金メダリスト。マイク・エバンス戦、スターリング・ベンジャミン戦、トニー・アンソニー戦、ジェフ・シムズ戦を紹介します。
タイレル・ビッグス(アメリカ)
身長196cm:オーソドックス(右構え)
①タイレル・ビッグス 6R 判定 マイク・エバンス
(ヘビー級戦、1984年)
(感想:フィラデルフィア出身のビッグス(23歳)。「ヘビー級」で「フィラデルフィア」と言えばジョー・フレージャーを思い出すが、ビッグスはフレージャーではなくモハメド・アリのようなタイプ。速いジャブ、ワンツーが武器。アマチュアでは数々のタイトルを獲得。ロサンゼルス・オリンピック(1984年)ではスーパーヘビー級で金メダル。後、WBO王者になるフランチェスコ・ダミアニ(イタリア)とは良きライバルで、「キューバの伝説」テオフィロ・ステベンソンとも対戦している。これがプロデビュー戦(後に世界王者になるイベンダー・ホリフィールド、マーク・ブリーランド、メルドリック・テーラー、パーネル・ウィテカー、バージル・ヒルもこの日にデビュー)。エバンスは(25歳)シカゴの黒人で、3勝(1KO)1敗1分。TVのCMに出たことがある。ニューヨーク「マジソン・スクエア・ガーデン」での一戦(ビッグスのセコンドにルー・デュバ。会場ではマイケル・スピンクス(当時、世界ライトヘビー級王者)が観戦)。慎重に距離を取り、左のガードを下げた構えからジャブを打つビッグス。ワンツー、左フックからの右ストレート、左ボディ打ち。シャープなパンチだが、「相手を粉砕するようなパワー」は感じられない(もっとハッキリ言えば「ダラダラした打ち方」をするときも)。エバンスはブロックしながらジャブ、右ストレート、左フックを使うが、スウェーなどでかわされる。アリのような「フットワーク&ジャブ」のビッグス、思い切った左フックを空振りするエバンス。6R終了。判定は3-0。ビッグスが鋭いパンチで勝利。課題はパワー。エバンスは受け身に回った試合ぶり。相手を引っかき回すような激しさに欠けた。その後のエバンス。多くの試合。中堅どころを相手に連勝したり、ローカル王座を獲得したり。ただ、トニー・タッブス、トニー・タッカー、マイケル・モーラーといったトップ選手には勝てず。)
②タイレル・ビッグス 7R TKO スターリング・ベンジャミン
(ヘビー級戦、1985年)
(感想:これまで4連勝(3KO)のビッグス。ベンジャミンはトリニダード・トバゴの黒人で、8勝(2KO)6敗。デビューから連勝だったが、1RでのKO負けで初黒星。以来、ジェームス・ブロード、アルフレド・エバンヘリスタらを相手に連敗中。アトランタでの一戦。振りが大きめの左右フックで接近戦を仕掛けるベンジャミン。ビッグスはディフェンスしながらワンツー、ボディ連打で対抗。右フックからの左フックといったコンビネーションも使用。ところが、まるでスパーリングのような打ち方、試合姿勢で集中力を欠いているようなシーンもあり、もみ合いの展開になることも。3R、ビッグスが回転の速い連打(見事なものだった)。その後もビッグスがアッパー気味のフック、ボディ打ちで優勢。7R、ロープ際で打たれるベンジャミン。左目の下を負傷してドクターストップ。ビッグスが連打をまとめて勝利。しかし、集中力に課題。一方、攻撃の正確さに欠いたベンジャミン。次の試合でマイク・タイソンに1Rで仕留められて引退。)
③タイレル・ビッグス 1R KO トニー・アンソニー
(ヘビー級戦、1985年)
(ダウンシーン)
1R:フック連打でアンソニーがダウン
(感想:アンソニーはデトロイトの黒人で、ニックネームは「Fighting Schoolteacher」(教師でありボクサー?)。これまで16勝(10KO)4敗。ミシガン州王座を獲ったことがあるが、マイク・ウィーバー、ジェシー・ファーガソンに敗北。ビッグス戦はファーガソンに敗れた再起戦となる。バージニア州バージニア・ビーチでの一戦。力強いアンソニー。ジャブ、ストレート、左フック。特に左フックにパワーを込めて攻撃。それに対し、ビッグスはシャープなパンチ。左フックが効いたアンソニー。ビッグスが大振りの右フックを交えながらフック連打。ダウンしたアンソニーは10カウント内に立てず、KO。ビッグスがKO勝利。これまで「KO勝ち」はあったが、「レフェリーストップ」だっただけにこの勝ち方は良かったのではないか? ただ、大振りの右フックはモーションが大きすぎるような気も。アンソニーは(ピンクロン・トーマスのような)パワーを感じるヘビー級らしいボクシングだったが、パンチが効いてしまった。これが最後の試合に。)
④タイレル・ビッグス 10R 判定 ジェフ・シムズ
(ヘビー級戦、1986年)
(感想:トニー・アンソニー戦の次の試合でジェームス・ティリスを破ったビッグス(スピードを生かした勝利だった)。ただ、プライベートで問題があるようで「ボクシングに集中できるのか?」という状況。シムズ(32歳)はフロリダ州出身の黒人強打者。犯罪を繰り返し、人を殺して7年間服役。刑務所でボクシングを学び、プロへ。これまで23勝(21KO)3敗。フロリダ州王座を獲得したが、ジミー・ヤング、アーニー・シェイバースに敗北。このところ中堅どころを相手に連勝中。ネバダ州リノでの一戦。左ジャブ、左フックといった左のテクニックを使いながらアウトボクシングするビッグス。シムズは右パンチに破壊力があり、ジャブを使いながら右ストレート、フック。2Rにはパワフルなボディ連打。しかしながら、空転。打ち合いを避けるビッグスが速いパンチでポイントを重ねる。4R、ビッグスの左フックがヒット。タフなシムズは反撃。その後もビッグスが左のテクニック。シムズは強打を時折ヒットさせるが、逃げられてしまう。10R終了。判定は3-0。ビッグスがスピード&テクニックで勝利。しかし、肩を負傷してブランクを作るハメに。シムズは危険な強さを持っていたが、相手を詰めきれず。強くても負けることがある、という見本となった。しかしその後、シムズは何と全敗(相手はホセ・リバルタ、ティム・ウィザスプーン、トレバー・バービック、ジェームス・スミスといった世界クラス)。引退後の1993年にトラブル。口論から射殺された(39歳没)。)
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