2024年5月7日火曜日

「長身のテクニシャン」アントニオ・セルメニョ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」 

WBA世界J・フェザー級、フェザー級王者。長いパンチの使い手。J・フェザー級時代のヘスス・サルード戦、アンヘル・チャコン戦、ホセ・ロハス戦を紹介します。

アントニオ・セルメニョ(ベネズエラ)

身長177cm:オーソドックス(右構え)

アントニオ・セルメニョ 12R 判定 ヘスス・サルード

(WBA世界J・フェザー級タイトル戦、1995年)

「長身のテクニシャン」アントニオ・セルメニョ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:セルメニョがタイトル初防衛。セルメニョはスラリとした長身で細長い体型。懐が深いボクシング。こういう選手はあまりパンチがないことが多いが、セルメニョの長いパンチは遠心力があるため当たれば効果絶大(大袈裟?)。カラカスを中心にリングに上がり、デビュー以来、連戦連勝。しかし、韓国ソウルで崔在元に判定負け、初黒星(93年。崔はその次の試合でウィルフレド・バスケスのWBA世界J・フェザー級王座に挑戦して惨敗)。カムバックし、連勝。初の世界挑戦のチャンスを得たが、王者は日本でもおなじみの強打者バスケス。ところが手数でバスケスを攻略し、王座獲得。初防衛戦の相手も強打者。WBA5位の挑戦者サルードは「ハワイアン・パンチ」と呼ばれる元王者。フィリピン人で、ハワイ在住。ホノルルを拠点にデビューから連戦連勝。北米王座戦(バンタム級)で初黒星。階級を上げ、北米王座(J・フェザー級)獲得。連勝の勢いでWBA世界J・フェザー級王座を獲得したが、王座剥奪。その後、IBF世界J・フェザー級王座に二度挑戦していずれも敗北。北米王座を連続防衛してセルメニョに挑戦。かつて保持していた王座を奪回できるかどうか? ベネズエラ・マラカイでの一戦(会場ではドン・キングが観戦。セルメニョとプロモート契約している)。バスケスに似たタイプのサルード。動きのスピード、パンチのキレはそれほどではないが、コブシの頑丈さで勝負。ジャブで前進、右ストレート、フック。セルメニョは基本的に距離を取って長いパンチを使うボクサータイプ。しかし、気の強さがあり、バスケス戦の時のように大きな振りのフック、アッパーで接近戦での打ち合いに応じる。ただ、リーチが長すぎるためボディ打ちがローブローとなることもしばしば。接近戦での打ち合いが続く。離れた距離ではセルメニョ有利。サルードはパンチがあるが、手数が少なくなる欠点。8R、セルメニョがローブローでついに減点。その後も打ち合い、手数のセルメニョ。12R終了。判定は大差の3-0。セルメニョが積極的に手数を出して勝利。ポイント差ほど圧倒したわけではないが、ポイントを積み重ねて大きな差が付いた。サルードは残念な選手。パンチとタフネスはあるが、流れるような畳み掛ける攻撃ができない。それができればフリオ・セサール・チャベスのようになれるのだが。その後もサルードは強打を振るい続けたが、世界戦は敗北。世界王座に返り咲くことはなかった。)


アントニオ・セルメニョ 12R 判定 アンヘル・チャコン

(WBA世界J・フェザー級タイトル戦、1997年)

「長身のテクニシャン」アントニオ・セルメニョ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:セルメニョがタイトル防衛。サルード戦後、ヨベル・オルテガ、エディ・サエンス、葛西裕一を相手に防衛に成功したセルメニョ(28歳。26勝(16KO)1敗)。五度目の防衛戦(プロ28戦目。97年初試合、5月)。WBA7位の挑戦者チャコン(23歳)はプエルトリカン。1992年バルセロナ・オリンピックにフライ級で出場(メダルは獲得ならず)。プロ入り後、マイアミを本拠地にこれまで23戦全勝(14KO)。WBCの地域王座(J・フェザー級)を獲得している。マイアミでの一戦(リングアナはジミー・レノン・ジュニア)。バスケスをサウスポーにしたようなチャコン。体格、後ろ姿、構え方がよく似ている。右ジャブ、そして左ストレート。しかし、残念なことに器用なタイプではない。セルメニョは距離を取って長いパンチ。しかし、コチラも残念なことにパンチのキレに欠ける。そのため接近戦ではもみ合い、クリンチ。手数を出すセルメニョだが、相手の無骨な接近にイラだつ。決定打を欠いたまま12R終了。判定は3-0。セルメニョのようなリーチが長く、ロングのパンチを使うタイプはその分、隙も大きい。パンチにキレがあれば良いが、そうでないと打たれてしまう。ラッキーなことにこの試合の相手にはその隙を突くだけの鋭さは無かった。チャコンは全勝の選手にしては期待外れ。サウスポーの利点を生かせない雑な接近戦を選んだのが敗因。その後のチャコン。エリック・モラレスのWBC王座に挑戦してKO負け。オスカー・ラリオスに判定負け。WBA、WBCの地域王座(スーパーバンタム級)獲得後、IBA王座(フェザー級)獲得。ブランク後、カムバックしたが、敗北多し。メジャー団体の世界王座には手が届かなかった。)


アントニオ・セルメニョ 12R 判定 ホセ・ロハス

(WBA世界J・フェザー級タイトル戦、1997年)

「長身のテクニシャン」アントニオ・セルメニョ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:セルメニョがタイトル防衛。葛西裕一との再戦にKO勝ちして六度目の防衛に成功したセルメニョ。七度目の防衛戦。WBA11位の挑戦者ロハスもベネズエラ(カラカス出身)。三連敗を喫するなど「二線級の選手」といったところだが、南米J・フェザー級王者パストール・マウリン(アルゼンチン。当時、全勝だった)を破ったのが評価されたらしく、この世界挑戦。カラカスでの一戦(大勢の観客)。ジャブに伸びとキレがあるセルメニョ。中間距離で長いワンツー。ロハスはサウスポースタイルから右ジャブ、左ストレート、右フック。右フックにパワーがあるが、セルメニョの懐の深さに上手く攻め込めない。8R、クリンチ中に両者打ち合う。その後もジャブで先手を取るセルメニョ、パワーを込めるがディフェンスされるロハス、といった展開で12R終了。判定は3-0。セルメニョがテンポの良いジャブ、ディフェンスで勝利。ロハスはパワーがあってパンチ自体は良かったが、一発狙い的なところを見抜かれてしまった。その後の二人。ロハスはこの試合が良い経験になったか、大きな試合に出場。WBAの地域王座(スーパーバンタム級)を獲得。しかし、数度の世界挑戦は全て失敗に。セルメニョはロハス戦後に王座返上。フレディ・ノーウッドに負けたが、王座決定戦でWBA世界フェザー級タイトル獲得、二階級制覇。王座陥落後もWBAの地域王座(スーパーフェザー級)を獲得する活躍。しかし、引退後の2014年2月。家族と共に誘拐され、死去(44歳)。どのような背景があったのかはわからないが、悲しい最期だった。)      

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