。左フック連打からの右ストレート、左ボディ打ちなどにパワー。スキンヘッドのレーンはゴツい身体、太い腕(後ろ姿がジョージ・フォアマンに似ている)。タフで重そうなパンチを放つが、ブリュースターを倒すような勢いはない。6R、左フックからの右フックでグラつくレーン。しかし、力強いコンビネーションを打ち込むブリュースターだが、レーンがタフなためもみ合いになるシーンも。10R終了。判定は3-0。ブリュースターがコンビネーションで勝利。世界には打っても打っても倒れないタフな選手がいる。ブリュースターにとってこの10ラウンズはいい経験になっただろう。レーンは右ストレートに威力。しかし、畳み掛けるような動きができず敗北。これが限界だろう。その後、レーンはハシム・ラクマン、ブライアン・ニールセンらに連敗するなど多くの敗北。2004年までリングに上がり、通算戦績22勝(13KO)39敗2分。) 


レイモン・ブリュースター 2R KO ルイス・モナコ

(ヘビー級戦、1998年)

「ボクシング一族」レイモン・ブリュースター②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

2R:左アッパーでモナコがダウン

(感想:連勝ブリュースター(25歳)。レーン戦の次の試合。相手のモナコはコロラド州デンバーの黒人。身長は180cmで大きくないが、リーチは203cmある。これまで7勝(4KO)13敗2分。バタービーン、トレバー・バービック、ジェームス・ダグラスに敗北、マイケル・ドークスに勝利。このところビタリ・クリチコらを相手に連敗中であるが、名のある選手と戦ってきた。アトランチックシティ「Trump Taj Mahal」での一戦。互いにジャブ。ブリュースターは足で距離を取りながら慎重な姿勢。モナコはゴツいパンチの持ち主で、右ストレート、左フック。ただ、力んで打つため、攻撃の正確さに欠いたり、バランスを崩したり。ブリュースターがワンツーからの左ボディといったコンビネーション。2Rには左フック連打。そして連打からの左アッパーでモナコを倒して、KO。ブリュースターがパワーの乗った左パンチ連打で勝利。二人にはバランスの差があった。その後もモナコは多くの敗北。通算戦績16勝(8KO)39敗5分。)


チャールズ・シャフォード 10R 判定 レイモン・ブリュースター

(ヘビー級戦、2000年)

「ボクシング一族」レイモン・ブリュースター②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:モナコ戦後のブリュースター。強いが、中堅どころとの試合が続く。そして有望株クリフォード・エティエンヌに3-0で敗北、初黒星。再起戦にTKO勝ちしてシャフォード戦。シャフォードはバージニア州マーティンズビル出身の黒人。身長191cmだがアップライトな姿勢で戦うため、実際より背が高く見える。敗北は判定によるものが一つだけ。直前の試合では強打者ジミー・サンダーにTKO勝ち。ミシガン州デトロイトでの一戦。互いにジャブ。フランク・ブルーノに似たタイプのシャフォード。ガードを上げてジャブ、右ストレート、左フック。腰があまり入っていない、腕力を活かす打ち方。ブリュースターは接近して右フックからの左ボディといったフック連打。ハンドスピード、パンチのキレでシャフォードを上回る。ところがシャフォードの小手先のボクシングを崩せない。ブロック、クリンチしながら連打して「打ち合わないボクシング」を展開するシャフォード。ブリュースターもディフェンスするが、ジャブを食う。10R終了。シャフォードは両手を上げて自身の勝利を確信。判定は3-0。シャフォードが左のテクニック、クリンチで勝利。淡々としたつまらない戦いぶりだったが、勝ちは勝ち。ブリュースターは「勝てる相手」をこれまで倒してきた。「やりにくいタイプ」を攻略する手段を考えねばならない。その後の二人。シャフォードはウラジミール・クリチコのWBO王座に挑戦してTKO負け。その後はローレンス・クレイベイに判定負けするなど勝ったり負けたりに。ブリュースターはNABO王座、WBC米大陸王座を獲得するなど連勝。ウラジミール・クリチコとのWBO王座決定戦にTKO勝ちして王者に。アンドリュー・ゴロタらを相手に連続防衛。王座陥落後、網膜剥離の手術。再起戦はIBF王者になったクリチコとのドイツでの再戦。これにTKO負け。その後もリングに上がったが、世界戦はクリチコとの再戦がラスト。左を連打する迫力のある戦いぶりだったブリュースター。引退後はスポーツ専門のコンサル会社を設立。) 

「ボクシング一族」レイモン・ブリュースター①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBO世界ヘビー級王者。デビュー当初のモーゼス・ハリス戦、ロニー・スミス戦、アーティス・ペンダーグラス戦を紹介します。


レイモン・ブリュースター(アメリカ)

身長188cm:オーソドックス(右構え)


レイモン・ブリュースター 1R KO モーゼス・ハリス

(ヘビー級戦、1996年)

「ボクシング一族」レイモン・ブリュースター①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

1R:左ボディでハリスがダウン

(感想:インディアナ州インディアナポリス出身の黒人ブリュースター。ニックネームは「Relentless(情け容赦無い男)」。「ボクシング一族」でクリス・バード(世界ヘビー級王座獲得)は従兄弟。7歳でボクシングをスタート。アマチュアで活躍し、1995年の全米アマチュアボクシング選手権でヘビー級王者に。これがプロデビュー戦で23歳。ハリス(31歳)はオハイオ州ヤングスタウン出身の黒人サウスポー。これまで1勝(1KO)4敗。ラスベガスでの一戦(ラリー・ドナルド、ハシム・ラクマンらが登場したヘビー級イベント。リングアナはジミー・レノン・ジュニア)。腹が少し出ているハリス。右ジャブ、左ストレートを出すが、バランスがよろしくない。ブリュースターが大きなフックで前進し、接近戦ではショート連打。ブリュースターの右腕をホールドするハリスだが、左ボディを食ってダウン。うずくまったままカウントアウト。ブリュースターがあっけない勝利。大雑把な攻めとショートパンチ。粗い試合ぶりだった。ハリスは基本がなっていない男。その後もリングに上がり続けたが、ダネル・ニコルソン、グレグ・ペイジらを相手に全敗。「便利なかませ犬」的な扱われ方だったようだ。)


レイモン・ブリュースター 3R TKO ロニー・スミス

(ヘビー級戦、1997年)

「ボクシング一族」レイモン・ブリュースター①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

2R:左フック、右アッパーで2度、スミスがダウン

3R:左フックでスミスがダウン

(感想:これまで4連勝(4KO)のブリュースター。スミスはあの元WBC世界J・ウェルター級王者、ではない。アーカンソー州ブライスビル出身の黒人で、31歳。ニックネームは「The Bear(クマ)」。身長179cm(ヘビー級にしては低い)、2勝(2KO)3敗。カリフォルニア州ビバリー・ヒルズでの一戦(リングアナはジミー・レノン・ジュニア)。共にガッチリした身体で精悍な顔つき(強そう)。ブリュースターは左のガードを下げた構えから速いジャブ、キレとパワーの右ストレート、左ボディ打ち。スミスは豪快なフックの持ち主で、当たったら一発で相手をKOできそうなほど強振。2R、フックで攻めるスミスだが、左フックでダウン。立ったが、右アッパーで二度目。3R、ロープ際で左フックを食ってスミスがダウン。レフェリーは直ちに試合を止めた。ブリュースターが活きのいい攻めで豪快に勝利。左ボディ打ちに特にキレがあった。スミスもヘビー級らしい豪快なボクシングで、迫力。しかし、振りが大きく、隙があったようだ。その後、スミスは多くの試合。しかし、クリフォード・エティエンヌ、オベド・サリバンにKOされるなど「かませ」な存在。タイトル戦は無し。通算戦績7勝(7KO)38敗。)


レイモン・ブリュースター 1R TKO アーティス・ペンダーグラス

(ヘビー級戦、1998年)

「ボクシング一族」レイモン・ブリュースター①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:連勝のブリュースター。ペンダーグラスはフロリダ州フォート・ローダデール出身の黒人で、ニックネームは「Mad」(危ない奴?)。これまで9勝(9KO)9敗。勝つときはいつもKO、というのが「Mad」の由来か? 元々はミドル級。ベテランのデニス・アンドリュースに判定負け。このところクルーザー級、ヘビー級で四連敗中。アトランチックシティでの一戦。パワーアップしたブリュースター。右ストレート、左フックにパワー。パワフルに左ボディからの左フック、右ボディアッパー。ペンダーグラスの動きも悪くない。マイク・タイソンばりにガードを上げてヘッドスリップしながらジャブ、接近してインサイドから右フック。器用なペンダーグラスだが、身体全体のパワーに差が。右ストレートが効いたペンダーグラス。左フックを連打されたところでレフェリーストップ。ブリュースターが一気に勝利。早く上位陣との試合が観たい、と思うような勝ちっぷりだった。ペンダーグラスはヘビー級では厳しい。その後、中堅相手に連勝、ラリー・ドナルドに敗北、元WBA王者グレグ・ペイジに勝利。中堅選手としてキャリアを全うした。)

 

2025年3月26日水曜日

「兄弟で世界王座独占」ビタリ・クリチコ③「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBC・WBO世界ヘビー級王者。初の世界戦。イスマイル・ユーラ戦、ハービー・ハイド戦、アルバート・ソスノウスキー戦を紹介します。


ビタリ・クリチコ(ウクライナ)

身長200cm:オーソドックス(右構え)


ビタリ・クリチコ 2R TKO イスマイル・ユーラ

(欧州ヘビー級タイトル戦、1999年)

「兄弟で世界王座独占」ビタリ・クリチコ③「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

2R:左フックでユーラがダウン

(感想:クリチコがタイトル防衛。デビューから23連勝のクリチコ。これまでいずれも決定戦でWBOインターコンティネンタル王座、欧州王座獲得。ユーラと欧州王座二度目の防衛戦。挑戦者ユーラはフランス人。フランス王座を防衛してきており、このところ連勝中。どんな試合をするか?  ドイツ・ハンブルク(アルスタードルフ)での一戦(リングサイドでハービー・ハイドが観戦)。ガードしながら前進し、連打するユーラ。クリチコはパターンを確立。相手と距離を取ってジャブ、ワンツー、カウンターのフック。フックの打ち方は相変わらず手打ち気味だが、腕力がある。2R、「左ジャブ、右ストレート、左ジャブ」のコンビネーションでユーラがダウン寸前に。そして左フックでダウン。立ったが、レフェリーストップ。クリチコが正確な攻撃で勝利。国内王者レベルの相手には楽勝できる安定感があった。ユーラは相手の大きさに特に何もできず。その後、再起戦でKO勝ちして引退。クリチコに敗れたショックが大きかったか。) 


ビタリ・クリチコ 2R TKO ハービー・ハイド

(WBO世界ヘビー級タイトル戦、1999年)

「兄弟で世界王座独占」ビタリ・クリチコ③「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

2R:右ストレート、ワンツーで2度、ハイドがダウン

(感想:クリチコがタイトル獲得。デビューから全てKO勝ちのクリチコがプロ25戦目で初の世界挑戦。王者ハイドはナイジェリア生まれでイギリス国籍の黒人。ニックネームは「The Dancing Destroyer(踊る破壊者)」。KO勝ちが多いことからそう呼ばれるが、スピード&連打で勝つタイプで、あまり「破壊者」のイメージは無い。デビューから全勝でWBO王者になったが、リディック・ボウに惨敗して王座陥落。元IBF王者トニー・タッカーを決定戦でKOしてWBO王座奪回。クリチコ戦は奪回した王座の三度目の防衛戦となる。英国ミルウォール「ロンドン・アリーナ」での一戦。体格差。大きい相手を警戒して距離を取るハイド。ジャブ、接近してガチャガチャした振りの大きい連打。右ストレートからの左フックも使用。クリチコはジリジリ距離を詰め、ジャブ。2R、右ストレート(いわゆる「チョッピングライト」)でハイドがあっけなくダウン。再開後、大きなフックで反撃するハイドだが、クリチコはスウェーでかわす。ワンツーでハイドが二度目のダウン。立ったが、フラついてレフェリーストップ。クリチコが拍子抜けするほどあっけない勝利で初戴冠。ヘビー級は体格差が大きいことがよくありこういう結果は珍しくないが、ハイドは実に脆かった。その後のハイド。WBCのインター王座(クルーザー級)を獲得し、防衛にも成功するなど多くの試合。しかし、逮捕されたりといったトラブルも。世界戦はクリチコ戦が最後となった。)


その後のクリチコ

WBO王座を二度防衛後、クリス・バードにまさかの敗北で王座陥落。再起。欧州王座、WBAのインター王座を獲得し、レノックス・ルイスのWBC王座に挑戦。これに敗北。コーリー・サンダースを決定戦でTKOしてWBC王座獲得。初防衛に成功したが、ヒザを痛めて引退(2004年)。2008年にカムバック。復帰一戦目は何とWBC王座挑戦。王者サミュエル・ピーターをTKOしてWBC王座奪回。アルバート・ソスノウスキーと奪回した王座の四度目の防衛戦。


ビタリ・クリチコ 10R KO アルバート・ソスノウスキー

(WBC世界ヘビー級タイトル戦、2010年)

「兄弟で世界王座独占」ビタリ・クリチコ③「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

10R:右フックでソスノウスキーがダウン

(感想:クリチコがタイトル防衛。クリチコのプロ42戦目。挑戦者ソスノウスキーはポーランド・ワルシャワ出身。ニックネームは「The Dragon」(獰猛な試合をするタイプなのだろう)。デビューから連勝。WBCユース王座戦でKO負け、初黒星。ピークを過ぎたオーリン・ノリスらを相手に連勝。決定戦でWBF王座、欧州王座獲得。英国、ドイツ、アメリカ、南アフリカなど様々な国で戦ってきた経験がクリチコに通じるかどうか? ドイツ・ゲルゼンキルヘンでの一戦(リングアナはマイケル・バッファ、レフェリーはジェイ・ネイディ)。身長差のある対決。大きなクリチコは左のガードを下げた構えから左ジャブ、打ち下ろすような右ストレート。残念ながら左フックは当てるだけのような打ち方で、迫力無し。全般的に「小手先のボクシング」で、かつてのようなパワーが感じられない。挑戦者も残念。クリチコの大きさにビビって「おっかなびっくり」な試合ぶり。威圧されて単発の反撃をするが、かわされる。ただ、右ストレートには良さ。クリチコ優勢。ソスノウスキーは手数が少な目。10R、右フックでソスノウスキーがついにダウン。それと同時にレフェリーは試合を止めた。微妙だった世界ヘビー級タイトル戦。クリチコはアメリカでは人気が無かったが、それを物語るような内容。共に動きのキレに欠けた。その後の二人。ソスノウスキーは欧州王座戦でKO負けするなど勝ったり負けたり。世界戦はクリチコ戦のみ。クリチコはシャノン・ブリッグスらを相手に防衛(WBC王座は通算10度防衛)。地元ウクライナが政情不安になり、王者のまま引退(王座返上)。2014年、キーウ市長に当選。ロシアによるウクライナ侵攻により命が危険にさらされている状況。)