WBC・WBO世界ヘビー級王者。デビュー当初の試合。トニー・ブラッハム戦、ブライアン・サージェント戦ほかを紹介します。
ビタリ・クリチコ(ウクライナ)
身長200cm:オーソドックス(右構え)
①ビタリ・クリチコ 2R KO トニー・ブラッハム
(ヘビー級戦、1996年)
(ダウンシーン)
2R:左ボディでブラッハムがダウン
(感想:クリチコはソ連・キルギス出身。ソ連に翻弄された一族で、親類は悲惨な目に(今ではロシアの脅威にさらされている)。キックボクサーになり、世界タイトル獲得。アマチュア・ボクシングでも優秀な成績(タイトルも獲得)。プロへ。「世界ヘビー級王座」と言えば「アメリカの所有物」であるかのようにアメリカ人の王者が(基本的に)保持してきたが、ビタリ・クリチコと弟ウラジミールは「栄光の世界ヘビー級王座」を兄弟で独占。しかし、アップライトでアマチュアボクシング的な試合ぶりであったため、兄弟ともアメリカでは人気が出ず。ヨーロッパで世界防衛戦を行った。ブラッハム戦はデビュー戦。ブラッハムはイリノイ州シカゴ出身の黒人で、身長185cm。デビューから連勝だったが、このところ三連敗中。ドイツ・ヴァンズベクでの一戦。1R、左のガードを下げた構えからアップライトスタイルでジャブ、ワンツー、左フック、ボディ打ちのクリチコ。体格で大きく劣るブラッハムはブロックしながら大きなフックを狙うが、空転。ラウンド終了間際、左フックからの右フックでブラッハムがダウンしたが、カウントされず(ゴングに救われた形)。2R、左ボディでブラッハムがうつぶせにダウン。立てず、KO。クリチコが楽勝。ディフェンスに甘さがあるように見えたが、身長でカバー。ワンツーと左フックに良さがあった。ブラッハムは大振り。身長差があるうえに大雑把な攻めだった。そして、この試合が事実上のラストファイトに。後、一試合だけカムバックし、ドノバン・ラドックにKOされた。)
②ビタリ・クリチコ 2R TKO ブライアン・サージェント
(ヘビー級戦、1996年)
(ダウンシーン)
2R:左フック、右フックで2度、サージェントがダウン
(感想:クリチコのプロ3戦目。サージェントはミネソタ州マノメン出身の白人。デビューから連勝だったが、フランソワ・ボタ、ラリー・ドナルド、ヘンリー・アキンワンデといった実力者には及ばず。直前の試合ではハシム・ラクマンに1RでTKO負け。ドイツ・フランクフルトでの一戦。ジャブ、打ち下ろすようなワンツー、左フックのクリチコ。体格で劣るサージェントは締まりのない身体。何とかディフェンスしながら単発のジャブ、ストレート、フックで応戦するが、基本ができていないバラバラなボクシング。攻められてクリンチ。2R、左フックでサージェントがダウン。立ったが、右フックで二度目。レフェリーはカウントを途中で止め、試合を終わらせた。クリチコが楽勝。戦っても時間の無駄な相手だったが、ブランクを作るよりマシか。その後、サージェントはアメリカのリングに上がり、ジョー・メシ、トニー・タッブスに敗北。)
③ビタリ・クリチコ 2R KO クリーブランド・ウッズ
(ヘビー級戦、1997年)
(ダウンシーン)
2R:ワンツーでウッズがダウン
(感想:クリチコのプロ8戦目。ウッズはネバダ州ラスベガス出身の黒人。デビュー当初は良かったが、ジョー・ヒップ(後、世界挑戦)、JBウィリアムソン、デビッド・イゾンリティ、オーリン・ノリスらに敗れるなどこのところ負けが込んでいる。フランクフルトでの一戦。スキンヘッドのウッズ。軽いジャブ、そして一発狙いの右フック。クリチコはディフェンスしながら打ち下ろすような右ストレート(身体の大きさを上手く利用している)。2R、ワンツーでウッズがついにダウン、KO。クリチコが右パンチで勝利。ウッズは相手の大きさに戸惑ったか、雑な攻め。それでは勝てない。その後、ウッズはレイモン・ブリュースターらを相手に全敗でキャリア終了。)
④ビタリ・クリチコ 3R TKO ヘルマン・デルガド
(ヘビー級戦、1997年)
(ダウンシーン)
2R:左ボディでデルガドがダウン
3R:左ジャブ、左ジャブ、左フックで3度、デルガドがダウン
(感想:クリチコのプロ12戦目。デルガドはテキサス州エル・パソ出身。デビューから好調だったが、テキサス州王座(クルーザー級)に二回挑戦していずれも判定負け。アイク・イベアブチ、ハシム・ラクマンにはKO負け。ドイツ・カールスルーエでの一戦。身長183cmのデルガド(腕にはチェ・ゲバラの顔のイレズミ)。ズングリした体格で右フックからの左ボディ打ち。大きいクリチコはジャブ、ストレートを基本としながら斜め下から打つ右フックからの左フック、意表を突く左フックなど。先手を取るクリチコにデルガドは劣勢。2R、左ボディでデルガドがダウン。3Rには左ジャブでダウン。畳み掛けるクリチコ。左ジャブ、そして右フックからの左フックでさらに二度のダウンを奪う。セコンドからタオル投入でTKO。クリチコが細かいパンチを入れながら最後はコンビネーションで勝利。様々な攻撃パターンを増やし、それを実戦で試しているのだろう。デルガドは単なるサンドバック。いいように打たれた。これが最後の試合に。)
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