IBF世界J・ライト級王者。世界王座陥落後の試合。トミー・コルドバ戦、アンソニー・ムンディン戦を紹介します。
レスター・エリス(オーストラリア)
身長 cm:オーソドックス(右構え)
①レスター・エリス 10R TKO トミー・コルドバ
(J・ウェルター級戦、1987年)
(ダウンシーン)
8R:右ストレートでコルドバがダウン
10R:左ボディでコルドバがダウン
(感想:「オーストラリアの鉄人」といった感じの長いキャリアだったエリス。英国ブラックプール出身。一家でオーストラリアに移住したが、家庭に問題があったらしい。(そのうっぷんを晴らすためか)12歳でボクシングを始める。アマチュアで好成績を上げた後、プロ入り。地元メルボルンを中心に試合をし、連戦連勝。「Master Blaster」(「倒し屋」という意味らしい)と呼ばれるようになり、英連邦J・ライト級王座獲得。19歳で世界初挑戦。柳煥吉(韓国)を判定で下し、IBF世界J・ライト級王座奪取(1985年)。ロッド・セクエナンをKOして初防衛に成功したが、次の防衛戦でバリー・マイケル(同じオーストラリアの白人)に判定負け、王座陥落。しかし、そこからがむしろ本番。階級を上げながら地元を中心に多くの試合。元WBA世界ライト級王者エルネスト・エスパニャに判定勝ち。KOでオーストラリア・ライト級王座獲得。コルドバ戦はノンタイトル戦。コルドバはニューメキシコ州の選手で、小柄(身長160cm)。デビューから連勝だったが、ケニー・ベイスモアに判定で初黒星。フレディ・ローチに2-1の勝利、アリゾナ州王座戦(フェザー級)で判定負け、ケルビン・シーブルックスに3-0の勝利、北米フェザー級王座決定戦で2-0の敗北、スティーブ・クルスにTKO負け。このところ連敗中で、直前の試合はトニー・タイガー・ロペスに3-0で敗北。ただ、タフネス、経験など一定の実力はある。オーストラリア・メルボルン「フェスティバル・ホール」での一戦(レフェリーはマルコム・ブルナー)。リング上で美女二人が大きなトロフィを持って観客に見せる(何のトロフィなのだろう? タイトル戦ではないが)。ゴング。身長差のある二人。足でリズムを取りながらジャブを連打するエリス。小柄なコルドバはダッキングしながらワンツー、接近して思い切りのいいフック。特に左フックにパワー。積極的に攻めるコルドバにエリスは打ち下ろすような右ストレート、右アッパー、コンビネーション(右ストレートからの左ボディ)で対抗。激しい攻防が続く。5R開始早々、左ボディでコルドバがダウンしたが、「スリップ」の裁定。8R、エリスが踏み込んで打ち込んだ右ストレートでコルドバがダウン。9R、エリスがコルドバを押し倒したが、レフェリーはそれをダウン扱いしてカウント。右ストレートでコルドバがダウンしたが、「スリップ」の裁定。最終10Rにも右ストレートでコルドバがダウンしたが、「スリップ」。そして左ボディでコルドバがダウン。立ったが、右ストレートで追撃されてレフェリーストップ。互いに思い切りのいい打ち方で勝負した好試合。コルドバのフック攻撃にエリスはよく頑張って応戦した。それにしてもレフェリー。ダウンとスリップを混同したかのような裁き(リング上は暑かったのか? 試合が行われたのは8月。南半球のオーストラリアでは8月は冬だが)。その後、コルドバはピークを過ぎて負けが増えていった。)
その後のエリス
オーストラリア王座、英連邦王座(いずれもJ・ウェルター級)獲得、大友巌に判定勝ち、オーストラリア・ウェルター級王座獲得ならず、WBFウェルター級王座獲得、カルビン・グローブに2-1の敗北、IBO王座を連続で獲得(J・ウェルター級、ライト級、J・ミドル級)、カルビン・グローブ(再戦)にTKO負け、引退(1996年)。
②アンソニー・ムンディン 3R TKO レスター・エリス
(スーパーミドル級戦、2002年)
(ダウンシーン)
1R:右ストレートでエリスがダウン
3R:右ストレートでエリスがダウン
(感想:帰ってきたエリス(これまで41勝(28KO)7敗)。スーパーミドル級で復帰戦(大丈夫か?)。13勝(10KO)1敗のムンディンはオーストラリア・ニュータウン出身(先住民の血が入っている)。身長180cm。「元ラグビー選手がボクサーに転向」ということでオーストラリアでは大変な人気者(結果的に全試合がペイ・パー・ビューで放送されたほど)。デビューから連勝でIBFの地域王座(スーパーミドル級)などを獲得。しかし、ドイツでスベン・オットケのIBF世界スーパーミドル級王座に挑戦してKO負け、初黒星。PABAスーパーミドル級王座を決定戦で獲得して防衛中。エリス戦はノンタイトル戦となる。メルボルンでの一戦。まるで別人のようになったエリス。以前は(80年代洋楽アイドルのような)金髪で後頭部付近を伸ばした髪型だったが、この試合では短髪で茶色っぽい。ムンディンはエリスより短い坊主頭。ゴング。ムンディンが左のガードを下げた構えから左ジャブ、突き刺すような右ストレート、左ボディ打ち。構え方と打ち方がロイ・ジョーンズ風。さらにサウスポーにスイッチしたりするなど元ラグビー選手とは思えない意外な器用さ。エリスもまた意外に動きがいい。ダッキングしながら前進し、シャープなストレート、フック。しかしながら、タフネスに問題。右ストレートが効いたエリス。ジャブ連打からの右ストレートでダウン。2R、攻めるエリス。ムンディンは相手の様子を見ながら右ストレート、左フック。3R、右ストレートでエリスがダウン。立ったが、セコンドがリングインして試合終了。ムンディンが伸びのあるストレートで快勝。他のスポーツから来た選手はぎこちなさがあるものだが、ムンディンは動きやパンチがスムーズだった。エリスはバランスの良さなどがあったが、無理なカムバックだった印象。その後の二人。ムンディンは多くの試合。決定戦でWBA世界スーパーミドル級王座を獲得したり、地域王座戦に出場したり。エリスはこれが最後の試合。ラストにふさわしい「オーストラリアの人気者」同士の対戦でキャリアを終えた。)
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