ウェルター級。元世界王者と対戦。フランキー・ランドール戦、ラファエル・ピネダ戦、ノルベルト・サンドバル戦を紹介します。
オバ・カー(アメリカ)
身長176cm:オーソドックス(右構え)
①オバ・カー 10R 判定 フランキー・ランドール
(J・ミドル級戦、1999年)
(感想:これまで二度、世界挑戦に失敗しているカー。相手が実力派フェリックス・トリニダード、アイク・クォーティであったため仕方がないところではあるが、世界を獲るにはさらに大きなパワーが必要。このところ三連続判定勝ちでランドール戦。ランドールはアラバマ州バーミンガム出身の黒人で、ニックネームは「The Surgeon(外科医)」。シャープで正確なパンチを打つところからそう呼ばれ、フリオ・セサール・チャベスからWBC王座、ファン・マルチン・コッジからWBA王座(いずれもJ・ウェルター級)を奪ったことがあるベテラン。カリ・ライルーにWBA王座を奪われてから再起二連勝中。ラスベガス「Thomas & Mack Center」での一戦(レフェリーはジョー・コルテス。メインは「オスカー・デラ・ホーヤ vs. アイク・クォーティ」のWBC世界ウェルター級王座戦。カーかランドールのどちらか勝った方が世界挑戦する、という興行)。ガードを上げてジャブ、ワンツーのランドール。相変わらず端正なボクシング。カーはやや左のガードを下げた構えからジャブ、時折フック連打。相手から距離を取って「打ち合わないボクシング」。攻めるランドールだが、単調。カーにディフェンス&クリンチされて不発。7Rにハプニング。しつこくクリンチするカーにランドールが肩をぶつけて右ストレート。カーはダウンしたが、ノーカウント。しかもランドールは減点。その後も互いにフックにパワーを込めるが、カーのクリンチで盛り上がらない試合。10R終了。判定は大差の3-0。カーは勝利したが、パンチのキレが以前と比べて落ちた。フックにパワーを込めていたが、ガードに甘さを感じた。「世界王座の挑戦者」としてふさわしい前哨戦だったかどうか? ランドールは全盛を過ぎ、「追い上げる勢い」に欠けていた。その後、ランドールはミケーレ・ピッチリーロ、アントニオ・マルガリートらに連敗。チャベスとの三度目の対戦に判定負けするなど最後は連敗でキャリア終了。そのダメージにより2020年に59歳で死去。全盛を過ぎてまでリングに上がるべきではない。)
②ラファエル・ピネダ 6R TKO オバ・カー
(J・ミドル級戦、2001年)
(ダウンシーン)
6R:右アッパー、左フック、右フックで3度、カーがダウン
(感想:ランドール戦の次の試合でオスカー・デラ・ホーヤのWBC王座に挑戦したカーだが、TKO負け。その後、ヨリボーイ・カンパス(元IBF世界J・ミドル級王者)らを相手に連勝で、ピネダ戦。年齢は28に。ピネダ(35歳)はコロンビアの黒人で元IBF世界J・ウェルター級王者。強打者だが、パーネル・ウィテカーに敗れてIBF王座陥落後はブランクがち。IBFの地域王座(J・ミドル級)を獲得しているが、勢いがあるとは言い難い状況。ラスベガス「MGM Grand」での一戦(レフェリーはジョー・コルテス)。いつものように距離を取りながらジャブを連打するカー。ピネダは意外に動きが良い。「パワーはあるが、試合運びはヘタ」という評価もあるが、この試合ではジャブをよく出し、パワフルな左フック。斜め下から突き上げるように打つフックも迫力。手数&ディフェンスで試合を進めるカーだが、6Rに悲劇。攻めたところに右アッパーをカウンターされてダウン。これが完全に効いてしまい、再開直後の左フックで二度目。その後、数度のスリップダウンを繰り返し、最後は右フックで三度目のダウン、レフェリーストップ。ピネダが強打で勝利。ジャブ、左フックにパワーがあった。カーはスピードが落ち、パワーは元々そこそこ。引退すべき出来だった印象。その後のピネダ。試合間隔が長めながらミケーレ・ピッチリーロ、コーリー・スピンクス、ザブ・ジュダーといった当時の実力者と対戦。彼らには負けたが、中堅どころには強いところを見せた。)
③オバ・カー 10R 判定 ノルベルト・サンドバル
(J・ミドル級戦、2001年)
(感想:カーがピネダに敗れた再起戦。サンドバルはメキシカン。WBAの地域王座(ウェルター級)を獲得しているが、このところ二連敗中。コロラド州デンバーでの一戦(ハイライト映像で観戦)。サウスポーのサンドバル。右ジャブ、左ストレート。攻めるときと守るときが分かれる「攻防分離型」。受け身の姿勢で、自分から攻めて試合の流れを作るようなタイプではない。カーは左ジャブを軽く使いながら右を当てようと狙い、左フック、左ボディ打ち。先手を取るカーだが、右目の下に腫れ。10R終了。判定は大差の3-0。カーが手数で勝利。サンドバルはもっと攻めるべきだった。その後の二人。サンドバルはWBC米大陸王座戦、メキシコ王座戦(いずれもスーパーウェルター級)に出場したが、勝てず。ローカルな選手としてキャリア終了。カーは次の試合に勝利後、二連敗で引退。最もスピードと勢いがあった全勝時代に強い王者(フェリックス・トリニダード)に阻まれたのが最後まで尾を引いたキャリアとなった。)
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