世界三階級王者。統一王座防衛戦&バンタム級進出。アンディ・アゴスト戦、ロドルフォ・ブランコ戦、カルロス・エルナンデス戦、ホルヘ・エリセール・フリオ戦を紹介します。
身長168cm:オーソドックス(右構え)
①ジョニー・タピア 12R 判定 アンディ・アゴスト
(IBF・WBO世界J・バンタム級タイトル戦、1997年)
(感想:タピアがタイトル防衛。これまで41勝(24KO)2分のタピア。プロ43戦目でダニー・ロメロを下してIBF王座も獲得。統一王座の初防衛戦に挑む(97年最後の試合、12月)。IBF4位の挑戦者アゴストはプエルトリカン。14勝(7KO)1敗。デビューから連勝だったが、WBAの地域王座戦(J・バンタム級)でTKO負け。その再起戦でタピアに挑戦。フロリダ州ポンパノビーチでの一戦(ドン・キングの興行)。胸に加えて背中にもイレズミを入れたタピア。アゴストは短髪を赤く染めている。ゴング。サウスポーのアゴストは典型的なボクサータイプ。相手から距離を取って右ジャブ、左ストレート、右フック。斜め下から突き刺すように打つ右フックに特徴があるが、相手をKOするような威圧的な攻めはしない。タピアは相手がサウスポーでも同じ。ジャブをよく出し、右ストレート、左ボディ打ち。手数、当てる巧さ、ディフェンスでポイント上、優勢。9R、タピアが連打。アゴストはクリンチしたり、打ち返したり。12R開始、相手とグローブを合わせるタピア。相手コーナーに行って相手のセコンドともグローブタッチ(珍しい行為。マナー良すぎ)。最後まで攻めの姿勢でタピアが押し気味で12R終了。判定は3-0。タピアが精力的に手数を出して勝利。ダウンは奪えなかったが、スリップダウンしてすぐに立ち上がって相手を攻撃しようとしたり、最終ラウンド終了時に相手を持ち上げて健闘を讃えたりといったタピアらしいシーンがあった。アゴストはテクニックで勝負するタイプで激しさに欠けていた。それではタピアを止めることはできない。これがアゴストの事実上のラストファイト。後にカムバックしたが、一勝一敗だった。)
②ジョニー・タピア 12R 判定 ロドルフォ・ブランコ
(IBF・WBO世界J・バンタム級タイトル戦、1998年)
(感想:タピアがタイトル防衛。二度目の防衛戦(98年初試合、2月)。IBF9位、WBO10位の挑戦者ブランコ(タピアと同じ31歳)はコロンビア人。パワーが売り物の強打者で経験豊富。これまで29勝(18KO)10敗1分。コロンビア王座(J・フライ級)獲得後、柳明佑のWBA世界J・フライ級王座に挑戦したがKO負け(1987年)。デーブ・マコーリーとの再戦を制してIBF世界フライ級王座獲得(92年)。しかし、ピチット・シスバンプラチャンにKOされて初防衛ならず。その後、ブランク。カムバックしたが、デビッド・グリマンらを相手に連敗。北米王座(J・バンタム級)を獲得して、タピアに挑戦するチャンスを得た。ニューメキシコ州アルバカーキ(タピアの地元)での一戦。互いにジャブ、ストレート、フックにパワーを込める。パンチのキレ、手数でタピア。しかし、1Rからバッティングで負傷し、エキサイト(クリーンなファイトを心がけるタピア。それだけに相手の反則が許せないようだ)。ワンツー、左フックからの右ストレート、左ボディ打ちで精力的に攻めるタピア。ブランコは階級を上げてゴツくなった分、タフになった印象。攻められるが、打ち返す。9R、ローブローでブランコが減点。10R、激しい打ち合い。ラウンド終了後、タピアが相手を讃えてハグ。その後も攻めるタピア、応戦するブランコ、のパターンで12R終了。判定は大差の3-0(ほぼフルマーク)。タピアが攻めの姿勢で勝利。このところダウンを奪えていないが手数が多いため会場のファンは満足していたようだった。ブランコはタフなところを見せたが、手数で敗北。その後、ブランコはダニー・ロメロにKOされるなど負けが込むようになっていった。)
③ジョニー・タピア 10R 判定 カルロス・エルナンデス
(バンタム級戦、1998年)
(感想:IBF・WBO世界J・バンタム級王者タピアがノンタイトル戦(結果的に世界J・バンタム級王座防衛戦はロドルフォ・ブランコ戦が最後となった)。エルナンデス(21歳)はカリフォルニアの選手。これまで14勝(5KO)4敗。エリック・モレル(後、WBA世界フライ級王座、WBO世界バンタム級暫定王座獲得)に判定負けしている中堅どころ。直前の試合は判定負けに終わっている。ラスベガス「ヒルトン」での一戦(ドン・キングによる軽量級の興行。レフェリーはジョー・コルテス。リングサイドでキングとWBA会長ヒルベルト・メンドサが並んで観戦)。ワンツーからの左フックが力強いタピア(坊主頭&ヒゲ)。エルナンデスは距離を取ってジャブ、ストレート。接近して連打してまた距離を取る。接近戦。互いにフック、ボディ打ち。4R、ゴング後のパンチでタピアがエキサイト。5Rにはバッティングされてエキサイト。接近戦が続く。コンビネーションのタピアに対し、エルナンデスはスタミナに任せた連打。10R終了。判定は3-0。互いに激しく打ち合ったが、攻撃の正確さとディフェンスでタピアが上回った。エルナンデスはよく頑張ったが、相手の経験・巧さに及ばなかった。意外なことにエルナンデスはその後、勝ち星無し。タイトル戦とは無縁だった。)
その後のタピア
カルロス・エルナンデス戦の次の試合でナナ・コナドゥ(ガーナ)を判定で下し、WBA世界バンタム級王座獲得(その後、IBF・WBO世界J・バンタム級王座を返上)。しかし、ポーリー・アヤラに判定で初黒星、王座陥落(「リング誌」から「ファイト・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたが)。再起戦はホルヘ・エリセール・フリオとのWBO世界バンタム級王座戦。
④ジョニー・タピア 12R 判定 ホルヘ・エリセール・フリオ
(WBO世界バンタム級タイトル戦、2000年)
(感想:タピアがタイトル獲得。32歳になったタピア。これまで46勝(25KO)1敗2分。42勝(31KO)1敗の王者フリオ(30歳)はコロンビアの黒人。13歳でボクサーに。アマチュアでは国内王者になり、ソウルオリンピック(1988年)でバンタム級銅メダル。プロではアブラハム・トーレス(辰吉丈一郎や葛西裕一と日本で戦った男)に勝利するなど全勝のままWBA世界バンタム級王者に。三度目の防衛戦でジュニア・ジョーンズに敗れ、王座陥落。その後、WBO世界バンタム級暫定王座を獲得し、正規王者に昇格。連続防衛している。アルバカーキでの一戦。フリオがカラフルなヒラヒラのトランクス。タピアは黒。ゴング。タピアがジャブ、右ストレートからの左ボディ打ち。フリオはブロックしながらジャブ。互いにディフェンスしながら速いジャブ。そしてハイペースな打撃戦に。タピアはボディ打ち、フリオはショートフックが効果的。7R、フリオがヒジを使って減点。また、フリオは中途半端にサウスポーにスイッチ(特に効果があったとは思えない)。12R、互いに自身の勝利をアピール。12R終了。共に勝利を確信し、タピアはバク転。判定は3-0。映像では一進一退に見えたが、意外な大差が付いた。ボディ打ち&ディフェンスでタピアが勝利。フリオのストレート、ショートパンチも良かったが、ボディ攻撃で差が付いた印象。その後、フリオは苦戦。二階級制覇を狙ってマニー・パッキャオのIBF世界スーパーバンタム級王座に挑戦したが惨敗。センスの良い打ち方でリズミカルな動きをする実力者だったが、打たれ弱さがあった。)
⑤ジョニー・タピア 7R TKO クワテモク・ゴメス
(フェザー級戦、2001年)
(感想:WBO世界バンタム級王座の初防衛に成功したタピアだが、王座返上。しかし、ポーリー・アヤラとの再戦はまたしても判定負け。ゴメスと再起戦(これまで48勝(25KO)2敗2分)。48勝(28KO)8敗のゴメスはメキシコシティ出身。身長159cmで小柄だが、ガッチリした身体で腕力がある。日本で薬師寺保栄のWBC世界バンタム級王座に挑戦したときは2-0の判定負け。あのデビッド・グリマンを破ってWBAの地域王座(バンタム級)獲得、連続防衛。しかし、直前の試合はTKO負けに終わっている。アルバカーキでの一戦(リングアナはジミー・レノン・ジュニア)。身長差があるが、そのハンデを感じさせないほどパワフルなゴメス。打ち方は粗いが、タフネス&強い左右フック。タピアはどんな相手にも勇敢。ディフェンスしながらジャブ、ストレート、フック。1Rからバッティングが発生するほど激しい接近戦。ディフェンスするタピアだが、ゴメスのパンチも時折ヒット。5R、激しく打ち合い、両者とも「もっと打ってこい!」アピール。しかし、勇ましいゴメスだが、鼻をカットして激しく出血。タピアがそこを狙ってジャブ、ストレート。6R終了後、ゴメスが棄権。激しい打撃戦はタピアに軍配。ヘタな世界戦よりも激しく、「名勝負」と言ってもいい試合となった。その後の二人。ゴメスは地域王座戦に出場したが、ダニー・ロメロにTKO負けするなど負けが込むようになっていった。タピアはマヌエル・メディナからIBF世界フェザー級王座を奪取、三階級制覇。しかし、IBF王座を剥奪されてまで強行したマルコ・アントニオ・バレラ戦に判定負け。以後は10回戦で勝ったり負けたり。ラストファイトは2011年6月でマウリシオ・パストラナ(元IBF世界ライトフライ級、WBA世界フライ級暫定王者)に判定勝ち。通算戦績は59勝(30KO)5敗2分。そして、2012年。45歳で死去(死因は心不全。薬物とアルコールの影響が強く疑われている)。激しい試合ぶりと薬物にどの程度関係があったのかは不明だが、若手の頃からボクシング・センスが一流だったのは確か。結婚し、子供もできたが幼い頃のトラウマなのか、最後は悲しい結果となった。)
ノルベルト・アヤラ戦、ホセ・モンティエル戦、リカルド・バルガス戦
ウィリー・サラサール戦、ジョバンニ・アンドラーデ戦、ウーゴ・ソト戦、ホルヘ・バレラ戦
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