WBA世界J・ウェルター級王者。世界王座戦のニコリノ・ローチェ戦(再戦)、ビクトル・オルティス戦ほかを紹介します。
アントニオ・セルバンテス(コロンビア)
身長175cm:オーソドックス(右構え)
①アントニオ・セルバンテス 10R TKO ニコリノ・ローチェ
(WBA世界J・ウェルター級タイトル戦、1973年)
(感想:セルバンテスがタイトル防衛。「Kid Pambelé」セルバンテス(「Pambelé」とは何だろう? 周囲が付けたアダナらしいが)。身長は175cm。スラリとした身体のため、もっと背が高く見える(オスカー・デラ・ホーヤは179cmで、最初に獲った世界王座はJ・ライト級だった)。ほんの少しアマチュアを経験して18歳でプロデビュー。負けながらも多くの試合。後の世界王者ロドルフォ・ゴンザレス(ガッツ石松との試合で有名)らに連勝で初の世界挑戦。ニコリノ・ローチェ(アルゼンチン。藤猛から王座奪取)のWBA世界J・ウェルター級王座を狙ったが、判定負け(ローチェが5度目の防衛成功)。ローチェがアルフォンソ・フレーザー(パナマ)に敗れて王座陥落。フレーザーをKOしてセルバンテスがついに世界王者に。初防衛に成功。二度目の防衛戦はローチェとの再戦。ローチェはセルバンテスとの初戦後、四連勝。どんな動きを見せるか? ベネズエラ・マラカイでの一戦。身長差のある対決。身長168cmのローチェは左のテクニックで勝負するタイプ。左ジャブ、踏み込んで左フック。しかし、手数が少な目で、攻撃をディフェンスされる。セルバンテスはジャブを中心とし、多彩な攻撃。ワンツーからのフック連打、左ボディ打ち、左ボディ連打からの打ち下ろす右ストレート。接近戦がヘタな長身選手もいるが、セルバンテスは離れても接近しても器用かつスムーズにコンビネーション。3R、早くもローチェが左目のキズのドクターチェック。その後もセルバンテスがジャブで主導権。ただ、左フックを食ってクリンチに逃げるシーンも。悪化していくローチェのキズ。10R開始のゴング。ローチェのセコンドがタオル投入。悔しがるローチェだが、負傷によるストップ負け。試合自体はセルバンテスが手数で優勢が続いていたため、判定まで行ってもローチェは勝てなかっただろう。ローチェはこの試合で引退。二年後にカムバック。中堅どころに連勝して再び引退。)
②アントニオ・セルバンテス 2R KO ビクトル・オルティス
(WBA世界J・ウェルター級タイトル戦、1974年)
(ダウンシーン)
1R:左フック、右フックで2度、オルティスがダウン
2R:左フックでオルティスがダウン
(感想:セルバンテスがタイトル防衛。ライオン古山らを相手に防衛を重ねるセルバンテス。オルティスと7度目の防衛戦。挑戦者オルティスはプエルトリカン。プエルトリコ王座(ライト級)に挑戦して判定負け、エステバン・デ・ヘススにTKO負け、後の世界王者ソウル・マンビーに二連勝(いずれも判定)、アルフォンソ・フレーザーと一勝一敗。このところ連勝中。コロンビア・カルタヘナでの一戦。1R、まずはジャブを出すセルバンテス。オルティスは勇ましい男で、接近してフック攻撃。しかし、左フック連打からの右ストレートを食って早くもピンチ。そして右ストレートからの左フックでダウン。右フックで二度目のダウンを取られたが、これは手首を引っかけたようなパンチ(レフェリーの位置からは正当なパンチに見えたのだろう)。さらにセルバンテスが猛攻。豪快なワンツー、斜め下からの大きな左フックからの右ストレート。オルティスにとって長い1Rがようやく終了。2R、反撃に出るオルティスだが、左フックでダウン。10カウント内に立てず、KO。セルバンテスが恐ろしい強さを見せて圧勝。パンチに伸びとパワー。オルティスは頑張るタイプだったが、この日の王者は強すぎた。これが事実上のラストファイトに。数年後、一試合だけカムバック(判定勝ち)。)
③アントニオ・セルバンテス 8R TKO ヘクター・トンプソン
(WBA世界J・ウェルター級タイトル戦、1975年)
(感想:セルバンテスがタイトル防衛。オルティス戦後、門田恭明、エステバン・デ・ヘスス相手に防衛に成功し、ノンタイトル戦で風間清をTKOしたセルバンテス。トンプソンと10度目の防衛戦。挑戦者トンプソンはオーストラリアのニューサウスウェールズ州ケンプシー出身。オーストラリア王座、英連邦王座(いずれもJ・ウェルター級)を獲得。ロベルト・デュランのWBA世界ライト級王座に挑戦して8RでTKO負け。その後はアルフォンソ・フレーザー、ライオン古山、門田恭明らを破るなど概ね好調。パナマシティでの一戦。共に速いジャブ。セルバンテスは伸び、トンプソンはパワー。互いにスピードのあるパンチで力強い攻め。セルバンテスが豪快なワンツー、トンプソンは踏み込んでボディ打ち。一進一退。4R、セルバンテスが左フックからの右ストレート、凄まじいフック連打。7Rには右ストレートからの左フック。このラウンド終了後、トンプソンは棄権。映像ではまだ続行できそうに見えたが、「セルバンテスには勝てない」と判断したのだろうか? セルバンテスが長いリーチで快勝。パンチに伸びとパワー。それに器用さ。「普通に強い選手」ではセルバンテスには勝てない。その後の二人。トンプソンはオーストラリアで地域王座戦に数多く出場。1970年にデビュー、1980年に引退。通算戦績73勝(27KO)12敗2分。中身の濃いキャリアだった。セルバンテスは次の防衛戦で17歳のウィルフレド・ベニテスに判定で敗北、王座陥落。決定戦で王座を取り戻して6度の防衛に成功したが、今度は「荒鷲」アーロン・プライアーにKO負け。間違いなく強かったが、ベニテス、プライアーの「引き立て役」になってしまった感も。)
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