英国ウェルター級。キャリア後期の試合。ロッキー・バーグ戦、パトリツィオ・オリバ戦、デル・ブライアン戦ほかを紹介します。
カークランド・レイン(イギリス)
身長 cm:オーソドックス(右構え)
①カークランド・レイン 2R TKO ロッキー・バーグ
(J・ミドル級戦、1990年)
(ダウンシーン)
2R:左フック連打でバーグがダウン
(感想:かつて獲り損ねた欧州王座(ウェルター級)をKO勝ちで獲得したレイン。その次の試合はノンタイトル戦。バーグは精力的に試合するアメリカ・オクラホマの白人。デビューは1986年だが、毎月のようにリングに上がったり、一ヶ月に三試合したりのときも。オクラホマ州王座(J・ウェルター級)を獲得するなど連勝していた頃もあったが、バック・スミス(レインをKO)、ルネ・ジャコ(後のWBC世界J・ミドル級王者)に敗北。このところ勝ったり負けたり。英国ケンジントン「ロイヤル・アルバート・ホール」での一戦(レフェリーはラリー・オコーネル)。長い髪を編んでくくっているレイン。ノーガードで相手を誘ったり、「ひょこひょこ」した感じのヘンな動きをしたり。バーグは映画の「ロッキー・バルボア」をイメージした男で、サウスポースタイル&星条旗トランクス。ただ、身長でレインに劣るのもあって、右ジャブ、左ストレートは届かず。レインが攻めの姿勢でワンツー、フック連打。右ストレートが効いたバーグは1Rからピンチ。2R、レインが「トコトコ」足踏みをするかのようなフットワークから右ストレート。またしても右パンチが効いたバーグはボディ打ちからの左フック連打でダウン。立ったが足に来ており、レフェリーに止められた。レインが畳み掛ける連打で快勝。身長差もあって有利に試合を進めた。バーグは踏み込みに甘さ。映画のロッキーのようなパワーは無かった印象。その後もバーグは勝ったり負けたり。ローカル王座(J・ミドル級)を獲得したり、レスター・エリスと空位のWBF王座(ウェルター級)を争ってKO負けしたり。通算戦績62勝(41KO)43敗2分。多くの試合で、思い出もいっぱいだろう。)
②パトリツィオ・オリバ 12R 判定 カークランド・レイン
(欧州ウェルター級タイトル戦、1990年)
(感想:オリバがタイトル獲得。欧州王者レイン。バーグ戦の次の試合は敵地での欧州王座防衛戦。挑戦者オリバはイタリアのナポリ出身。1980年のモスクワ・オリンピック(アメリカがボイコットした大会)ではライトウェルター級で金メダル。プロ入り後は地元を中心にリングに上がり、イタリア王座、欧州王座(いずれもJ・ウェルター級)を獲得。欧州王座を連続防衛後、ウバルド・サッコ(アルゼンチン)からWBA世界J・ウェルター級王座獲得。防衛にも成功したが、日本でもおなじみファン・マルチン・コッジに3RでKOされて王座陥落。再起三連勝で、レイン戦。イタリアのカンピョーネ・ディターリアでの一戦。共にアップライトスタイル(まるで古い時代の試合を観ているような雰囲気があった)。例によってレインはノーガード&カウンター狙い。オリバは手数。ジャブ、ワンツー、コンビネーション(「ワンツーからの左フック」「右ストレート、左ジャブ、右ストレート」など)。しかしクリンチが多く、1Rからレインをイラつかせる。中間距離でジャブ、ワンツーの両者。接近戦はオリバのクリンチのせいで盛り上がらないが、オリバは時折右パンチをヒットさせる。12R、レインの長い髪を束ねているヒモがほどけて試合中断。さらにレインはオリバのクリンチにイライラ。オリバはフットワークを使って逃げ切る作戦。12R終了。共に両手を上げて自身の勝利をアピール。判定は3-0。勝って大喜びのオリバ。手数で勝利をモノにしたが、打ち合いを避けるクリンチ作戦はあまりカッコのいいものではなかった。レインはトリッキーなボクシング。素直に相手が攻めてきてくれないとカウンター作戦は使えない。共に残念なところがあった欧州王座戦だった。その後のオリバ。欧州王座を連続防衛後、バディ・マクガートのWBC世界ウェルター級王座に挑戦したが判定負け。それが最後の試合に。)
③デル・ブライアン 12R 判定 カークランド・レイン
(英国ウェルター級タイトル戦、1991年)
(感想:ブライアンがタイトル獲得。これまで38勝(21KO)8敗1分の英国王者レインがオリバに負けた再起戦。挑戦者ブライアンは英国ノッティンガム出身の黒人サウスポーで、21勝(5KO)8敗1分。勝ったり負けたりだが、ローカル王座(ウェルター級)を獲得したり、後の世界王者クリサント・エスパニャに判定負け、ハビエル・カスティリェホに判定勝ちしたり。直前の試合は南アフリカでTKO負け。勢いのある状況ではないが、経験を積んできた。英国ケンジントン「ロイヤル・アルバート・ホール」での一戦(ラウンドカットされた映像で観戦)。後ろ髪を伸ばしてヘアバンドでまとめているレイン。相変わらず個性的。カニのように横歩きしたり、トコトコ歩くような独特のフットワーク。そして、ノーガードでジャブ、ストレートを飛ばす。前髪を一部だけ生やしているヘンな髪型のブライアンはガードしながら左ストレートを打っていく。共に速いパンチ。互いにディフェンス。6R、ワンツーを打たれてレインのヘアバンドがどこかへ吹っ飛ぶ。手数はややブライアンの方が多い印象。12R終了。判定はPTS(レフェリーが一人で採点)。勝って喜ぶブライアン。積極さで勝利。レインは攻めをディフェンスされてしまった。個性的でも認められるのは勝つから。負けるとちょっとカッコ悪い感じがする。その後のブライアン。ゲイリー・ジェイコブスに王座を奪われたが、パット・バレットとの決定戦で王座奪回。防衛にも成功。しかし、欧州王座(ウェルター級)は獲れず。最後はピークを過ぎ、六連敗で引退。)
④ケビン・ルーシング 5R TKO カークランド・レイン
(英国南部地域J・ミドル級王座決定戦、1993年)
(感想:ルーシングがタイトル獲得。ブライアン戦の次の試合でドノバン・ブーシェに敗れたレイン。三連敗となってしまい、引退。そして93年にカムバックして二連勝。年齢は39。これまで40勝(21KO)10敗1分。ルーシング(25歳)はロンドン・ベックナム出身(褐色の肌)。デビューから10連勝中(8KO)。試合経験のある中堅選手と戦ってきており、王座戦はこれが初めて。ロンドンのエドモントンでの一戦。共にスリムな身体。ルーシングがガード上げて前進。ジャブ、右ストレート、左フックの正統派ボクシング。レインは逆。ガードを下げてジャブ、右ストレート、左フックでカウンター狙いのトリッキーな動きで迎え撃つ。レインの独特な動きに攻めにくそうなルーシング。3R終わり頃、何を勘違いしたか、レインが余所見して攻撃されるハプニング(おそらくラウンド終了10秒前の合図。「ラウンド終了」と誤解したのだろう)。5R、それまでと同じような展開の中、レフェリーが突然試合ストップ。レインが右眉付近のキズによりTKO負け。実に不満そうでレフェリーに抗議したが、無駄。ルーシングは勝ったが、レインを圧倒したわけではなかった。その後の二人。ルーシングは次の試合でTKO負け、初黒星。連勝して英国王座、IBO王座(いずれもウェルター級)獲得。しかし、世界には上には上が。フェリックス・トリニダードのIBF世界ウェルター級王座に挑戦して3RでTKO負け。続く英国王座戦もTKO負け。ラストファイトはWBO世界J・ミドル級王座挑戦で、3RでTKO負け。レインは再起して三連続TKO勝利、そしてTKO負けで引退。世界王座は獲得できなかったが、世界王者に匹敵するほどの存在感。試合のプレッシャーに負けてアルコールや薬物に逃げたこともあったそうだが、リングではそういった雰囲気は感じられなかった。2021年に66歳で死去。体調不良だったという。個性の強い選手だったが、繊細な精神の持ち主だったようだ。)