80年代の英国ミドル級。ジョニー・メルファー戦、ロッド・ダグラス戦、ビニー・パジェンザ戦を紹介します。
ヘロール・グラハム(イギリス)
身長182cm:サウスポー
①ヘロール・グラハム 5R TKO ジョニー・メルファー
(英国ミドル級タイトル戦、1988年)
(感想:グラハムがタイトル防衛。スンブ・カランベイに敗れた後、英国王座を取り戻したグラハム(29歳)。世界挑戦に向けて再スタートしている状況。挑戦者メルファー(27歳)は英国グロスター出身。これまで8勝(6KO)1敗。デビュー戦にTKO負け後、連勝。年齢の割には試合数が少なく、グラハムとは大きな経験の差がある。ロンドンのベスナル・グリーンでの一戦(レフェリーはジョン・コイル)。右のガードを下げた構えから右ジャブを伸ばすグラハム。メルファーはガードを上げた構えから右パンチ(ストレート、フック)。しかし、パワーを込めすぎてぎこちない攻め。そのためスムーズにコンビネーションできない欠点。1Rからメルファーが何度もスリップダウン。これはグラハムのオープンブロー気味のパンチによるもの。攻めが雑なメルファーにグラハムがワンツー、振りが大きめの右フックからの左ストレート。5R、攻めるグラハム。メルファーは打たれ、動きが止まったところでレフェリーストップ。グラハムが楽勝。ディフェンスしながら伸びるストレート。しかし、パワーはそこそこ(もっとハッキリ言えば「軽い」)。メルファーは力みすぎ。その後、メルファーはクリス・ユーバンク、スティーブ・コリンズにKO負け。タイトル戦はグラハム戦のみでキャリア終了。)
②ヘロール・グラハム 9R TKO ロッド・ダグラス
(英国ミドル級タイトル戦、1989年)
(ダウンシーン)
9R:左フック、右フックで2度、ダグラスがダウン
(感想:グラハムがタイトル防衛。メルファー戦の次の試合でマイク・マッカラムとWBA世界ミドル級王座決定戦を行ったグラハムだが、判定負け(1989年)。ダグラスと再起戦。挑戦者ダグラス(25歳)はロンドン出身の黒人。アマチュアで優勝経験。しかし、オリンピックではメダル獲得ならず。アマ時代にナイジェル・ベンに勝利。プロではこれまで中堅どころを相手に全勝。これが初のタイトル戦。英国ウェンブリーでの一戦。動きが素早いグラハム。ダグラスは右パンチにパワーを込めるが、粗い攻めで空転。ダグラスの強引な攻めをかわしながら左ストレートを伸ばすグラハム。5Rにはプロレスばりにダグラスを投げ飛ばす。7R、ダグラスの右ストレートがヒット。グラハムは足で逃げる。9R、連打からの左フックでダグラスがダウン。立ったが、右フックで再び。今度も立ったが、連打をまとめられたところでレフェリーストップ。グラハムが回転の速い連打、伸びるストレートで勝利。ダグラスはアマで実績があったにしては意外なほど雑な攻め。これが最後の試合となった。)
その後のグラハム
二度目の世界挑戦。ジュリアン・ジャクソンと空位のWBC世界ミドル級王座を争ったが、一発でKO負け。「軟体動物」のようなフニャフニャした動きはカランベイ、マッカラム、ジャクソンといった一級品には通用せず。カランベイとの再戦、その再起戦に敗れて引退。1996年にカムバック。三連勝後、ビニー・パジェンザと勝負。
③ヘロール・グラハム 12R 判定 ビニー・パジェンザ
(WBCインターナショナル・スーパーミドル級タイトル戦、1997年)
(感想:グラハムがタイトル初防衛。クリス・ジョンソンとの決定戦でインター王者になったグラハムが初防衛戦。これまで47勝(28KO)5敗、38歳。パジェンザ(34歳)はアメリカ・ロードアイランド州出身の白人で好戦的なタイプ。41勝(28KO)6敗。グレグ・ホーゲンとのIBF世界ライト級王座をめぐる抗争、世界J・ウェルター級王座への三度の挑戦(全て失敗)、WBA世界J・ミドル級王座奪取(二階級制覇)、大怪我からの復活、ロベルト・デュランとの対戦などで有名。ここ最近はマイナー王座戦への出場が目立つ。ロンドン「ウェンブリー・アリーナ」での一戦。ベテラン同士の対決。足でステップを踏んでジャブを出す両者。グラハムは例によって相手から距離を取ってジャブ、ワンツー。無茶な打ち合いは避ける。パジェンザは距離を詰めて右フックを振るうが、逃げられる。3R、ロープをつかむパジェンザ(いつものクセ)。打ち合ってくれないグラハムにイライラ(かつてイラつきすぎて反則負けになったことがある。ロレト・ガルサとのWBA世界J・ウェルター級王座戦)。8R、挑発するパジェンザだが、グラハムは乗らない。その後もジャブ&左パンチのアウトボクシングでグラハム。12R終了。判定は3-0。グラハムが淡々と勝利した。その後の二人。パジェンザはWBC世界スーパーミドル級王座にチャレンジするチャンスを得たが、勝てず。グラハムはパジェンザ戦の次の試合でチャールズ・ブルーワーのIBF世界スーパーミドル級王座に挑戦したが勝てず、それが最後の試合に。結局、世界王者になれなかったグラハム。やはりパワー不足だったか。しかし、その戦いぶりはナジーム・ハメドが承継。ハメドがグラハムの戦いぶりを参考にしたかどうかは不明だが、よく似ている。世界フェザー級を席巻した。)
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