強打のヘビー級。フォアマン戦後の試合。ポール・ポイリア戦、マーシャル・ティルマン戦、タイロン・エバンス戦、エズラ・セラーズ戦を紹介します。
アレックス・スチュワート(ジャマイカ)
身長191cm:オーソドックス(右構え)
①アレックス・スチュワート 3R TKO ポール・ポイリア
(ヘビー級戦、1992年)
(ダウンシーン)
2R:右ボディでポイリアがダウン
3R:右フックでポイリアがダウン
(感想:デビューから連続KO勝ちで注目を集めたスチュワート。当時はマイク・タイソンが独走しており、「スチュワートのパワーはタイソンに通用するのか?」と話題に。スチュワートはロンドン出身の黒人。その後、ジャマイカ、ニューヨークに移住。アマチュアで活躍し、メダルは獲れなかったがロス五輪(1984年)にはジャマイカ代表で出場。プロ入り後、快調。全試合KO勝ちでイベンダー・ホリフィールドとWBC米大陸ヘビー級王座を懸けて戦ったがTKOで初黒星(1989年)。タイソン、マイケル・モーラーにもKO負け。ジョージ・フォアマンに善戦し、2-0で判定負け。スチュワートはタイソンのように一撃で倒すタイプではない。ジャブ、ストレートを使う正統派。非常に練習熱心という評判があるように「努力型」である。これまで28勝(28KO)4敗。ポイリア戦はフォアマンに負けた再起戦。ポイリアはマサチューセッツ州出身の白人。デビュー以来、29戦全勝(7KO)。アメリカのローカル王座獲得、防衛。ただし、相手は無名の選手ばかり。どんな動きを見せる選手なのか? ニューヨーク・キャッツキルでの一戦。共にガードを上げてジャブ、ワンツー。動きのスピードはそこそこ。しかし、パワーはやっぱりスチュワート。接近しての右フックにパワーがあり、右ストレートからの左フックにも迫力。ポイリアは右アッパーを使うが、かわされる。2R、右ボディでポイリアがロープ外にはみ出すダウン。立ったポイリアにスチュワートが斜め下からのアッパー気味右フック。3R、強烈な右フックでポイリアがダウン。立ったが、セコンドが棄権を申し入れて試合終了。スチュワートが豪快な勝利。ホリフィールド、タイソンといった一級品には敵わないが、中堅選手には強い。ポイリアは動きの機敏さに欠けた。その後、ポイリアは再起戦でトニー・タッカーにTKO負け。ラストファイトは1993年。ラリー・ホームズにTKO負け。トップと勝負できる選手ではなかった。)
②アレックス・スチュワート 10R TKO マーシャル・ティルマン
(ヘビー級戦、1992年)
(ダウンシーン)
10R:連打でティルマンがスタンディングダウン
(感想:WBC6位のスチュワート。ポイリア戦の次の試合も中堅が相手。ティルマンはルイジアナ州ニューオリンズの黒人。これまで10勝(9KO)7敗1分。ルー・サバリース、ヘンリー・アキンワンデ、ジェームス・スミス、カール・ウィリアムスといった実力者に敗北している。アトランチックシティでの一戦(リングアナは眉毛が濃いエド・デリアン)。ティルマンが足で距離を取ってジャブ、右ストレート。スチュワートは攻めの姿勢。打ち下ろすような右ストレート、手首のスナップを効かせたフック、アッパーが迫力。右ストレート、左フックで粘るティルマンだが、10R開始早々に連打でスタンディングダウン。下を向いたままギブアップ、試合終了。スチュワートがフック連打で勝利。打ち方が良かった。しかし、動きのシャープさに欠けるのがあまりにも惜しい(それがトップに立てなかった原因)。ティルマンは強い左フックの持ち主。この試合ではそれを効果的に使うことができず、終始受け身の姿勢だった。その後もティルマンはトミー・モリソンにTKO負けするなど勝ったり負けたりだった。)
③アレックス・スチュワート 6R TKO タイロン・エバンス
(ヘビー級戦、1994年)
(感想:マーシャル・ティルマン戦後も連勝だったスチュワートだが、ホリフィールドとの再戦に判定負け。再起戦に勝利。エバンスと再起二戦目。エバンス(31歳)はオハイオ州の黒人で、身長201cm(リーチは211cm)の大型選手。バスター・マシス・ジュニアに判定負けしている。ネバダ州ラフリンでの一戦(リングアナはチャック・ハル、レフェリーはトビー・ギブソン)。屋外リングでの試合。外が明るいため「決闘」といったイメージ。大きいエバンスはジャブを使うタイプ(大型選手はジャブを使う細かいボクシングをすることが多い。大きな身体でなぜ小さな戦い方をするのだろう?)。左フックをボディからアゴへ連打するなど器用さがあり、パンチにはキレがある。また、左右フック連打に迫力。ただ、これも大型選手にありがちなことだが、動きが緩慢。スチュワート(30歳)はジャブ、ワンツー、フックで攻めの姿勢。互いにディフェンス。エバンスの振りの大きいパンチは正確さに欠ける。5R、スチュワートが右ストレート、連打で攻勢。6R、エバンスがフック連打を浴びたところでレフェリーストップ。スチュワートが積極さと度胸で勝利。大きな相手の懐に飛び込んで強打を叩き込んだ。エバンスは良いパンチを持っていたが、動きのキレに欠けた。その後、エバンスはカーク・ジョンソン、スチュワートとの再戦に敗れて引退。)
④アレックス・スチュワート 3R TKO エズラ・セラーズ
(ヘビー級戦、1998年)
(ダウンシーン)
2R:右ストレートでセラーズがダウン、右フック(?)、左フックで2度、スチュワートがダウン
3R:右フックでスチュワートがスタンディングダウン、左ショート、連打、連打で3度、セラーズがダウン
(感想:タイロン・エバンス戦後、中堅選手を相手にリングに上がるスチュワート。さすがにピークを過ぎ、敗北を喫することも(34歳。42勝(39KO)8敗)。セラーズ(29歳)はフロリダ州ペンサコーラの黒人。これまで15勝(14KO)2敗。デビュー戦の相手は後のWBA王者ブルース・セルドンでTKO負け。その後は中堅選手と試合。クルーザー級のマイナータイトルを獲得するなどこのところ連勝中。ミズーリ州カンザスシティでの一戦。スキンヘッドのセラーズ。サウスポースタイルで右ジャブ、ワンツーで軽快な動き。スチュワートはガードを固めてジャブ、ストレート。いつものように前に出る攻めの姿勢。攻めるスチュワート、カウンターのセラーズ。2Rに波乱。右ストレートでセラーズがダウン。ラッシュするスチュワートだが、反撃されて足に。右フック(?)、左フックで二度ダウン。3R、ダメージが残るスチュワートだが、攻める。右フックでスタンディングダウン。それでも攻めるスチュワート。左ショート、連打、連打でセラーズを三度倒してスリーノックダウン、試合終了。ダウン応酬の激戦。スチュワートには元々ディフェンスの甘さがあるが、攻めの姿勢で何とか勝利。セラーズは基本クルーザー級。巧さはあったが、体格的に不利だったか。その後の二人。セラーズはNABO、IBOのクルーザー級王座獲得。しかし、WBO、次いでIBFの世界クルーザー級王座への挑戦は失敗。ラストファイトは2008年でKO負け。引退後の2013年に心臓の不調により死去(45歳)。スチュワートはランス・ウィテカー、ホルヘ・ルイス・ゴンザレスに二連敗で引退。引退後は酒を扱う仕事をしていたようだが、病気で若くして亡くなった(52歳)。)
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