WBC世界J・バンタム級、WBO世界バンタム級王者。世界王座戦。ラタナチャイ・ソーウォラピン戦(再戦)、ファン・マヌエル・ロペス戦ほかを紹介します。
ジェリー・ペニャロサ(フィリピン)
身長163cm:サウスポー
①ジェリー・ペニャロサ 10R 判定 トマス・ロハス
(バンタム級戦、2006年)
(感想:徳山昌守との再戦に敗れたペニャロサ(2002年12月)。2004年9月にカムバックして勝利。再起二戦目では決定戦でWBF王座(スーパーフライ級)獲得。三戦目は判定勝ちで、49勝(32KO)5敗2分。そしてこのロハスとの四戦目(プロ57戦目)。このところ試合間隔が長いが、コンディションはどうか? 22勝(14KO)8敗のロハスはメキシカン。勝ったり負けたりの不安定な時期を乗り越え、メキシコ王座(スーパーフライ級)、WBAの地域王座(スーパーバンタム級)獲得。しかし、このところ二連続判定負け。フィリピン・ケソンシティでの一戦(「マニー・パッキャオ vs. オスカー・ラリオス」のアンダーカード)。共にサウスポー。スリムなロハスが距離を取って右ジャブ。左ストレートに伸びとキレ。そしてボディ打ち、突き上げるかのような右フック。打つときは連打で一気に畳み掛ける(ダニエル・サラゴサに似ている)。ペニャロサは以前と全く変わらない。ディフェンス、左ストレート、右フック。2Rにはバッティングで負傷(おなじみの光景)。試合は全般的にパワーのペニャロサ、手数のロハス。ペニャロサが連打するシーンも(4Rほか)。最後までロハスが手数を出して10R終了。判定は3-0。ペニャロサのパワー&ディフェンスが評価されたらしい。ロハスは左ストレート、右フックボディ打ちが良かった。ただ、ペニャロサのガードを突破するほどのパワーではなかった印象。その後のロハス。アンセルモ・モレノ、ホルヘ・アルセに敗北。経験を積んだのが功を奏し、WBC世界スーパーフライ級王座獲得、連続防衛。王座陥落後は山中慎介のWBC世界バンタム級王座に挑戦してKO負けしたり、WBCの地域王座(フェザー級、スーパーフェザー級)を獲得したり。名のある選手と多くの試合をこなした。)
②ジェリー・ペニャロサ 9R TKO マウリシオ・マルチネス
(バンタム級戦、2006年)
(ダウンシーン)
1R:左ストレートでマルチネスがダウン
4R:ワンツーでマルチネスがダウン
9R:左ストレートでマルチネスがダウン
(感想:ペニャロサ(34歳)のプロ58戦目。マルチネス(31歳)はパナマの黒人。デビューから無敗でパナマ王座(バンタム級)を獲得したが、フレディ・ノーウッド、エクトール・アセロ・サンチェスに敗北。ニューヨーク州王座(フェザー級)獲得。NABO王座(バンタム級)獲得、連続防衛。決定戦でWBO世界バンタム級王者に。クルス・カルバハルにKO負けで王座陥落後はWBA、WBOの地域王座獲得。WBO王座の奪回には失敗したが、このところ連勝中。テキサス州エル・パソでの一戦。1R、共にサウスポーで似たタイプ。ディフェンスしながら右ジャブ、左ストレート、右フック。動きのスピードはそこそこ。クロス気味の左ストレートでマルチネスがダウン。その後、攻めるペニャロサ、応戦するマルチネス。「パナマのサウスポー」によくある「パンチの伸びとテクニックはあるが、KOを狙う激しさに欠ける」パターン。マルチネスもそのタイプで、ペニャロサのパワーに押され気味。4Rにはワンツーでダウン。9R、ペニャロサが右フックからの左ストレートをキッカケに連打。左ストレートでマルチネスがダウン。倒れると同時にレフェリーストップ。ペニャロサが左パンチで快勝。動きのキレはさすがに落ちたが、パンチ力は健在。マルチネスはテクニックで勝負するタイプ。圧力が強い相手には弱いようだ。その後もマルチネスはリングに上がり続けたが、地域王座戦に敗れたり、ホルヘ・アルセに判定負けしたり。世界王座返り咲きならず。)
③ジェリー・ペニャロサ 8R TKO ラタナチャイ・ソーウォラピン
(WBO世界バンタム級タイトル戦、2008年)
(ダウンシーン)
8R:連打でラタナチャイがダウン
(感想:ペニャロサがタイトル初防衛。マウリシオ・マルチネス戦の次の試合でダニエル・ポンセ・デ・レオン(メキシコ)のWBO世界スーパーバンタム級王座に挑戦したペニャロサだが、判定負け(2007年3月)。驚くべきことにその再起戦でジョニー・ゴンザレス(メキシコ)のWBO世界バンタム級王座に挑戦してKO勝ち、二階級制覇達成。初防衛戦はラタナチャイとの再戦。初戦はWBCスーパーフライ級インター王者ペニャロサが初防衛戦としてラタナチャイの挑戦を受けてKO防衛(2000年)。再戦はどんな内容となるか? タイの挑戦者ラタナチャイ(33歳)は「兄弟ボクサー」で兄は元IBF世界ストロー級王者ラタナポン・ソーウォラピン。これまで71勝(47KO)9敗。敗北を喫しながらもタイ王座、IBFインターコンティネンタル王座を獲得してきた。しかし、マーク・ジョンソンとのIBF世界スーパーフライ級王座決定戦は判定負け。ペニャロサとのインター王座戦でKO負け。ティム・オースティン(IBF世界バンタム級王座戦)、クリス・ジョンに敗北。WBOアジア王座(バンタム級)獲得後、クルス・カルバハルからWBO世界バンタム級王座奪取。マウリシオ・マルチネス相手に防衛に成功したが、ジョニー・ゴンザレスに敗れて王座陥落。その後、連勝でこのペニャロサ戦。雪辱及び世界王座奪回なるか、といったところ。フィリピン・ケソンシティでの一戦(会場ではマニー・パッキャオ、ファン・マヌエル・マルケスが観戦)。共にサウスポーで共通点が多い(打ち方、体格、トランクスのカラーなど)。ペニャロサはいつもの坊主頭ではなく少し髪を伸ばしている。この試合では動きがリズミカルで右フックからの左ストレートといったコンビネーション、連打が光る。ラタナチャイはタイ人らしい一発一発に力を込めるタイプ。ワンツーからの右フック、左右フック連打に迫力。試合は手数でペニャロサが優勢(かつて曺仁柱、徳山昌守に負けたときは手数で及ばなかったが、この試合のようにしっかり手数を出していれば負けることはなかっただろう)。4R、右フック連打を食ってラタナチャイが後退。8R、バッティングでペニャロサが出血。これでさらに気合いが入ったかペニャロサが右アッパーでラタナチャイをダウン寸前に追い込み、連打でラタナチャイがダウン。立ったラタナチャイだが、連打を浴びてレフェリーストップ。ペニャロサが快勝。手数が多いペニャロサは実に驚異的。ただでさえパンチがある選手に連打で攻められたら打たれる方はたまったものではないだろう。ラタナチャイは強打者だが、「流れるような連打」ができない弱点があった。その後もラタナチャイはリングに上がり続けたが、WBOの地域王座戦に敗れるなど勝ったり負けたり。強い選手だったが、より強い選手に行く手を阻まれることが多いキャリアだった。)
④ファン・マヌエル・ロペス 10R TKO ジェリー・ペニャロサ
(WBO世界スーパーバンタム級タイトル戦、2009年)
(感想:ロペスがタイトル防衛。これまで54勝(34KO)6敗2分のWBO世界バンタム級王者ペニャロサ。かつて獲れなかった王座に挑戦して三階級制覇を狙う。24戦全勝(22KO)の王者ロペスはプエルトリカン。10歳でボクシングを始める。アマチュアの国内王者(バンタム級)に。アテネ・オリンピック(2004年)にプエルトリコ代表でバンタム級に出場したが、1回戦で敗退。プロ入り後は連戦連勝。WBOの地域王座(スーパーバンタム級)獲得、防衛。2008年6月7日、ダニエル・ポンセ・デ・レオン(メキシコ)を1Rで仕留めてWBO世界スーパーバンタム級王座奪取。ペニャロサ戦は三度目の防衛戦となる。プエルトリコ・バヤモンでの一戦(リングアナはマイケル・バッファ。TV解説者はレノックス・ルイス)。共にサウスポー。接近戦では力強く右ジャブ、ワンツー、フック、ボディ打ち。積極的で手数が多いロペス。ボディをよく攻め、アッパーも入れていく。打撃戦が続く。ペニャロサはワンツーがパワフルだが、勢いでロペス優勢。9R、ロペスが左アッパーからの右フックなどで攻勢。このラウンド終了後、ペニャロサが棄権。ロペスが攻めの姿勢で勝利。ペニャロサは負けたが、タフでパワーがあった。これだけ戦えれば十分だろう。その後の二人。ロペスは全勝を守り、2010年1月23日にスティーブン・ルエバノ(アメリカ)をTKOで下してWBO世界フェザー級王座獲得、二階級制覇。防衛に成功後、TKOで初黒星。王座奪回を目指したが、世界王座返り咲きならず。ボクサーとしては素晴らしい実績を残したが、プライベートでは女性に暴力を振るって逮捕。リングでも強い男が女性に暴力では話にならない(残念)。ペニャロサはWBO世界バンタム級王座返上。エリック・モレルとWBO世界バンタム級暫定王座決定戦を行い、判定負け。その再起戦にTKO勝ちして引退。引退後はボクサーになった甥のプロモートをしたり、ノニト・ドネアのトレーナーを務めたりした。)
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