2024年2月14日水曜日

「技巧派のクルーザー」アルフレッド・コール「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

IBF世界クルーザー級王者。ヘビー級に挑戦。マイク・ディクソン戦、マイケル・グラント戦、テレンス・ルイス戦を紹介します。

アルフレッド・コール(アメリカ)

身長193cm:オーソドックス(右構え)

アルフレッド・コール 9R TKO マイク・ディクソン

(ヘビー級戦、1995年)

「技巧派のクルーザー」アルフレッド・コール「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ニュージャージー州アトランチックシティ出身のコールは「アイスマン(IQが147あることから。「クールな頭脳派」という意味らしい)」と呼ばれた黒人アウトボクサー。ソウル五輪の国内予選でアンドリュー・メイナード(金メダル獲得)に敗れ、プロ入り。「Triple Threat」(脅威の三人組)というキャッチフレーズでレイ・マーサー、チャールズ・マレーとトリオで売り出された。身長は193cmであるが、細身。「パワーはそれほどでもない」という評価。デビューから連勝だったが、レオン・テイラーに判定負け、初黒星。その次の試合はテイラーと空位の全米クルーザー級王座を懸けた決定戦。判定勝ちで初の王座奪取。ネート・ミラー、フランキー・スウィンデルに勝利後、ジェームス・ワーリングからIBF世界クルーザー級王座獲得。順調に防衛。ディクソンとノンタイトル戦。ディクソンはオハイオ州クリーブランドの黒人。番狂わせでWBC米大陸王座(ヘビー級)を獲得したことがあるが、負けの方が多い中堅どころ。ただ、レノックス・ルイス、レイ・マーサー、オリバー・マッコールといった実力者と対戦経験あり。フロリダ州ペンサコーラでの一戦。黄色いトランクスのコール。ジャブ連打からの右ストレート、左フック、アッパー。コンビネーションで攻める。ディクソンはスキンヘッドで強そうな見た目。しかしながら、のらりくらりとした動きでスピードに欠け、パンチのキレもそこそこ。コールが突き刺すようなジャブで先手を取り、接近戦ではショートの左フックで優勢。ただし、器用さはあるが、パンチは軽め。ディクソンは大振りの右フック、左ボディ打ちに迫力があるが、ディフェンスされる。手数で試合をリードするコール。5Rに連打で、6Rには左フックでディクソンのマウスピースを吹っ飛ばす。打たれるディクソン。8R終了後に棄権。コールが連打で勝利。ただ、クリーンヒットしても倒せないパンチ力に今後の不安を残した形。ディクソンはスピード不足。いくらヘビー級でもそれなりにスピード・キレは必要。その後、ディクソンはカーク・ジョンソンらを相手に負けに負けてキャリアを終えた。)


マイケル・グラント 11R TKO アルフレッド・コール

(IBCヘビー級王座決定戦、1997年)

「技巧派のクルーザー」アルフレッド・コール「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:グラントがタイトル獲得。ディクソン戦の次の試合でユーライア・グラントを判定で下してIBF王座の五度目の防衛に成功したコール。王座返上、ヘビー級へ本格的に進出。しかし、元WBA王者ティム・ウィザスプーンに判定負け。その次の試合は1RでのKO勝ち。そして、このグラント戦。これまで28勝(14KO)2敗で33歳。グラント(24歳)はイリノイ州シカゴ出身の黒人。身長は何と201cm。24戦全勝(16KO)。ただし、相手は中堅どころが多く、王座戦の経験はまだない。アトランチックシティでの一戦。共にややアップライトな姿勢。グラントがパワーを込めてジャブ、右ストレート、左フック。コールは距離を取ってジャブ、ワンツー、左フック。「攻めてはクリンチ」で、相手の反撃を封じる作戦。攻めるときのガードに甘さがあるグラント。コールの右カウンターがヒット。その後、コールが右ストレートからの左ジャブといったテクニック。器用さ、パンチの正確さでコール、腕力でグラント、といった展開。8R、グラントのラッシュにコールが押される。左目下が腫れていくコール。9R、10Rに右カウンターを食う。10R終了後、コールが棄権。パワーで決着。やはりヘビー級とクルーザー級ではパワー、耐久力が違う。グラントはスピードが無く、ディフェンスに隙があった。正直なところ期待外れな選手だったが、それでもコールのパンチは通じなかった。その後のグラント。北米王座獲得。防衛にも成功。しかし、レノックス・ルイスの世界王座に挑戦して2RでKO負け(力みすぎて惨敗)。その後もリングに上がり続けたが、メジャーな世界王座への挑戦は無し。WBF王者になれたが、TKO負けでアッサリ王座陥落。)

   

テレンス・ルイス 10R 判定 アルフレッド・コール

(ヘビー級戦、2000年)

「技巧派のクルーザー」アルフレッド・コール「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

3R:ワンツーでコールがダウン

9R:右ボディでコールがダウン

(感想:ヘビー級で苦戦するコール(36歳)。カーク・ジョンソンと引き分けたが、再戦では判定負け。コリー・サンダースとWBU王座を争ったが、1RでTKO負け。そして、このルイス戦。これまで26勝(18KO)7敗のルイス(27歳)はペンシルベニア州フィラデルフィアの黒人。身長は大きくないが(183cm)、リーチは203cmある。デビューからまずまずの戦績であったが、2000年にはピークを遙かに過ぎた元WBA王者グレグ・ペイジにKO負け。ニューヨークでの一戦(ヘビー級の中堅どころが登場した興行。この試合がメインだったと思うが、会場は空席が多かった)。リングアナは赤いドレスの美女。横幅がゴツくなったコール(セコンドに元WBA世界ライトヘビー級王者エディ・ムスタファ・ムハマド)。しかし、パワーは変わらず。共にジャブ、連打。打ち合いの中、ルイスの左フックが時折ヒットする。3R、ワンツーでコールがダウン。接近戦。互いにフック、ボディ打ち、アッパー。ルイスがフック連打で優勢。5R、コールがローブロー。その後もコールは相手の勢いに押されてボディ狙いがローブローに。9R、ルイスがコールを押し倒して共にロープ外へ。9R、ローブロー気味の右ボディでコールがダウン(ローブローされた仕返しか)。10R、コールが押されて転倒。10R終了。判定は3-0。それほどパンチがあったわけではなかったが、ルイスがパワーで勝利。その後の二人。ルイスは次の試合でマイケル・モーラーにKO負け。コールは負けが多くなっていった。クルーザー級ではハンドスピードで勝ってきたコール。ヘビー級では通用せず。IQが147もある頭脳派だったが、ヘビー級への進出は「賢い判断」だったのだろうか?  引退後はトレーナーとして若い選手を指導しているそうだが、ヘビー級戦でのダメージは大丈夫なのだろうか?)

 

「世界王者兄弟の兄」オーリン・ノリス「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBA世界クルーザー級王者。ディー・コリアー戦、ジェシー・シェルビー戦、アーサー・ウィリアムス戦(初戦)を紹介します。

オーリン・ノリス(アメリカ)

身長180cm:オーソドックス(右構え)

オーリン・ノリス 12R 判定 ディー・コリアー 

(北米ヘビー級タイトル戦、1989年)

「世界王者兄弟の兄」オーリン・ノリス「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ノリスがタイトル防衛。テキサス出身のノリス。弟はあのテリー・ノリス(WBC世界J・ミドル級王座を獲得し、シュガー・レイ・レナードらとビッグマッチ。どちらかというと弟の方が人気があったが、それは「クルーザー級」の地味さも関係していると思われる)。アマチュアで好成績。プロでは小柄ながらヘビー級でスタート。プロ三戦目で判定負け。その後、連戦連勝で北米ヘビー級王座を獲得。その後、何とレナルド・スナイプス、ジェシー・ファーガソン、グレグ・ペイジらを撃破。これまで21勝(9KO)1敗でWBA4位。コリアー戦は五度目の防衛戦となる。挑戦者コリアーはイリノイ州シカゴの黒人。13勝(8KO)8敗。デビュー戦に敗北。以後、ジェームス・ダグラスに判定負けするなど勝ったり負けたり。ただ、タフ男ランドール・コッブにKO勝ち、カリフォルニア州王座獲得、強打者アレックス・ガルシアに勝利(ガルシアの初黒星)、といった実績。ラスベガスでの一戦(TV解説席にテリー・ノリス)。背は低いがガッチリしたノリス。ディフェンスしながらジャブ連打、接近してフック。マイク・タイソン風の攻め方。コリアーはヘビー級の体格。ジャブを使うボクサータイプ。ストレート、フックを器用に使うが、パワーはそこそこ。ただし、接近戦でのボディ打ちは悪くない。4R、互いに打ち合う激しい攻防。その後、攻めるコリアーだが、パワー不足の印象。ノリスはやはりヘビー級ではキツいのか、打ち合いは避けたい様子。連打をまとめて距離を取ったり、クリンチしたり。12R終了。判定は3-0。ブロック&フック、カウンターでノリスが勝利。ただ、相手のパワー不足に助けられた印象。コリアーにもっとパワーがあったら勝敗は逆になっていたかも。コリアーはボディ打ちに良さがあったが、これが最後の試合となった。)


その後のノリス

北米ヘビー級王座戦でバート・クーパーにTKO負け。後の世界王者オリバー・マッコールに判定勝ち。ライオネル・ワシントンとの決定戦で北米ヘビー級王座奪回。しかし、初防衛戦で元IBF王者トニー・タッカーに敗北、王座陥落。階級を下げて再起戦。ジェシー・シェルビーと北米クルーザー級王座決定戦。


オーリン・ノリス 10R 負傷判定 ジェシー・シェルビー 

(北米クルーザー級王座決定戦、1991年)

「世界王者兄弟の兄」オーリン・ノリス「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ノリスがタイトル獲得。WBC13位のノリス。シェルビーはノリス同様、テキサス出身。長身(191cm)のサウスポー。テキサス州王座(クルーザー級)獲得、イベンダー・ホリフィールドにKO負け、JB ウィリアムソンにTKO負け、ジェフ・ラムキンに判定負け、トミー・モリソンにTKO負け、といったキャリア。一定の実力はあるが、飛び抜けた選手ではない。カリフォルニア州サンディエゴでの一戦。身長差がある二人。小柄なノリスがウィービング、ブロックしながら前へ。右ストレート、右フック、左アッパー、ボディ打ちに迫力(元WBA世界ヘビー級王者マイケル・ドークスに似た戦いぶり)。シェルビーはアップライトスタイルで右ジャブ、左ストレート、右フック。残念なことにパンチのキレはそこそこ。パワーでノリスが優勢。左ボディ打ちが特に効果的。ただ、動きにのらりくらりとしたところがあり、相手を仕留められない。接近戦。互いにディフェンスしながらストレート、フックでの打ち合い。5R、右ストレートでシェルビーが後退。7R、ノリスが踏み込んで斜め下からの左フック(迫力)。次第に乗ってきたか、シェルビーが左ストレート、右フックで攻める。10R、ノリスの右ストレートがヒットしたが、バッティングで負傷。このラウンド終了後、負傷判定でノリス。ノリスの長所と短所が見られた試合。パンチ自体は良いが、機敏な動き、相手を追い込む鋭さに欠ける部分があった。シェルビーはスピードが無い。上を目指すような激しさを感じられない試合ぶりだった。その後、シェルビーはヘビー級へ。アンドリュー・ゴロタ、ティム・ウィザスプーンらに敗北するなど負けが多かったが、テキサス州王座(ヘビー級)を獲得できた。)

   

その後のノリス

クルーザー級で好調。連戦連勝でWBA世界クルーザー級王座獲得(かなり強烈なKO劇だった)。弟に遅れをとったが、「兄弟世界王者」に。ノンタイトル戦にTKO勝ち。そして、アーサー・ウィリアムスと初防衛戦。


オーリン・ノリス 12R 判定 アーサー・ウィリアムス 

(WBA世界クルーザー級タイトル戦、1994年)

「世界王者兄弟の兄」オーリン・ノリス「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

1R:右フックでウィリアムスがダウン

(感想:ノリスがタイトル防衛。これまで39勝(22KO)3敗1NCの王者ノリス(28歳)。WBA1位の挑戦者ウィリアムス(29歳)はフロリダ州ペンサコーラ出身(ロイ・ジョーンズ・ジュニアと同じ)。21勝(16KO)1敗1分。デビューから連勝だったがKOで初黒星。その後、ピークを過ぎたドワイト・ムハマド・カウイに勝利、ユーリ・ブーリンを決定戦で下して全米王座(クルーザー級)獲得、元IBF王者ジェフ・ラムキンに勝利、といった実績。このところ連勝中で挑戦者の資格は十分。ラスベガス「MGM Grand」での一戦(会場ではテリー・ノリス、フランキー・ランドールが観戦)。アップライトスタイルのウィリアムス。ボクサータイプでジャブ、ワンツー、左フック。手打ちなパンチ。攻めるノリス。左フックが効いたウィリアムスが右フックでダウン。その後、距離を取ってワンツー、左フックのウィリアムスをノリスがジャブで追う展開。手数が多いウィリアムス。ノリスは強いジャブを出しているが、ブロックされたり逃げられたり。6R、ウィリアムスが手打ちで連打。しかし、時折強いフック、アッパーを打ち、ノリスがピンチ。その後も手数のウィリアムス、ジャブで前に出るノリス。12R終了。共に両手を上げて自身の勝利をアピール。特にウィリアムスはセコンドにかつがれ、勝利を確信している様子。判定は2-1。映像では手数でウィリアムスが勝ったように見えたが、ジャッジはノリスの攻める姿勢とパワーを評価したようだ。残念だったウィリアムス。しかし、クルーザー級という重量級でパワーの乗らないアウトボクシング。正直なところ魅力的な選手ではない(良いパンチを持っているのは間違いないが)。2-1だったということで両者はダイレクト・リマッチ。しかし、今度は3RでのTKOでノリスが圧勝。その後の二人。ウィリアムスはIBF王者に。王座陥落後も多くの試合をこなした。ノリスは五度目の防衛戦でネート・ミラーに敗北、王座陥落。再びヘビー級へ。マイク・タイソン、ビタリ・クリチコといった大物と対戦(結局、ヘビー級での世界王座獲得はならず)。小さいがエネルギーの塊のようなチャレンジ精神にあふれる逞しい男であった。)

 

2024年2月12日月曜日

「ドイツ人サウスポー」ヘンリー・マスケ②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

IBF世界L・ヘビー級王者。王座防衛戦。グラシアノ・ロッシジャーニ戦(再戦)、デュラン・ウィリアムス戦ほかを紹介します。「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

ヘンリー・マスケ 12R 判定 グラシアノ・ロッシジャーニ

(IBF世界L・ヘビー級タイトル戦、1995年)

「ドイツ人サウスポー」ヘンリー・マスケ②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:マスケがタイトル防衛。8度目の防衛戦はドイツ人同士のダイレクト・リマッチ。IBF11位(前回は9位だった)の挑戦者ロッシジャーニは元IBF世界S・ミドル級王者。前回の試合では左ストレートでマスケを追い込んだが、3-0で敗北。今度はどうか? ミュンヘンでの一戦(リングアナはマイケル・バッファ、レフェリーはアメリカの黒人ロバート・バード。ドイツ人同士の対戦にもかかわらずアメリカンな人選。それだけ「注目のイベント」だったということか)。ゴング前、ロッシジャーニが何やらイラついた態度(カメラマンや広告物に怒り)。開始から前回有効だった左ストレート、左アッパーで攻めるロッシジャーニ。マスケはいつものようにディフェンス&右ジャブ。今回は距離を取ってアウトボクシング。そして前回有効だった左ボディ打ち。接近戦ではパワーでロッシジャーニ。マスケはワンツー、左ボディ打ちで対抗し、相手と距離を取ろうとする。3R、マスケの左アッパーがヒット。ロッシジャーニのパンチも時折ヒットする。8R、マスケが前回と同様、相手を上から押さえつける反則。その後も単発ながら左を当てるロッシジャーニ、アウトボクシングのマスケ。12R終了。判定はまたしても3-0。マスケがディフェンス&コンビネーションで勝利。ロッシジャーニはよく前に出たが、攻めのリズムに問題があった。その後、ロッシジャーニはダリウス・ミハエルゾウスキーのWBO世界L・ヘビー級王座に挑戦して勝てず。決定戦でマイケル・ナンを下してWBC世界L・ヘビー級王座獲得。ついに二階級制覇達成。)


ヘンリー・マスケ 12R 判定 デュラン・ウィリアムス

(IBF世界L・ヘビー級タイトル戦、1996年)

「ドイツ人サウスポー」ヘンリー・マスケ②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:マスケがタイトル防衛。9度目の防衛戦。ウィリアムスはジャマイカ出身の黒人。デビュー戦は地元(勝利)。以後はアメリカを主戦場にこれまで無敗。これが初めての王座戦。ドルトムントでの一戦。速いジャブを連打するウィリアムス。前進して右ストレート、左右フックボディ打ち。マスケはいつもと同じ(ドイツ人は実に几帳面)。慎重にディフェンスして右ジャブ。2R、ウィリアムスの右ストレートがヒットしてマスケが後退。苦しくなるとやってしまうのか、マスケが右手で相手を押さえる反則。ウィリアムスはヘディング気味に頭を使いながら突進。その後、マスケはさらにディフェンンシブになってカウンター作戦。ウィリアムスは前進。7Rに右ストレートを決めたり、サウスポーにスイッチしたり。マスケが隙を突くパンチ、ウィリアムスはボディ攻め、といったパターンで12R終了。判定は3-0。マスケが当てるテクニック&反則で勝利。ウィリアムスはパワフルなボディ打ちなど良い攻めを見せたが、マスケをぶっ倒すことはできず。マスケに勝つにはディフェンスを吹っ飛ばすような「飛び抜けた強味」が必要。その後のウィリアムス。再起戦でジェームス・トニーとWBU王座を争ったが、TKO負け。それが最後の試合となった。)


ヘンリー・マスケ 12R 判定 ジョン・スカリー

(IBF世界L・ヘビー級タイトル戦、1996年)

「ドイツ人サウスポー」ヘンリー・マスケ②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:マスケがタイトル防衛。これまで全勝のマスケが10度目の防衛戦(プロ30戦目)。IBF12位の挑戦者スカリーはコネチカット州出身の白人。デビューから連勝だったが、ブレット・ラリー(後、世界挑戦)に判定負け、初黒星。その後、ローカル王座(ミドル級)を獲得。ティム・リトルズ(全米S・ミドル級王座戦)、トニー・ソーントンに二連続判定負け。マイケル・ナンとNABO王座(S・ミドル級)を争って判定負け。実力者には勝てないレベルだが、世界挑戦のチャンス到来。ライプツィヒでの一戦。スカリーはスイッチヒッター。オーソドックスの時は右ストレート、サウスポーの時は右フックに強さ。右パンチを得意としている。マスケは誰が相手でも同じ。ディフェンス、右ジャブ、カウンター。接近戦。ボディ打ち、アッパーにパワーを込めるスカリーだが、ディフェンスされて攻撃が単発に終わる。マスケはこの試合、手数が多い(いつもは「省エネ」なディフェンシブな姿勢だが)。ワンツーからの左フック(アッパー気味)など連打をまとめる。12R終了。判定は3-0。マスケが普段より精力的に手数を出して勝利。しかし、時折強いパンチを見せたが、やっぱりKOするような攻めは無し。スカリーは良いパンチを持っていたが、中途半端にスイッチ。デュラン・ウィリアムスと同様、マスケの防御を崩せるほどのパワーは無かった。その後の二人。スカリーはIBO王座に挑戦してTKO負けするなど敗北多し。マスケは次の試合でWBA王者バージル・ヒルと統一戦を行ったが、2-1で敗北(1996年)。それを最後に引退していたが、負けたのが余程悔しかったのか2007年に復帰してヒルと再戦。これに3-0で勝利して完全に引退した。) 

ヘンリー・マスケ①

デビッド・ベダー戦、イガートン・マーカス戦、グラシアノ・ロッシジャーニ戦(初戦) 

2024年2月11日日曜日

「ドイツ人サウスポー」ヘンリー・マスケ①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

IBF世界L・ヘビー級王者。鉄壁のブロックの使い手。デビッド・ベダー戦、イガートン・マーカス戦ほかを紹介します。

ヘンリー・マスケ 12R 判定 デビッド・ベダー

(IBF世界L・ヘビー級タイトル戦、1993年)

「ドイツ人サウスポー」ヘンリー・マスケ①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:マスケがタイトル防衛。東ドイツ出身のマスケ。ニックネームは「Gentleman」(見た目の雰囲気とクリーンな試合ぶりから)。子供の頃からボクシングに親しみ、1988年ソウル・オリンピックでは東ドイツ代表で出場し、ミドル級で金メダル獲得(その後、ベルリンの壁が壊れてドイツが東西統一されたため、最後の「東ドイツ代表」となった)。東側の国がプロボクシングに参入していく状況でマスケもプロ入り。デビュー戦は英国(勝利)。その後はドイツを主戦場に連勝。元WBA世界L・ヘビー級王者レスリー・スチュワートにKO勝ち。実力派王者チャールズ・ウィリアムスを判定で下してIBF世界L・ヘビー級王座獲得。アメリカのアンソニー・ヘンブリック相手に判定で初防衛(マスケの世界戦は結果的に全てドイツで行われた)。これまで全勝。ベダー戦は二度目の防衛戦となる。IBF8位のベダー。これまでバージル・ヒルのWBA世界L・ヘビー級王座、ジェフ・ハーディングのWBC王座、アナクレト・ワンバのWBC世界クルーザー級王座に挑戦して、いずれも判定負け。ドイツ・デュッセルドルフでの一戦。王者マスケがディフェンシブなサウスポースタイル。ベダーがジャブ連打からの右ストレートで攻めるが、マスケは下がったりクリンチしたりしながらジャブ、左フックでカウンターを取る。10R、上からのしかかるような体勢になったマスケをベダーはプロレス技のように後ろに投げる。12R終了。判定は3-0。マスケのジャブが評価されたようだが、マスケは実に消極的な勝ち方。ジャブとディフェンス。ラウンド終了時には何が気に食わないのか知らないが不満そうな顔つき。地元のファンでも喜ばない勝利だったのでは?  ベダーはパンチ力はあったが、当てるテクニックに欠けていた。 その後、ベダーは連敗したり連勝したりの不安定なキャリア。世界挑戦はマスケ戦が最後となった。)


ヘンリー・マスケ 12R 判定 イガートン・マーカス

(IBF世界L・ヘビー級タイトル戦、1995年)

「ドイツ人サウスポー」ヘンリー・マスケ①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

7R:左フックでマーカスがダウン

(感想:マスケがタイトル防衛。六度目の防衛戦。判定防衛が多いマスケだが、前回の防衛戦ではアイラン・バークレーにTKO勝ち。IBF1位の挑戦者マーカスは南アメリカ・ガイアナ出身の黒人。ソウルオリンピック・ミドル級決勝でマスケと争い、敗北。銀メダル獲得。プロではこれまで全勝。北米王座(L・ヘビー級)を獲得し、アンドリュー・メイナード(ソウルオリンピック・L・ヘビー級金メダリスト)らを相手に防衛に成功している。フランクフルトでの一戦。マーカスのセコンドにあのルー・デュバ(名物男)。マーカスのトランクスの後ろには「BAD MAN」。なかなか良い打ち方をするマーカス。ジャブ、パワフルな右ストレート、左フック。しかしながら、攻撃が単発。マスケにディフェンスされているというのもあるだろうが畳み掛けるような攻撃ができず、前に出てはクリンチ。マスケがブロック&右ジャブでポイント。7R終了直前にハプニング。左フックがカウンターで入った後、マーカスが押さえつけられるような体勢となってヒザを着く。それを「ダウン」として扱うレフェリー(クリス・ウォルセン:アメリカ)。ルー・デュバがリングインして猛抗議。8Rにもハプニング。相手を上から押さえつけるマスケにマーカスがローブローで仕返し。レフェリーから警告。その後、マスケにも警告。12R、マスケが右手で相手を押さえて左パンチ(「ジェントルマン」にふさわしくないダーディな行為)。12R終了。判定は大差の3-0。マスケが右ジャブで勝利。これがマスケの試合の基本パターン(全くエキサイティングではない)。マーカスはプロの世界戦でもマスケに敗北。個人的にはマーカスの単調な攻めにガッカリ。コンビネーションで攻めて欲しかったところ。その後、マーカスはサッパリ。地域王座戦に出場したが勝てず。ヘビー級でドノバン・ラドックと対戦したがKO負けだった。)


ヘンリー・マスケ 12R 判定 グラシアノ・ロッシジャーニ

(IBF世界L・ヘビー級タイトル戦、1995年)

「ドイツ人サウスポー」ヘンリー・マスケ①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:マスケがタイトル防衛。七度目の防衛戦はドイツ人同士の対決。IBF9位の挑戦者ロッシジャーニは元IBF世界S・ミドル級王者。階級を上げて欧州王座(L・ヘビー級)獲得。クリス・ユーバンクのWBO世界S・ミドル級王座に挑戦して判定負け、初黒星。再び階級を上げてマスケの王座に挑戦。ドルトムントでの一戦。共にサウスポー。右ジャブ、ワンツー、右フック。互いにブロック。ロッシジャーニは攻めの姿勢。接近してボディ連打、インサイドから器用に左アッパー。マスケはワンツー、左ボディ打ち。両者ともパワーはそこそこ。テクニックで勝負。9R、攻めるロッシジャーニ。マスケが珍しく押されて、焦っているような表情。12R、ロッシジャーニが左ストレートで優勢。マスケがクリンチに逃げる。12R終了。両手を上げて自身の勝利をアピールするロッシジャーニだが、判定は3-0でマスケ。ロッシジャーニも手数を出すなど良いシーンがあったが、マスケがワンツー、ボディ打ちでポイントを取ったラウンドが多かった。結局、ディフェンスで勝負が着いた印象。しかし「実力伯仲」ということなのか、この後、両者はダイレクト・リマッチ。)

ヘンリー・マスケ②

グラシアノ・ロッシジャーニ戦(再戦)、デュラン・ウィリアムス戦、ジョン・スカリー戦 

2024年2月10日土曜日

「南アの白人ライト級」フィリップ・ホリデー②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

IBF世界ライト級王者。王座防衛戦&その後。ピート・タリアフェロ戦、シェーン・モズリー戦、トーマス・ダンガード戦ほかを紹介します。

フィリップ・ホリデー(南アフリカ)

身長168cm:オーソドックス(右構え)

フィリップ・ホリデー 12R 判定 ピート・タリアフェロ

(IBF世界ライト級タイトル戦、1997年)

「南アの白人ライト級」フィリップ・ホリデー②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

1R:左フックでタリアフェロがダウン

2R:左フックでホリデーがダウン

10R:右ストレートでホリデーがダウン

(感想:ホリデーがタイトル防衛。五度目の防衛戦で実力者アイバン・ロビンソンを判定で下したホリデー。これまで30戦全勝(16KO)。六度目の相手タリアフェロはアラバマ州の黒人。36勝(24KO)6敗。WBF王座、WBC米大陸王座(いずれもフェザー級)、全米王座(J・ライト級)を獲得した実績。ただし、カルビン・グローブ、アルツロ・ガッティ、ケビン・ケリー、レジリオ・ツール(WBO世界J・ライト級王座戦)といった実力者には敗北している。南アフリカ・ハマンスクラールでの一戦。1R、テンポの良いボクシングをするタリアフェロ。ジャブ、ワンツー。ホリデーはいつものようにジャブ、右ストレート、重さを感じる右フック。左フックでタリアフェロがダウン。しかし、2Rにはワンツーからの左フックでホリデーがダウン。さらに右ストレートからの左フックでホリデーがピンチ。その後も中間距離での打ち合い。タリアフェロのコンビネーション(ワンツーからの左フック)も悪くないが、フックの重さでホリデーが優勢か? 終盤は距離を取ってジャブ、右カウンターのホリデーがポイント。10R、右ストレートでホリデーがダウン。しかし、レフェリーのスタンリー・クリストドーロー(南アフリカ)はこれを「スリップ」扱い(やはり王者と同じ国籍のレフェリーは問題がある。「不正」とまでは言えない裁定だったようにも見えたが)。互いに良さを出し合って12R終了。判定は小差の2-1(三人とも「115-111」)。ホリデーが手数で勝利。タリアフェロはよく頑張ったが、「一発のパワー」で少し王者に劣った。その後、タリアフェロは再起二戦目でIBAのJ・ウェルター級王座に挑戦してTKO負け。それが最後の試合となった。)


シェーン・モズリー 12R 判定 フィリップ・ホリデー

(IBF世界ライト級タイトル戦、1997年)

「南アの白人ライト級」フィリップ・ホリデー②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:モズリーがタイトル獲得。ホリデーの七度目の防衛戦。挑戦者モズリーは実力者。カリフォルニア出身の黒人でアマチュアでは後にプロになる選手と多く対戦。ただ、バーノン・フォレストに敗れてオリンピック出場ならず。プロではこれまで全勝。初の世界挑戦。コネチカット州アンカスビルでの一戦(レフェリーはスティーブ・スモーガー。会場ではホリデーの母が観戦)。いつものように前進するホリデー。しかしながら、モズリーは距離を取ってディフェンス、クリンチしながらハンドスピード、コンビネーション。右ストレートにキレ、右フックには迫力がある。攻めるホリデーは得意の左フックを時折ヒットさせるが、クリンチされて攻撃が単発に終わる。モズリーがアウトボクシング、連打、クリンチで12R終了。判定は3-0。ホリデーがついに初黒星。相手の「打ち合わないボクシング」に屈した。正直なところモズリーは器用さはあったが、クリンチ多用のカッコ良くない勝ち方。確実に勝ちたかったのだろう。その後のモズリーの活躍はおなじみ。ライト級王座を連続防衛後、オスカー・デラ・ホーヤを破ってウェルター級王座も獲得。しかし、バーノン・フォレストにプロでも敗北。デラ・ホーヤとの再戦ではステロイド使用。強かったが、残念なところも。)  


トーマス・ダンガード 12R 判定 フィリップ・ホリデー

(IBCウェルター級王座決定戦、2000年)

「南アの白人ライト級」フィリップ・ホリデー②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ダンガードがタイトル獲得。モズリー戦後のホリデー。再起三連勝後、マイナータイトルWBU王座(ライト級)に挑戦したが、判定負け。そして二連勝でIBC王座挑戦。年齢は29に。ダンガード(28歳)はデンマークのサウスポー。デビューから18戦全勝(16KO)。これまでの試合は全て地元。欧州王座(J・ウェルター級)獲得、カリ・ライルー、グレグ・ホーゲンに勝利、といった実績。デンマーク・オールボーでの一戦。左右の構えの違いはあるが似ている二人。体格差はあまりない。ジャブ、ストレート、フック。相手がサウスポーでも変わらないホリデー。ジャブ、右カウンター。ただし、階級を上げたせいかスピードがやや落ちてフックをディフェンスされてしまう。ダンガードは洗練された選手ではないが、豊富なスタミナでしつこいフック攻撃。サウスポーのテクニック、攻める姿勢でダンガードがやや優勢か? 12R終了。判定は3-0。元々パワーはそれほどではないホリデー。上の階級では通用せず。「精力的な連打」がホリデーの武器であるが、この試合では相手がそれで上回った。その後もダンガードは活躍。欧州王座、WBAインターコンティネンタル王座(いずれもウェルター級)を獲得するなど地元で勝ち続けた。しかし、初のアメリカでの試合でアルツロ・ガッティにTKO負け。再起戦に勝利して引退。ヘビー級のブライアン・ニールセン(デンマーク)同様、ローカルな実力者だった。)   


フィリップ・ホリデー 4R 負傷引分 ジェラルド・リード

(ウェルター級戦、2000年)

「南アの白人ライト級」フィリップ・ホリデー②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ダンガードに敗れた再起戦。黒人リードはケンタッキー州のベテラン選手(38歳)。これまで17勝(9KO)29敗3分。勝ったり負けたり連敗したりの中堅どころ。ラマー・マーフィー、元世界王者ビンセント・ペットウェイらに敗北しているが、アメリカのローカル王座(ウェルター級)を獲得するなど試合経験はある。アトランチックシティでの一戦。足で距離を取るアウトボクサーのリード。ジャブを多用し、ワンツー。右ストレートにはキレがある。ホリデーはウィービングしながら前へ。右ストレート、フック攻撃。しかし、フックを打つとき身体が浮いたような感じに(バランスがあまり良くない印象)。4R、攻めるホリデーだが、右眉あたりをカット。ドクターチェック、試合終了。裁定はドロー。そのまま続行してもおそらく攻めの姿勢でホリデーが勝っていただろう。リードは打ち合いたくない様子だった。その後の二人。リードはマイナー王座に挑戦して敗北するなど全敗。ホリデーは次の試合でヘクター・カマチョ・ジュニアに敗北。オーストラリアに主戦場を移したが、WBOのオリエンタル王座戦に敗北するなど世界挑戦は無し。ラストファイトはオーストラリア王座戦(スーパーウェルター級)に勝利、王座獲得。モズリー戦後はあまりいいところがなかったホリデー。それほどパワーがある方ではなかったのが原因。豊富なスタミナでIBFタイトルを守っていた頃が全盛期だった。)

 

2024年2月9日金曜日

「南アの白人ライト級」フィリップ・ホリデー①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

IBF世界ライト級王者。王座防衛戦。ロッキー・マルチネス戦、ジョン・ラーク戦、ホエル・ディアス戦を紹介します。

フィリップ・ホリデー(南アフリカ)

身長168cm:オーソドックス(右構え)

フィリップ・ホリデー 12R 判定 ロッキー・マルチネス

(IBF世界ライト級タイトル戦、1995年)

「南アの白人ライト級」フィリップ・ホリデー①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ホリデーがタイトル防衛。南アフリカのホリデー。ニックネームは「No Deal」(どういう意味なのだろう? 「取引不成立」「つまらないもの」といった日本語訳があるが、ボクサーに付けるような言葉ではないような気がする。イベンダー・ホリフィールドの「The Real Deal」は「優れた者」という意味だが)。デビュー以来、元WBC世界J・バンタム級王者シュガー・ベビー・ロハスを破るなど連戦連勝。全勝のまま決定戦でミゲル・フリオをTKOで破ってIBF世界ライト級王座獲得。マルチネスと初防衛戦。IBF11位の挑戦者マルチネスはメキシコ・アカプルコ出身。主戦場はデビュー以来、アメリカ・シカゴ。イリノイ州王座(J・ウェルター級)を連続防衛するなどこれまで全勝。南アフリカ・サンシティでの一戦。レフェリーは南アフリカのスタンリー・クリストドーロー(普通こういう場合は「第三国のレフェリー」が試合を裁くものだが、クリストドーローは信用のある「国際的レフェリー」。両陣営が認めれば必ずしもレフェリーは第三国の者でなくてもよいらしい)。マルチネスが「ROCKY」の鉢巻でリングイン。ゴング。似た動きの二人。ウィービングしながらジャブ、右ストレート、左フック。長いパンチを使うマルチネス。メキシカンらしい左ボディ打ちだけではなく、右ストレートからの左ジャブといったテクニックもある。中間距離での打ち合いが続き、互いのパンチがヒット。しかしながら、ホリデーはさすが世界王者。ジャブで先手を取り、ショートパンチで手数。斜め上からの右フック、隙を突くフック、アッパー。ディフェンスもできている印象。マルチネスが時折右カウンターなどをヒットさせるが、ホリデーが手数で優勢。12R終了。判定は3-0。ホリデーは一発のパワーには欠けるが、スタミナは十分。マルチネスは中盤以降、受け身になってしまった。その後のマルチネス。多くの試合。WBOの地域王座(J・ウェルター級)を獲得できたが、ランドール・ベイリー、アルツール・グレゴリアンとの世界戦に敗れて世界王座は獲得できなかった。) 


フィリップ・ホリデー 10R TKO ジョン・ラーク

(IBF世界ライト級タイトル戦、1996年)

「南アの白人ライト級」フィリップ・ホリデー①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ホリデーがタイトル防衛。二度目の防衛戦。挑戦者ラークはインディアナ州出身の黒人。アマチュアを経験後、プロへ。デビュー戦にTKO負け後、連勝。アメリカのローカル王座戦でTKO負け。しかし、実力者トッド・フォスターに勝利。これで自信を付けたか、全米ライト級王座獲得。そして、この初の世界挑戦。南アフリカ・ハマンスクラールでの一戦。動きのスピードはそこそこのラーク。ただし、右ストレートには伸びがある。ホリデーは手数。ジャブで先手を取って大きな右フック、接近してボディ連打。打ち合い。ホリデーのフック、アッパーがヒット。ラークのパンチもたまに当たるがやや受け身で、クリンチしたり、距離を取ったり。10R、ホリデーの右フックからの左フックがクリーンヒット。クリンチに逃げたラークだが、レフェリーは試合を止めた。ホリデーが積極的な攻めで勝利。数多くパンチを出し、時折大きな右フック、インサイドからのアッパー。自分のパンチを生かすパターンを身に付けている。ラークは右ストレートに良さがあったが、単発。距離を詰められてフォローのパンチを出せなかった。その後のラーク。これが事実上のラストファイト。後、カムバックしたが、勝ったり負けたりだった。)


フィリップ・ホリデー 12R 判定 ホエル・ディアス

(IBF世界ライト級タイトル戦、1996年)

「南アの白人ライト級」フィリップ・ホリデー①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ホリデーがタイトル防衛。三度目の防衛戦をオーストラリア・メルボルンで行ったホリデー。あのジェフ・フェネックを2Rで粉砕(フックが効果的だった)。これまで28戦全勝(16KO)。地元で四度目の防衛戦。挑戦者ディアスはメキシカン(「ボクシング兄弟」で弟フリオは後にこの王座(IBF世界ライト級王座)獲得)。後の世界王者フリオ・セサール・ボルボアに勝利しているが、ヘクター・リサラガ(後、IBF世界フェザー級王者に)らに二度のKO負け。実力者ハビエル・マルケスを破って、この初の王座戦。17勝(2KO)2敗。KO数が少ないのが気になるところ。南アフリカ・ヨハネスブルグでの一戦。似た体格。開始から打ち合い。互いにストレート、フック。左ボディ打ちに迫力があるディアスだが、ホリデーが手数(右フック、右アッパーが効果的)&ディフェンス。12R終了。判定は3-0。同じように打ち合ったが、当てる巧さでホリデーが勝利。ディアスはタフだったが、世界王座を獲るような飛び抜けた強さは感じられなかった。その後、ディアスは再起戦に勝利してそれが最後の試合に。目を痛めたのが原因。引退後はトレーナーになった。)

 

2024年2月8日木曜日

「長身&長いパンチ」ラファエル・ルエラス②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

IBF世界ライト級王者。世界王座防衛戦&マイナー王座戦。ビリー・シュワー戦、ジョージ・スコット戦ほかを紹介します。

ラファエル・ルエラス(アメリカ)

身長180cm:オーソドックス(右構え)

ラファエル・ルエラス 3R KO オマール・パチェコ

(ライト級戦、1994年)

「長身&長いパンチ」ラファエル・ルエラス②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

3R:左フックでパチェコがダウン

(感想:IBF世界ライト級王者ルエラス。これまで41勝(32KO)1敗。パチェコとノンタイトル戦。パチェコはメキシカンで17勝(9KO)2敗1分。記録によると特に大きな勝ち星がない中堅どころ。ニューメキシコ州アルバカーキでの一戦。身長差がある二人。長身のルエラスが打ち下ろすようなジャブ、ワンツーを鋭く入れる。パチェコは勇敢な男で、接近して左右フック連打、アッパー。接近戦では互いのパンチがヒットするが、ルエラスのアッパーが効果的。3R、細かい連打からの左フックでパチェコがダウン。まるでギブアップするかのような状態となり、試合終了。ルエラスが突き上げるようなアッパーを使いながら勝利。多少打たれたのが気になるが、相手の攻めはディフェンスできる範囲内だった。)  


ラファエル・ルエラス 9R TKO ビリー・シュワー

(IBF世界ライト級タイトル戦、1995年)

「長身&長いパンチ」ラファエル・ルエラス②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ルエラスがタイトル防衛。二度目の防衛戦。IBF2位の挑戦者シュワー(25歳)は英国の白人。これまで26勝(21KO)1敗。デビューから連勝で英国王座、英連邦王座(いずれもライト級)獲得。しかし、キズによるTKO負けで統一王座から陥落、初黒星。その相手に雪辱し、その後、連続防衛。そして、初の世界挑戦。ラスベガス「MGM Grand」での一戦(ルエラスの兄ガブリエルの世界王座防衛戦も行われた興行。先に試合を終えたガブリエルが会場内で観戦)。なかなか良い選手のシュワー。機敏な動き、速いジャブ、しっかりした右ストレート、フック。相手の攻撃をブロッキングで対処。ルエラスはいつものようにジャブ、ワンツーで攻める姿勢。接近戦。ルエラスのショートパンチがヒット。基本的に距離を取りたいシュワーだが、離れた距離ではルエラスのジャブ、右ストレートがヒットする。ジャブを打たれ、左マブタのキズが悪化していくシュワーは次第に受け身に。6R、シュワーがドクターチェック。その後もジャブを食うシュワー。8R終了後に棄権。ルエラスがしつこいジャブで勝利。シュワーのキズはおそらく古傷(過去の映像より)。相手の長いパンチでやられてしまった。その後のシュワー。英連邦王座を防衛。欧州王座(ライト級)も獲得。しかし、スティーブ・ジョンストンのWBC世界ライト級王座への挑戦は判定負け。メジャー団体の世界王者にはなれなかったが、IBOのスーパーライト級王座を獲得した。)


ジョージ・スコット 12R 判定 ラファエル・ルエラス

(WBUライト級王座決定戦、1995年)

「長身&長いパンチ」ラファエル・ルエラス②「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:スコットがタイトル獲得。シュワー戦の次の試合でWBO王者オスカー・デラ・ホーヤと王座統一戦を行ったルエラスだが、何と2RでKO負け、IBF王座陥落。惨敗した再起戦でWBU王座に挑戦。スコットはアフリカ・リベリア出身の黒人。アマチュアで活躍。1988年のソウルオリンピックでは「スウェーデン代表」としてライト級で銀メダル。プロ入り後はこれまで26勝(12KO)1敗。連戦連勝でWBC米大陸王座(J・ウェルター級)獲得したが、ジェイク・ロドリゲスのIBF世界J・ウェルター級王座への挑戦は失敗、初黒星。再起三連勝でこのルエラス戦。バハマでの一戦。スコットのセコンドにアンジェロ・ダンディ。距離を取るサウスポー、スコット。右ジャブ、左ストレート。ルエラスは前進し、右ストレート、左右フック。接近戦でコンビネーションをまとめるシーンも見せるスコットだが、基本的には距離を取ろうとする動き。ルエラスはこすり上げるようなアッパーを使う。互いにストレートを狙う一進一退の展開。10R、ルエラスが右ストレート、スコットはボディフック連打。12R終了。両陣営とも勝利をアピール。判定は3-0。映像では互角に見えたが、どうやらディフェンスに差があったらしい。スコットが左ストレート、ボディ連打で勝利した。その後の二人。スコットはWBU王座を連続防衛後、スティーブ・ジョンストンのWBC世界ライト級王座に挑戦したが、判定負け。結局、メジャー団体の世界王者にはなれず。ルエラスはリビングストン・ブランブルに判定勝ち、コンスタンチン・チューにTKO負けといった結果を残したが、王座戦はこのスコットとのWBU戦が最後に。当たればスゴイパンチを持っていたルエラス。しかし、長いパンチを使う選手にはよくあることだが、打ち終わった後に大きな隙ができる欠点が。パンチのキレはあったが、動きの素早さにやや欠けていたのが惜しい。)

マウロ・グチェレス戦(初戦)、ホルヘ・パエス戦、マイク・イブゲン戦