80年代の英国ミドル級。マーク・ケイラー戦、チャールズ・ボストン戦、ジェームズ・クック戦を紹介します。
ヘロール・グラハム(イギリス)
身長182cm:サウスポー
①ヘロール・グラハム 9R TKO マーク・ケイラー
(欧州ミドル級タイトル戦、1986年)
(感想:グラハムがタイトル防衛。英国ノッティンガム出身の黒人グラハム。スラリとした体型のテクニシャン。アマチュア王者から1978年にプロへ。長いリーチ(196cm)を生かすサウスポースタイルで、これまで36連勝(19KO)、27歳。英国王座、英連邦王座、欧州王座(J・ミドル、およびミドル級)獲得。後のIBF世界スーパーミドル王者リンデル・ホームズ、元WBA世界J・ミドル級王者アユブ・カルレにTKO勝利。WBC世界J・ミドル級王者(当時)トーマス・ハーンズ、統一世界ミドル級王者(当時)マービン・ハグラーへの挑戦を狙うが、チャンスが来ない。そんな状況で欧州ミドル級王座防衛戦。挑戦者ケイラー(25歳)はロンドン出身の白人。1980年モスクワ・オリンピック代表。メダルは獲得できなかったが、アマチュア王者の実績を引っさげてプロ入り。デビューから連勝で英国王座、英連邦王座(いずれもミドル級)獲得。しかし、反則で初黒星。バスター・ドレイトン、トニー・シブソンに敗北。このところ連勝で、グラハムに挑戦。32勝(27KO)3敗。英国ウェンブリーでの一戦(レフェリーはジョン・コイル)。ゴング前、フランク・ブルーノ、ロイド・ハニガン(ドナルド・カリーを大番狂わせで破って世界ウェルター級王者になったばかり)がリング上で挨拶。試合開始。右のガードを下げた構えから右ジャブ、左カウンター、左右フック連打のグラハム。手数の多さと左パンチの伸びに良さがあるが、よろけたりするなどバランスがよろしくない印象。また、身軽ではあるが、アップライトスタイルでパワーが乗らない打ち方。ケイラーはジャブ、ストレートを使いながら前進し、接近戦ではボディ打ちを狙う。3R、ケイラーが右目付近を負傷したらしく、キズのチェックを受ける。4R、打ち合い。ラウンド終了後にも打ち合うハプニング。その後も攻めるケイラー、連打のグラハム。8R終了後、ケイラーが棄権。キズによるものと思われる。グラハムが手数で勝利。しかし、パワーが足りない。ケイラーは悪くはないが、「普通の選手」といったところ。その後もケイラーは階級を上げながらリングへ。しかし、トム・コリンズ、マウロ・ガルバノ、ジェームズ・クックとの欧州王座戦に敗北。世界王座戦はできなかった。)
②ヘロール・グラハム 8R TKO チャールズ・ボストン
(ミドル級戦、1987年)
(感想:ケイラー戦の次の試合。世界ミドル級1位のグラハム。同じ英国のアラン・ミンターが失った王座をマービン・ハグラーから取り返すことが期待されている状況。ボストン(25歳)はニュージャージー州出身の黒人サウスポーで、世界ランク15位。デビューから連勝。判定で初黒星。ドワイト・デイビソンに勝利したが、ダグ・デウィット、マイケル・ナンに敗北。ただし、負けは全て判定によるもの。北アイルランド・ベルファストでの一戦。共にサウスポー。右ジャブ、左ストレート。グラハムがパンチは軽いが、テンポの良いワンツー、連打。ボストンは右フックを思い切り振るうが、相手の手数に押されて空転。ディフェンスしながらの連打でグラハム優勢。7R、コーナーに詰められて連打されるボストン。このラウンド終了後に棄権。グラハムが軽い連打の積み重ねで勝利。共にサウスポーだったが、違い。力むボストンに対し、柔軟な連打のグラハム。グラハムのパンチの方がよく当たった。ボクシングはパワーを込めればよい、というものではないことを証明。ただ、ハグラーに挑戦するには迫力・パワー不足の印象。ボストンはこれが最後の試合に。)
③ヘロール・グラハム 5R TKO ジェームズ・クック
(英国ミドル級王座決定戦、1988年)
(ダウンシーン)
1R:ワンツーでクックがダウン
5R:右フックでクックがダウン
(感想:グラハムがタイトル奪回。ボストン戦の次の試合でスンブ・カランベイに判定負けしたグラハム(初黒星。欧州ミドル級タイトル戦)。何とも痛い敗北。再起戦に勝利して、このクック戦。クック(29歳)はこれまで12勝(6KO)7敗の黒人。ジャマイカ出身で、英国在住。英国のローカル王座(ミドル級)獲得、グラシアノ・ロッシジャーニに判定負け、マイケル・ワトソンに判定勝ち。このところ勝ったり負けたりだが、一定の実力はある。身長は188cmで、グラハムより大きい。英国シェフィールドでの一戦。1Rから積極的なグラハム。左ストレート、連打で攻めの姿勢。勢い余って背後からパンチ。ワンツーでクックがダウン。2R、グラハムの左ストレートがヒットし、さらに連打。クックは力強く連打で応戦するが、逃げられる。5R、グラハムが軽いフットワーク、そして激しい連打。右フックでクックがダウン。立ったが、レフェリーストップ。グラハムが速い連打で快勝。パワー不足を補うためか、実に精力的な攻めだった。初黒星が影響したのだろう。クックは終始、押され気味。スピードに差があった。しかしながらクックはその後、好調。英国王座、欧州王座(いずれもスーパーミドル級)獲得。欧州王座連続防衛。王座陥落後も英国王座を奪回するなどリングに上がり続けた。)
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