WBO世界クルーザー級王者。WBO王座防衛戦。ギレルモ・ジョーンズ戦、ビンセント・カンタトーレ戦(ラスト)ほかを紹介します。
ジョニー・ネルソン(イギリス)
身長189cm:スイッチヒッター(両構え)
①ジョニー・ネルソン 12R 引分 ギレルモ・ジョーンズ
(WBO世界クルーザー級タイトル戦、2002年)
(感想:ネルソンがタイトル防衛。これまで42勝(28KO)12敗1分のネルソンが10度目の防衛戦。挑戦者ジョーンズはパナマの黒人で、29勝(22KO)2敗1分。元々はJ・ミドル級。WBCの地域王座、パナマ王座(いずれもウェルター級)を獲得後、ローラン・ブードゥアニとWBA世界J・ミドル級王座を争って判定負け。それからは試合間隔が長めになり、体重増加。何とクルーザー級で世界挑戦。どんな動きを見せるか? 英国ダービーでの一戦。サウスポーのジョーンズ。開始から積極的に攻めの姿勢。ジャブ、ストレート、フック。ただ、パンチの振りが大きめで接近戦は得意ではない印象。ネルソンは例によってジャブ、ストレートなどでカウンターを狙う。オーソドックスにチェンジしたジョーンズ。サウスポーの時より強いパンチを打つが、正確さに欠ける。打ち合いを避けるネルソンがジャブ、カウンター、クリンチ。ジョーンズには不器用さ。そのためクリンチが多く、レフェリーが両者に警告(「パンチで勝負しろ」といった感じのゼスチャーだった)。盛り上がらないまま12R終了。ジョーンズは勝利を確信してハイテンション。判定は極めて僅差のドロー。映像では攻めたジョーンズが勝ったように見えたが、パンチをかわされるシーンが目立った(距離を取っているときは良いパンチを打っていたが、下手な接近戦を選択したのは間違いだったような気がする)。ネルソンのジャブが評価されて僅差になったようだ。その後もジョーンズはクルーザー級で試合。WBCラティノ王座を獲得後、WBA世界クルーザー級王者に。)
②ジョニー・ネルソン 7R TKO ルディガー・マイ
(WBO世界クルーザー級タイトル戦、2004年)
(ダウンシーン)
7R:右ストレート、右フックで2度、マイがダウン
(感想:ネルソンがタイトル防衛。試合間隔が長くなってきたネルソン(37歳)。ギレルモ・ジョーンズ戦から約一年後にアレクサンドル・ベトコビッチと11度目の防衛戦を行い、判定勝ち。2003年はその一試合のみ。マイとの12度目の防衛戦は2004年、初試合(9月)。挑戦者マイ(29歳)はドイツ・メラーネ出身。プロデビューはアメリカ。以来、ドイツを主戦場に連勝。ドイツ王座(クルーザー級)を獲得したが、判定で初黒星。欧州王座(クルーザー級)への挑戦はTKO負け。ベトコビッチとWBCインター王座(クルーザー級)を争ってドロー。欧州連合王座(クルーザー級)を獲得して連続防衛するなどこのところ負け無しで初の世界挑戦。ドイツ・エッセンでの一戦。ガードを上げてジャブ連打、右ストレートのマイ。正統派の素直なボクシング。ネルソンは意外に調子がよい。機敏な動きで速いジャブ、ストレート。カウンターで隙を狙う。接近戦は共にあまりやりたくない様子で、クリンチになるシーンが目立つ。6R、ネルソンがマイを押し倒してマイはロープ外に転落。ネルソンに減点。7R、長く鋭い右ストレートが絵に描いたようにカウンターとなってマイがダウン。立ったが、連打からの右フックで二度目のダウン。同時にレフェリーストップ。ネルソンが素晴らしいパンチで勝利。いつものようにクリンチなどを使いながら隙を突く右ストレートをキレイに決めた。マイは右ストレートに威力があったが、接近戦に難。スタミナも不足しているように見えた。その後、マイはマルコ・ハック、ハービー・ハイドに敗れて引退。中堅どころに強かったが、世界王座は獲れなかった。)
③ジョニー・ネルソン 12R 判定 ビンセンツォ・カンタトーレ
(WBO世界クルーザー級タイトル戦、2005年)
(ダウンシーン)
8R:左フックでネルソンがダウン
(感想:ネルソンがタイトル防衛。マイ戦から一年以上経って13度目の防衛戦。挑戦者カンタトーレはイタリアのサント・スピリト出身。トレーナーは元世界王者パトリツィオ・オリバ。デビューから連勝だったが、イタリア王座戦(ヘビー級)でTKO負け。再戦で王座獲得。欧州王座(ヘビー級)に挑戦してTKO負け。WBUのスーパークルーザー級王者に。WBCインター王座(クルーザー級)を連続防衛後、WBC王座に挑戦してTKO負け。欧州王座(クルーザー級)獲得。そしてネルソンに挑戦。地域王座を獲得し、残すターゲットは世界王座のみ。イタリア・ローマでの一戦(レフェリーはロベルト・ラミレス)。ジリジリ距離を詰めてストレート、フックを放つカンタトーレ。力んでいるため攻撃のリズムが悪く、粗い攻め。ネルソンはジャブ、ストレート。当てる巧さと身軽さで勝負。5R、両者がニラみ合ったまま「ピタッ」と動きを止めたり、ネルソンが鋭い連打を打ち込んだり、カンタトーレを押し倒したり。8R、ネルソンがのらりくらりとした動き(ユーモラス。この試合ではそういう雰囲気のシーンが度々見られた)。そして左フックでダウン(微妙なパンチ。ダウンではなかったようにも見えた)。ダメージはあまりなさそう。しかし、11Rに食った左フックは効いた。必死に相手にしがみつくクリンチでネルソンはピンチを切り抜ける。12R、ネルソンがフットワーク&妙な動き(ニックネーム「エンターテイナー」にふさわしい動き)。最終ラウンド終了。両者とも両手を上げ、セコンドにかつがれて自身の勝利をアピール。判定は2-1。ネルソンがジャブ、当てるテクニックで勝利。カンタトーレはよく前に出たが、流れるような攻撃ができない欠点があった。その後の二人。カンタトーレは欧州王座(クルーザー級)を取り戻したが、初防衛戦でKO負けして引退。ネルソンはこの後、ブランク。エンゾ・マカリネリが暫定王者に。マカリネリと王座統一戦を行う予定だったが、引退を発表。王座を返上し、マカリネリが正規王者に。引退後は「Sky Sports」の仕事、チャリティ活動を行っているとか。カルロス・デ・レオンのWBC世界クルーザー級王座に挑戦したときは大凡戦だったネルソン。WBO王者になって13度も防衛するとは。トーマス・ハーンズのようにパワフルに勝利したり、ミルトン・マクローリーのような軽いパンチと身軽さで勝利したり。何とも面白い男だった。)
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