WBA世界J・ライト級王者。世界王座防衛戦のアポロ嘉男戦、金台鎬戦、フリオ・バルデス戦を紹介します。
サムエル・セラノ(プエルトリコ)
身長174cm:オーソドックス(右構え)
①サムエル・セラノ 15R 判定 アポロ嘉男
(WBA世界J・ライト級タイトル戦、1977年)
(感想:セラノがタイトル防衛。テクニックで有名なセラノ。ボクシングを始めたのは5歳のとき。プロ入り後「El Torbellino」(英語で言うところの「The Whirlwind(つむじ風、旋風)」)と呼ばれ、プエルトリコのフェザー級、J・ライト級王座を獲得。ホノルルでベン・ビラフロアのWBA世界J・ライト級王座に挑戦したが、ドローで王座獲得ならず。地元サンファンでビラフロアと再戦し、判定で王座奪取。アルベルト・エレラ、レオナル・エルナンデス相手に防衛。3度目の防衛戦の相手アポロ(本名「度紀 嘉男(とき よしお)」)は経験のある男。日本J・ライト級王座に挑戦して1RでKO負け、リカルド・アルレドンドのWBC世界J・ライト級王座に挑戦して判定負け(3-0)、東洋J・ライト級王座に挑戦して判定負け、ビラフロアのWBA世界J・ライト級王座に挑戦してドロー。決定戦で東洋J・ライト級王者に。王座を防衛し、三度目の世界挑戦のチャンス到来。プエルトリコ・サンファンでの一戦。フットワークで相手から距離を取るセラノ。打つときはワンツーからの左フック、左フックからの右ストレートといったコンビネーション。斜め下からのフックには迫力がある。アポロはジャブが少な目。右ストレート、左フックを出すが、単発。距離を詰めて連打しようとするアポロ、ディフェンス&連打のセラノ、のパターン。8R、アポロの右フック炸裂。ピンチのセラノはアウトボクシングとクリンチでしのごうとする。9Rにも攻めたアポロだが、12Rに右アッパーからの左フック、13Rに左フックを食ってピンチ。その後、セラノがコンビネーションで優勢。15R終了。判定は3-0。セラノが当てる巧さで勝利。細いアゴに一発食ったが、何とか耐えた。アポロはジャブが少ないのが残念。そのため相手に逃げられるシーンが多かった。そして次の試合で東洋王座の防衛に失敗、引退。その後はジムを経営。)
②サムエル・セラノ 10R TKO 金台鎬
(WBA世界J・ライト級タイトル戦、1977年)
(ダウンシーン)
3R:ワンツーでセラノがダウン
10R:左ストレートで金がダウン
(感想:セラノがタイトル防衛。4度目の防衛戦。挑戦者の金(韓国・ソウル出身)はバトルホーク風間に二勝するなどこれまで全勝だが、経験はまだ浅い。サンファンでの一戦(レフェリーはラリー・ロザディリャ)。アウトボクシングから右ストレートを打ち込むセラノ(パーマ頭にグリーンのトランクス)。金はジリジリ距離を詰めて右ストレート、左フック。残念なことにスピード感に欠けるボクシングで、攻撃が単発でぎこちない。流れるような攻めができないため、クリンチされてしまう。ところが3R、ワンツーでセラノがダウン。ラッシュする金だが、ラウンド終了のゴング。その後、セラノはクリンチを使いながらもパワフルなワンツー、フック(テクニシャンタイプだが、パワーがある)。7R、連打する金をディフェンス。8R終了ゴング後にハプニング。何が気に食わなかったか、セラノが反則打。10R、互いに右パンチを狙う展開の中、セラノがジャブを強く打つタイプの左ストレート。ダウンした金は立ったが左目の傷が酷く、レフェリーストップ。ダウンしたが、セラノが快勝。打たれ弱さをカバーするだけのパワー&テクニック。金は右パンチにパワーがあったが、攻めるときのガードに隙。この当時は海外のトップクラスとアジアのトップにはテクニック的に差があった。その後の金。日本選手に二勝後、地元で同国人に判定負けで引退。王座とは縁が無かった。)
③サムエル・セラノ 15R 判定 フリオ・バルデス
(WBA世界J・ライト級タイトル戦、1979年)
(ダウンシーン)
1R:左ジャブでバルデスがダウン
(感想:セラノがタイトル防衛。金戦後、マリオ・マルチネス、呉英鎬、丸木孝雄を相手に防衛成功のセラノ。8度目の相手バルデスはドミニカの黒人。後の世界王者レオ・クルスに敗北するなど戦績が悪かったが、好調。アルフレド・エスカレラに勝利。初の世界挑戦。サンファンの屋外リングでの一戦(レフェリーはラリー・ロザディリャ)。1R、速いジャブを飛ばすバルデス。しかし、真っ直ぐ攻めるクセ。左ジャブを食ってダウン。その後も攻めるときのガードに隙があるが、実に粗い攻めを継続(速い連打、左フックからの右ストレート、ほか)。セラノはディフェンス&クリンチしながら右カウンターを狙い、ヒットさせる。8R、セラノが右カウンターからの連打。バルデスはクリンチ&フットワークでさらなるダメージを回避。12R、バルデスがラフ行為で減点。14R、セラノがゴング後のパンチで減点。15Rも荒々しい攻めのバルデス。最終ラウンド終了のゴング後も殴り合い(セコンドも参戦)。判定は3-0。何とも粗かった試合。バルデスは終始勢いに乗って速いパンチで攻めたが、セラノはよくかわして右カウンターを決めていた。ゴング後にやりあったのはいただけないが、それだけ両者とも気合いが入っていたのだろう。そんなバルデス。その後、アーロン・プライアーにKO負け。最後はレイ・マンシーニ(北米ライト級王座戦)、ジョン・ベルデローザ(全米J・ライト級王座戦)、ハワード・デービス・ジュニアに三連敗で引退。)
その後のセラノ
エンコサナ・ムガジ、バトルホーク風間に勝利して10度の防衛。11度目の防衛戦で上原康恒にKO負け。再戦で王座奪回。4度目の防衛戦でロジャー・メイウェザーにKO負け。そして薬物問題。最後の試合(1984年)から12年後に復帰。二連勝して引退。今は穏やかに暮らしているという。
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