タフな白人。中堅どころとの戦い。ジャック・ボーデル戦、ジョー・アレクサンダー戦、ロレンソ・サノン戦を紹介します。
ジェリー・クォーリー(アメリカ)
身長183cm:オーソドックス(右構え)
①ジェリー・クォーリー 1R KO ジャック・ボーデル
(ヘビー級戦、1971年)
(ダウンシーン)
1R:右カウンターでボーデルがダウン
(感想:1969年にジョー・フレージャーのニューヨーク州公認世界ヘビー級王座に挑戦してTKO負けしたクォーリー。結果的にそれが最後の世界戦となってしまったが、その後もリングへ。1970年に歴史的な試合。ベトナム戦争行きを拒否して世界王座を剥奪されたモハメド・アリがカムバック。その第一戦の相手としてクォーリーが対戦を承諾。TKOでアリ勝利。その後、クォーリーは再起二連勝で英国遠征。ボーデルは英国の白人サウスポー。アマチュアのライトヘビー級王者からプロへ。英国のローカル王座(ライトヘビー級、ヘビー級)獲得。中堅どころを相手にまずまずの戦績。サッド・スペンサー、ヘンリー・クーパーに敗北。英国王座(ヘビー級)獲得。クーパーとの再戦にも敗北。ところがジョー・バグナーを破って英連邦王座、欧州王座(ヘビー級)獲得。英国王座と併せて「欧州ナンバーワン」に。その次の試合でクォーリーと対決。どんな試合になるか? 英国ウェンブリーでの一戦。右ジャブを出すボーデル。クォーリーが開始から右ストレート、フックで仕掛ける。しかし雑な攻めで、左ストレートを食う。右カウンターでボーデルがピンチ。さらに右カウンターでダウン。立てず、KO。クォーリーが豪快なKO勝利。パワーファイターながらどこか慎重なところがあるクォーリーだが、この試合では強引な速攻。パンチを食ったシーンはマイナスだが、欧州ナンバーワンの相手をKOしたいという意気込みを感じる試合姿勢を評価したい。ボーデルはテクニックで勝負するタイプらしい。距離を詰められて沈んだ。その後、ボーデルは二試合。欧州王座戦、英国王座&英連邦王座戦。いずれもKO負けで引退。王座は獲れたが、「真のトップ」にはなれなかった。)
その後のクォーリー
アリと再戦。北米王座を懸けた重要な試合だったが、またしてもTKO負け。強打者ロン・ライルに判定勝ち。アーニー・シェイバースにTKO勝ち。アリとの再戦後は連勝。
②ジェリー・クォーリー 2R KO ジョー・アレクサンダー
(ヘビー級戦、1974年)
(ダウンシーン)
1R:左フックでクォーリーがダウン
2R:右ストレートで2度、アレクサンダーがダウン
(感想:アレクサンダーはジョージア州出身の黒人。このところ四連勝中の中堅どころ。ニューヨーク・ユニオンデールでの一戦(レフェリーはアーサー・マーカンテ)。1R、慎重姿勢のアレクサンダー。しかし、打つときはジャブ、ストレート、フックをまとめて連打する。クォーリーはジリジリと距離を詰めて左フック。タイミングのいい左フックでクォーリーがダウン。2R、攻めるアレクサンダー、左フックで応戦するクォーリー。強烈な右ストレートでアレクサンダーがダウン。立ったが、今度も強烈な右ストレートで二度目のダウン。立てず、KO。クォーリーがヘビー級らしい豪快なKO勝ち。ダウンは食ったが、良いパンチだったためマイナス評価にはならないだろう。アレクサンダーはちょっと調子に乗った。ダウンは奪ったが、相手はタフな強打者。決して油断してはならない。その後、アレクサンダーはブランクがちながら連勝。しかし、最後は連敗で引退。タイトルとは無縁だったが、クォーリーをダウンさせて逆にぶっ倒されたことでファンの記憶に残ることとなった。)
③ジェリー・クォーリー 9R TKO ロレンソ・サノン
(ヘビー級戦、1977年)
(ダウンシーン)
9R:右フックで3度、サノンがダウン
(感想:ジョー・フレージャーとの再戦、ケン・ノートン戦に敗れたクォーリー。引退したが、カムバック。サノンはイタリアの白人。無敗のままイタリア王座に就いたが、初防衛に失敗(初黒星)。そこからまた連勝したが、アメリカでケン・ノートンにKO負け。再起戦でクォーリーと勝負。ラスベガス「シーザース・パレス」での一戦。ヨーロッパ人らしいボクシングのサノン。アップライトな姿勢でジャブ、ワンツー、左フック。しかし、攻めるときのディフェンスに甘さ。クォーリーはスッカリ丸っこい顔、身体に。ディフェンスしながら前進してストレート、得意の左ボディ打ち。フックに迫力。フットワーク&ジャブのサノンは(リングサイドで観戦の)モハメド・アリのような動きから右ストレート。クォーリーは踏み込んでフックを打つが、サノンのアウトボクシングがポイントを取っている印象。8R、クォーリーの右ストレートが爆発。連打で攻められるサノンはクリンチ。9R、攻めるクォーリー。サノンが右フックで三度のダウン。レフェリーはカウントを途中で止め、試合終了。クォーリーがパワーで勝利。スタミナ不足から冴えない動きになったが、最後に仕留めたのは見事だった。サノンはパワーの乗らない打ち方。それではヘビー級では通用しない。その後の二人。サノンはアルフレド・エバンヘリスタを破って欧州王者に。ラリー・ホームズのWBC王座に挑戦したが、勝てず。ヨーロッパでは好調だったが、アメリカでは一度も勝てなかった(三試合、全てKO負け)。クォーリーはサノン戦で引退したが、1983年にカムバックして二勝。そして1992年にカムバック。六回戦試合で判定負けで完全に終了。1999年に53歳で死去。ボクシングの後遺症によるもの。タフな選手だからといって「打たれても大丈夫」なワケではない。長く戦い続けるのはリスクが大きい。)
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