WBO世界ミドル級、スーパーミドル級王者。WBO王座戦。マイケル・ワトソン戦(初戦)、スラニ・マリンガ戦、リンデル・ホームズ戦を紹介します。
クリス・ユーバンク(イギリス)
身長178cm:オーソドックス(右構え)
①クリス・ユーバンク 12R 判定 マイケル・ワトソン
(WBO世界ミドル級タイトル戦、1991年)
(感想:ユーバンクがタイトル防衛。これまで27戦全勝(16KO)の王者ユーバンク(24歳)が注目選手と三度目の防衛戦。相手は同じ英国のライバル、ワトソン(26歳)。ロンドン出身の黒人で、25勝(21KO)2敗1分。プロデビュー以来、ロンドンを中心に試合。初のアメリカでの試合は引き分け。ナイジェル・ベンをKOして英連邦王座(ミドル級)獲得。その次の試合でマイク・マッカラムのWBA世界ミドル級王座に地元で挑戦したが、KO負け。その後、英連邦王座を防衛するなど三連勝。二度目の世界挑戦。ロンドン・ケンジントン「アールズ・コート・エキシビション・ホール」での一戦(レフェリーはアメリカのフランク・カプチーノ。会場ではマッカラムが観戦)。黄色トランクスのユーバンク。この試合ではいつも以上に役者っぽい態度。まるで静止画のように動きを止め、見得を切るかのような表情。試合では足で距離を取りながらジャブ、ストレート、フックを意表を突くタイミングで打ち込む。ワトソンは正攻法。やや左のガードを下げた構えでジャブ、キレのあるストレート、フック。互いにディフェンス、速いジャブ、ワンツー。両者に大きな実力差は無い印象。しかし、当てるテクニックで微妙にユーバンクが上回る。5R、ユーバンクが大きな右フックで攻勢。9R、サウスポーにスイッチするワトソンだが、あまり効果がなさそう。11R、ワトソンの右ストレートでユーバンクがダウン。しかし、「スリップ」の判定。12R終了。判定は2-0。互いにパンチが速かった試合。意表を突くパンチでユーバンクがかろうじて勝利。ワトソンは良い選手ではあるが、正統派。そのためユーバンクに動きを読まれたのではないだろうか? その後、両者は別の王座を懸けてダイレクト・リマッチ。)
ユーバンクとワトソンの再戦
空位のWBO世界スーパーミドル級王座を懸けて行われ、ユーバンクが最終12RにTKO勝ち。しかし、ワトソンが大きなダメージ。再起不能のおそれ。ユーバンクはその後もリングに上がり続けたが、そのことで精神的につらい時期を過ごした。次第にワトソンは回復。2003 年、ロンドン・マラソンを 6 日間で完走。イギリスの国民的英雄に。英国ではユーバンクとワトソンの再戦後もジェラルド・マクラレンがナイジェル・ベンにKOされ、重体になる事故。こういった出来事から英国ではボクシングのプロモーターは試合会場に救急車、医師、救急隊員を配備することが義務になった。
②クリス・ユーバンク 12R 判定 スラニ・マリンガ
(WBO世界スーパーミドル級タイトル戦、1992年)
(ダウンシーン)
5R:右フックでマリンガがダウン
(感想:ユーバンクがタイトル初防衛。ユーバンクの初防衛戦(プロ30戦目。92年初試合、2月)。挑戦者マリンガ(32歳)は南アフリカの黒人。これまで33勝(13KO)6敗。南アフリカ王座(ミドル級、L・ヘビー級)を獲得後、グラシアノ・ロッシジャーニ、リンデル・ホームズのIBF王座(スーパーミドル級)に二度挑戦したが、いずれも判定負け。ホームズに負けた再起戦に勝利して、この三度目の世界挑戦。英国バーミンガムでの一戦(レフェリーはスティーブ・スモーガー)。緊張した表情で入場のユーバンク。まるで王のように周囲を見渡し、トップロープをジャンプしてリングイン(いつもと変わらない)。ゴング。互いに速いジャブ、右ストレート、左フック、右アッパー、ディフェンス。瞬発力とパワーでややユーバンクか? 5R、右フックでマリンガがダウン。6R、マリンガの左フックがヒット。その後も互いにジャブ、ディフェンス。時折連打するユーバンクだがディフェンスされ、マリンガのジャブの方が目立つシーンも。12R終了。判定は2-1。ユーバンクがパワーで競り勝った。マリンガはよくジャブを出していたが、パワー不足。「13KO」という数字を物語る試合ぶりだった。その後のマリンガ。南アフリカ王座(スーパーミドル級)を獲得。ナイジェル・ベンからWBC世界スーパーミドル級王座奪取。しかし、パワー不足のため初防衛ならず。)
③クリス・ユーバンク 12R 判定 リンデル・ホームズ
(WBO世界スーパーミドル級タイトル戦、1993年)
(感想:ユーバンクがタイトル防衛。順調に王座を守り続けるユーバンク。マリンガ戦後、ジョン・ジャービス、ロン・エセット、トニー・ソーントン、ファン・カルロス・ヒメネスを相手に防衛成功。そして6度目の防衛戦(93年初試合、2月)。これまで45勝(36KO)6敗の挑戦者ホームズ(35歳)はオハイオ州出身の黒人。アマチュアで優秀な成績。しかし、マイケル・スピンクスに敗れ、オリンピック出場ならず。当時、指導を受けたエマヌエル・スチュワードに心酔して「クロンクジム」入り。1979年にプロデビュー。ヘロール・グラハム、アユブ・カルレ、朴鐘八(IBF世界S・ミドル級王座挑戦)に敗北するなど順調なキャリアではなかった。1990年、フランク・テートとの決定戦に勝利してIBF世界S・ミドル級王座獲得。マリンガらを相手に三度の防衛成功。しかし、ダーリン・バン・ホーンにKOされて王座陥落。再起戦に勝利してユーバンクに挑戦。ロンドン・ケンジントン「アールズ・コート・エキシビション・ホール」での一戦(レフェリーは南アフリカのスタンリー・クリストドーロー。会場ではミドル級のクリス・ピアット、ニッキー・パイパーが観戦)。左のテクニックを使うホームズ。ジャブ連打、左フック。ユーバンクは踏み込んでジャブ、振りが大きい右フック。ラウンド終了後、ふんぞり返ってコーナーに引き上げる。中間距離で左のテクニックを競い合う展開。接近戦ではフック。ワンツーからの左フック、右ストレートにパワーがあるホームズだが、パワー、連打の回転力でユーバンクか? 7R、ホームズの左フックがヒット。さらに右ストレートで攻撃。ユーバンクはフック連打で反撃。12R、連打するユーバンク、反撃するホームズ。12R終了。判定は3-0。スタミナとパワーでユーバンク勝利。しかしながら、ユーバンク。試合中に歌舞伎役者のように動きを止めることがよくあるが、その動きをやり始めて以来、動きが固くなった。以前はもっと回転の速い連打を接近戦で見せたものだが。ホームズもディフェンスの巧さと力強いパンチを見せたが、攻撃が続かず。その後、ホームズは再起戦にTKO負けして引退。なかなか王座を獲得できなかったりで苦労が多かったが多くの名のある相手と試合をしたり、クロンクジム時代にはトーマス・ハーンズとスパーリングしたりで充実したキャリアとなった。)
ダレン・パーカー戦、レス・ウィスニュースキー戦、ロン・マレック戦、ジャン・ノエル・カマラ戦
ジョニー・メルファー戦、キッド・マイロ戦、ゲーリー・ストレッチ戦
レイ・クローズ戦(初戦・再戦)、グラシアノ・ロッシジャーニ戦、ダン・ショマー戦
ジョー・カルザゲ戦、ルイス・バレラ戦、カール・トンプソン戦(再戦)
0 件のコメント:
コメントを投稿