WBC・IBF世界ヘビー級王者。中堅との試合、スティーブ・エドワーズ戦、マーシャル・ティルマン戦ほかを紹介します。
ハシーム・ラクマン(アメリカ)
身長189cm:オーソドックス(右構え)
①ハシーム・ラクマン 2R TKO スティーブ・エドワーズ
(ヘビー級戦、1996年)
(ダウンシーン)
1R:右ストレートでエドワーズがダウン
2R:左ボディ、左フック、左アッパー、左フック、左フックで5度、エドワーズがダウン
(感想:メリーランド州ボルチモア出身の黒人ラクマン。ニックネームは「The Rock(岩石)」(タフな男に付けられることが多い)。前科がたくさん。息子が誕生したことで改心。アマチュアを経験後、プロへ。ラスベガス「シーザース・パレス」でデビュー。以来、中堅相手に12連勝中(11KO)、23歳。エドワーズ(31歳)はテキサス州ヒューストン出身の黒人。マイケル・グラントに反則負けしたことがあり、3勝(1KO)3敗1分。イリノイ州モリーンでの一戦(レフェリーはヘナロ・ロドリゲス)。1R、似たタイプの両者。ゴツい身体でジャブ、ストレートを基本とする。積極的に先手を取るラクマン。右ストレートからの左フック、ボディフック連打。右ストレートでエドワーズがダウン。2R、意外に脆かったエドワーズ。ラクマンの攻めにダウンを繰り返す。何度倒れても立ち上がって反撃するため、レフェリーも試合を止めるワケにはいかない。5度目のダウン。エドワーズの様子を見てレフェリーはようやく試合を止めた。ラクマンが重そうな剛腕で勝利。攻撃が正確だったり、アッパーをタイミングよく出したり。筋のいいボクシングだった。エドワーズは残念。もっと積極的にいって欲しかったところであるが、これまでのダメージがあったのかも。これが事実上のラストファイトに。後、一試合だけカムバックしてTKO負けだった。)
②ハシーム・ラクマン 1R KO マーシャル・ティルマン
(ヘビー級戦、1997年)
(ダウンシーン)
1R:左フックでティルマンがダウン
(感想:エドワーズ戦後、元WBC王者トレバー・バービックを破るなど連勝を続けるラクマン。ティルマン(34歳)はルイジアナ州の黒人で、これまで17勝(14KO)13敗1分。ルー・サバリーズ、ヘンリー・アキンワンデ、ジェームス・スミス、カール・ウィリアムス、トミー・モリソンといった実力者に負けている中堅どころ。ただ、KO率は高い。カリフォルニア州ビバリー・ヒルズでの一戦。フットワークで距離を取りながらジャブを出すティルマン。ラクマンがジャブでプレッシャーを掛け、ワンツー、フック。特に右ストレートに良さ。そして右ストレートからの左フックでティルマンがダウン、KO。ラクマンが楽勝、あまり意味がない試合だったが、パンチの打ち方に良さがあった。ティルマンはほぼ何もできず。これが事実上のラストファイトに。後、一試合だけカムバックしてKO負けだった。)
③ハシーム・ラクマン 2R KO スティーブ・パネル
(全米・IBFインター・ヘビー級タイトル戦、1998年)
(ダウンシーン)
1R:右フックでパネルがダウン
2R:左フックでパネルがスタンディングダウン、左フックでダウン
(感想:ラクマンがタイトル防衛。ティルマン戦の次の試合で空位の全米王座を獲得したラクマン。オベド・サリバンを破ってIBFインター王座も獲得。ジェシー・ファーガソンらを相手に防衛。挑戦者パネル(29歳)はバージニア州ロアノーク出身の黒人。ニックネームは「Storm(嵐)」。これまで33勝(27KO)3敗。中堅どころに勝ってきたが、三つの敗北は全てKO(一つはジョン・ルイスに喫したもの)。このところ連勝中の勢いでどんな試合を見せるか? ルイジアナ州レイク・チャールズでの一戦。1R、素晴らしい動きとパンチのパネル(ドレッドヘアー)。スピードのあるジャブ、キレのあるストレート。右ストレートからの左フックに良さ。ラクマンはいつものようにジャブ、パワーのあるストレート、フック。攻めるラクマン、応戦するパネル。強烈な右フックでパネルがダウン。これがかなり効いたパネル。2Rには左フックでスタンディングダウン。さらに連打で倒れたが、これは「スリップ」扱い。ワンツーからの左フックでダウン。立てず、KO。ラクマンが素晴らしい勝ち方。実にヘビー級らしいパンチだった。残念だったパネル。「2R KO」という記録だけ見るとあっけなく負けたように見えるが、良い右ストレートを持っていた。しかし、その後はほぼ全敗。再起戦でウラジミール・クリチコにKO負け。フランソワ・ボタ、レイ・マーサーらにKO負け。打たれ弱さがあったのが惜しい。)
その後のラクマン
デビッド・トゥアにTKO負けで初黒星。オレグ・マスカエフにKO負け。コーリー・サンダースにTKO勝ちでWBU王座獲得。ベテランのフランキー・スウィンデルに勝利。そして今となっては伝説のレノックス・ルイス戦。WBC・IBF世界ヘビー級王者ルイスをKOして世界王者に。しかし、「ダイレクト・リマッチ」でルイスに4RでKOされて王座陥落。これで緊張が切れたのか、ピークを過ぎたイベンダー・ホリフィールドに敗北、トゥアとの再戦はドロー、ジョン・ルイスに敗北。中堅どころに連勝。WBC暫定王座獲得。正規王者に昇格したが、オレグ・マスカエフに敗れ、王座陥落。北米王座獲得。ウラジミール・クリチコのWBO・IBF王座への挑戦はTKO負け(2008年)。
④ハシーム・ラクマン 1R TKO クリントン・ボールドリッジ
(ヘビー級戦、2010年)
(ダウンシーン)
1R:右ストレート、左フックで2度、ボールドリッジがダウン
(感想:クリチコに敗れたラクマンが復帰戦。どんな動きを見せるか? ボールドリッジはミズーリ州の黒人。勝ったり負けたりで、相手は中堅選手ばかり。ローカル王座に挑戦したときはTKO負けに終わっている。ミズーリ州カンザスシティでの一戦。共にガッチリした身体。ボールドリッジは左のガードを下げた構えからジャブ、接近して連打。しかしながら、突っ立った姿勢でパンチを出すためディフェンスにかなりの甘さ(まるでケンカのような打ち方)。ラクマンはハッキリ言って「太って別人のよう」(別人だったりして)。右パンチの強さは相変わらずありそうだが動きのスピードが落ち、かつてのような勢いに欠ける。それでも力量差。左ボディが効いたボールドリッジにラクマンがラッシュ。右ストレート、次いで左フックでボールドリッジは二度のダウン。レフェリーはカウントを途中で止めて試合を終了させた。ラクマンが剛腕で勝利。しかし、最早世界戦ができるような身体ではない。その後の二人。ボールドリッジは中堅にKO負けするなどサッパリ。ラクマンは中堅に連勝後、何と世界挑戦。WBA世界ヘビー級王者アレクサンデル・ポベトキンに挑戦し、2RでTKO負け(2012年)。「負けたままでは終われない」と考えたか、3回戦試合でカムバック。判定負けで、それが最後の試合に。強かったが、レノックス・ルイスがより強かったため世界王者としてはあまり活躍できず。ルイスに勝った時が「キャリアのピーク」だった印象。)
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