タイソン戦後の試合。オジー・オカシオ戦、マイク・ハンター戦、ラリー・ドナルド戦を紹介します。
タイレル・ビッグス(アメリカ)
身長196cm:オーソドックス(右構え)
①タイレル・ビッグス 10R 判定 オジー・オカシオ
(ヘビー級戦、1990年)
(感想:デビューから連勝だったビッグス。世界挑戦の経験があるレナルド・スナイプス、デビッド・ベイにも勝利したが、初の世界挑戦は実に厳しいものに。得意のフットワーク&鋭いジャブを披露したが、世界王者マイク・タイソンの豪打に沈んだ。一年後の再起戦ではフランチェスコ・ダミアニにTKO負け。続くゲーリー・メイソン戦もKO負け。そして、オカシオ戦。オカシオはプエルトリコ出身でスナイプス、ベイと同様、ラリー・ホームズの世界王座に挑戦したことがあるベテラン。元WBA世界クルーザー級王者でもある。しかし、ヘビー級では苦戦してきた。直前の試合はレイ・マーサーに2-1の敗北。これまで23勝(11KO)7敗1分。アトラアンチックシティ「Trump Plaza Hotel」での一戦(リングアナはエド・デリアン)。フットワーク&ジャブのビッグス。アウトボクシングしながら左フックを振るう。オカシオは前進してフック攻撃。左フックからの右ストレートにも迫力。しかし、ビッグスは器用。オカシオのパワフルなフックはブロックされたり、かわされたり。6R、サウスポーにスイッチするビッグス。右フックからの左ストレートなどを披露。10R、ビッグスが力強い右ストレート、左フック。10R終了。判定は3-0。ビッグスが打ち合わないボクシングで勝利。最終ラウンドに見せたパワフルな攻撃をもっとやって欲しかったところ。オカシオはパワーはあったが、ディフェンスされて畳み掛ける攻撃に乏しかった。その後のオカシオ。後の世界王者ブルース・セルドン、レノックス・ルイスらに敗北。ヘビー級では厳しい結果となった。)
②マイク・ハンター 12R 判定 タイレル・ビッグス
(全米ヘビー級王座決定戦、1993年)
(感想:ハンターがタイトル獲得。オカシオ戦後のビッグス。オリンピアンで後の世界王者リディック・ボウ、レノックス・ルイスに連続TKO負け。世界戦線から脱落した形に。中堅どころに連勝して、この決定戦出場。これまで25勝(17KO)5敗。ハンターはサウスカロライナ州出身の黒人で19勝(8KO)3敗3分。武装強盗で7年間服役後、ボクシングを始める。才能があったようで、オリバー・マッコール、ドワイト・ムハマド・カウィ、ピンクロン・トーマス、ジミー・サンダー、オジー・オカシオといった実力者に勝利。フランソワ・ボタに敗れた再起戦でビッグスと対戦。ラスベガスでの一戦(リングアナはマイケル・バッファ、レフェリーはリチャード・スティール)。ジャブを使うビッグス。以前と比べて動きのスピードは落ちた。ただ巧さは健在で、左フックを思い切って打つことで衰えをカバー。ハンターは豪快なボクシング。パワーを込めた右ストレート、フック(当たったら非常に危険なパンチ)を意表を突くようなタイミングでかましていく。6R、ハンターがワンツーからの左フック。荒っぽいパワーで迫るが、パワーを入れすぎてバランスを崩すシーンも。後半はハンターに疲れ。思い切りのいいパンチが急速にスタミナを奪い、攻めてはクリンチ。距離を取ってしのごうとする。12R、ビッグスがローブローで減点。最終ラウンド終了。ハンターは両手を上げて勝利を確信。判定は3-0。ハンターがパワーで勝利。ただ、スタミナ切れになるなど、試合運びにマイナス点。ビッグスは悪くはなかったが全盛期のようなキレが無く、物足りない試合ぶりだった。その後、ハンターはアレクサンダー・ゾルキンを破って全米王座を防衛したが、薬物問題。バスター・マシス・ジュニアを破って全米王座の防衛に成功したと思ったら、薬物でノーコンテスト(王座剥奪)。ゾルキンとの再戦に敗北。以後は勝ったり負けたりで、最後はコペンハーゲンでブライアン・ニールセンにTKO負け(IBO王座戦)。引退後もトラブル。2006年、警官隊に射殺された(享年46)。)
③ラリー・ドナルド 2R KO タイレル・ビッグス
(ヘビー級戦、1997年)
(ダウンシーン)
2R:右ストレートでビッグスがダウン
(感想:マイク・ハンター戦の再起戦で元WBA王者トニー・タッブスにも敗れたビッグス。バスター・マシス・ジュニアとの全米ヘビー級王座決定戦にも敗れ、結果的にそれが最後のタイトル戦に。再起戦は日本「後楽園ホール」。レイ・アニスなる選手にTKO負けで引退(1994年)。そして、1997年にカムバック。中堅相手に二連勝でドナルド戦。タイソンの世界ヘビー級王座に挑戦してKO負けしてから10年後の試合となる。年齢は36で、これまで29勝(19KO)9敗。ドナルドはオハイオ州シンシナティ出身の黒人。ニックネームは「The Legend」(「伝説を築く」ほど出世する、ということか?)。アマチュアで優秀な成績。バルセロナ・オリンピック(1992年)にはスーパーヘビー級で出場(メダルは獲得ならず)。1993年にプロ入り後、連勝。ジェレミー・ウィリアムスを破ってWBC米大陸ヘビー級王座獲得、バート・クーパー相手に防衛成功。しかし、物議を醸したリディック・ボウ戦。試合前の記者会見でボウに殴られたドナルド。試合は判定負け。殴られたうえに敗北する残念な結果に。その後、NABO王座、米大陸王座を獲得・奪回したが、相手は中堅どころばかり。29歳で、26勝(17KO)1敗1分。コネチカット州マシャンタケットでの一戦。似た雰囲気の両者。白のトランクスで共に黒人。ジャブを基本とするボクサータイプ。足でリズムを取って左ジャブ連打からの右ストレート。ただ、ビッグスは速いジャブを使うのに対し、ドナルドはパワーを込めたジャブ、フック。2R、素晴らしく速く強いコンビネーション(左フックからの右ストレート)でビッグスがダウン。10カウント内に立てず、KO。新旧対決はドナルドがパワーで勝利。ビッグスは悲しい。巧さと安定感のあるボクシングだが、プロらしい迫力に欠けるところが。それがマトモに結果となった表れた。その後の二人。ドナルドは当時の実力者と多くの試合。しかし、ビタリ・クリチコらに敗れるなどで結局、世界挑戦は一度も無し。「伝説」にはなれなかった。ビッグスは約一年後の再起戦にKO勝ちして引退(負けたままで終わりたくなかったのだろう)。オリンピック・スーパーヘビー級金メダリストは世界王座に就くことなくリングを去った。)
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