80年代のミドル級。ハグラーを怒らせた男。カーチス・パーカー戦(再戦)、リチャード・バートン戦、ドニー・ラロンデ戦を紹介します。
ムスタファ・ハムショ(シリア)
身長173cm:サウスポー
①ムスタファ・ハムショ 10R 判定 カーチス・パーカー
(ミドル級戦、1982年)
(感想:シリアのハムショ。船員をしながらアマチュアで試合した過去。アメリカに不法入国してプロの選手になったという。デビュー戦に敗北。その後、連勝。戦闘的なスタイルに変えてからKO勝ちが増えてきた。ウィルフォード・サイピオンに勝利。パーカーに2-1で勝利(体力で押し切るような勝ち方だった)。前世界王者アラン・ミンターを下し、世界ミドル級王者マービン・ハグラーに挑戦。これに敗北し、パーカーと再起戦。これまで33勝(19KO)2敗。パーカーはペンシルベニア州フィラデルフィア出身の黒人で、19勝(16KO)3敗。思い切りのいい右ストレート、左右フックで攻めるタイプ。攻めるだけではなくディフェンスもでき、世界王座を狙う存在。アトランチックシティでの一戦(リングアナは名物男エド・デリアン、レフェリーはヒゲのジョー・コルテス)。足で距離を取るハムショ。ジャブ、ワンツー。ファイターのパーカーは基本的にいつもと同じ。精力的に前進して速いジャブ、思い切った右ストレート、フック。接近戦。フックでの打ち合い。互いのパンチがヒット。5R、互いにラフな攻撃でレフェリーから警告。6R、悪名高いハムショのヘッドバット(苦しくなるとやってしまうようだ)。攻めるパーカー。ハムショは当てる巧さ。10R終了。判定は2-0。よく攻めたパーカーだが、雑なパンチが多かった印象。ハムショは押され気味だったが、ジャブを使う分、見栄えが少し良かったか。負けたパーカーはさぞ悔しかったろう。その後もパーカーはリングに上がり続けたが実力者に阻まれ、世界挑戦のチャンスは無かった。)
その後のハムショ
後の二冠王ボビー・チェズに勝利。若くして「ベテラン」になったウィルフレド・ベニテスにも勝利。しかし、世界王座を懸けたハグラーとの再戦では得意のヘッドバットを食らわしてハグラーを激怒させるミステイク。3Rに思いっ切りぶっ飛ばされた。再起二連勝でリチャード・バートンと対戦。
②ムスタファ・ハムショ 7R TKO リチャード・バートン
(ミドル級戦、1986年)
(ダウンシーン)
7R:左ストレートでバートンがダウン
(感想:バートンはジャマイカ・キングストン出身の黒人。アマチュアで活躍し、プロへ。戦績はまずまず。プロ五戦目でKO負けしているが、このところ三連勝中。 ニューヨークでの一戦(リングアナはエド・デリアン)。パンチが速いバートン。ジャブ、右ストレート。ハムショはディフェンスしながら前進(ヘディングも使用)。左パンチを当てるテクニック、ボディフックで優勢。打ち合いが続く中、6Rにハムショがローブロー。7R、攻撃が正確なハムショ。強烈な左ストレートでバートンをダウンさせる。立ったバートンだが、連打を浴びてレフェリーストップ。ハムショが快勝。頭から突っ込むなど相変わらず粗いところもあったが、ダウンを奪ったストレートには迫力があった。バートンは正統派。パンチは速かったが、パワーはどうだったか? 意外なハムショのディフェンスの巧さ(それとタフネス)にバートンは攻撃を遮られた。その後、バートンはマイケル・オラジデに敗北。上位陣には通用せず、中堅選手としてキャリア終了。)
③ドニー・ラロンデ 12R 判定 ムスタファ・ハムショ
(WBC米大陸ライトヘビー級王座決定戦、1987年)
(感想:ラロンデがタイトル獲得。このところ連勝中のハムショ(33歳)。これまで42勝(26KO)3敗2分。ラロンデ(27歳)はカナダのハンサムガイ。悲しい過去がある男で、親に殴られて育った。さらに不運。アイスホッケーをしていたが、左肩をケガして断念。それをカバーしてボクサーとして活躍。左パンチが不自由なところもあるが、28勝(24KO)2敗。ニューヨークでの一戦(リングアナはエド・デリアン)。背が高いラロンデ。体格的に有利に見えるが、足を使って距離を取る。ジャブ、そして必殺の右ストレート。右ストレートからの左ジャブといったテクニックも使用。ハムショは前進。巧くディフェンスしながら左ストレート、フックを当てる巧さを見せる。6R、互いに粗い攻撃でレフェリーから警告。9R、ハムショがローブロー。11Rにもローブロー&ヘディング。ラロンデが連打でお返し。12R、ラロンデの右カウンターがヒット。12R終了。両手を上げて勝利をアピールするラロンデ。判定は3-0。ハムショは意外にもよくパンチを当てていた。それだけに反則がもったいなかった印象。ラロンデは3-0だが、「相手を圧倒する」といった勝ち方ではなかった。映像ではわかりにくかったが、パンチ力に差があったのかも。その後の二人。ラロンデは決定戦でWBC世界ライトヘビー級王者に。しかし、シュガー・レイ・レナードにノドを潰されてKO負け。その負傷は尾を引いた。ハムショは再起戦に勝利後、グラシアノ・ロッシジャーニに1RでTKO負け。それが事実上、最後の試合に。ラフなイメージがあるハムショ。当てる巧さがあったが、ヘディングなどの反則をやってしまう悪い癖。世界王者になれなかったのはそれが原因か?)
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