2024年5月8日水曜日

「負傷で世界王者に」ダオルン・チュワタナ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBA世界バンタム級王者。タイのスピーディなサウスポーファイター。世界戦の高仁植戦、ラクヒン・CPジム戦、フェリックス・マチャド戦を紹介します。

ダオルン・チュワタナ(タイ)

身長 cm:サウスポー

ダオルン・MPペトロリアム 5R 負傷判定 高仁植

(WBA世界バンタム級タイトル戦、1994年)

「負傷で世界王者に」ダオルン・チュワタナ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ダオルンがタイトル初防衛。タイのダオルン。二度WBA世界バンタム級王座を獲得した実績。「ダオルン・チュワタナ」は本名ではないようで、リングネームは複数(他に「ダオルン・チョーシリワット」。タイのボクサーはジムの名前などを付ける習慣。リングネームに「MPペトロリアム」と付けるのは個人的には違和感を覚える)。気が強そうな顔立ちで、後にフライ級で一時代を築くポンサクレックに似ている(サウスポーであるところも)。デビュー当初は敗北もあったが、勝つコツを掴んだか、タイ王座(フライ、バンタム級)、東洋太平洋王座(バンタム級)を獲得。元IBF王者ローランド・ボホール、タシー・マカロスに勝利。タイで初の世界挑戦。ジョン・マイケル・ジョンソンからWBA王座奪取。しかし、問題があった試合。1Rにジョンソンがバッティングで右マブタを負傷。2R開始のゴングに応じられずTKO負け。「1Rでのバッティングによる続行不能」なのだから「ノーコンテスト」なのではないか? よくわからない王座交代劇であったが、「続行不能」を「戦意喪失・棄権」扱いしたようだ。そして、初防衛戦。WBA9位の挑戦者の高仁植は韓国人。これまで無敗。韓国王座、東洋太平洋王座(いずれもJ・バンタム級)獲得。階級を上げて、この初の世界挑戦。タイでの一戦(レフェリーは森田健、ジャッジの一人に浅尾和信)。共に26歳。ダオルンが速い右ジャブ、左ストレート。高は右ストレート、接近して振り回すような左右フック連打。1Rから打ち合う好戦的な二人。バランスの良さはダオルン。高は手数が多い(頭から突っ込んでレフェリーから警告されるシーンも)。2R、ダオルンがキズのドクターチェック(ダオルンは左ストレートを突き刺すように打ち込むが、頭も突き出す。その時にバッティングになってしまう)。3R、激しく連打する高。ダオルンは再びキズをチェックされた後、左ストレートカウンターを打つ。5R、ダオルンがキズのチェック。負傷判定になり、王者防衛。ダオルンがまたしてもキズで勝利。左ストレートと一緒に頭も出す戦い方ではまた同じようなことが起きそう。高は手数を出していたが、「判定負け」。3Rに気合いの入った連打を見せたが、攻撃の正確さに欠けていた印象。その後、高は日本のリングへ。東洋太平洋王座(バンタム級)を獲得したが、初防衛ならず。その後は連敗で引退。)


ダオルン・MPペトロリアム 12R 引分 ラクヒン・CPジム

(WBA世界バンタム級タイトル戦、1995年)

「負傷で世界王者に」ダオルン・チュワタナ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ダオルンがタイトル防衛。二度目の防衛戦。挑戦者ラクヒン(オーソドックス)もタイ人。デビューから全勝。直前の試合で東洋太平洋王座(バンタム級)を獲得している。タイでの一戦。1R、ガードを固めてジャブ、右ストレート、左フックのラクヒン。強いパンチを一発一発正確に当てようとするタイプ。左ストレートを食ってピンチ。ダオルンが激しく連打。ラクヒンは体勢を立て直して応戦。その後も接近戦が続く。ディフェンスしながらパワーのあるパンチ。ダオルンは連打の回転の速さ、ラクヒンは攻撃の正確さがある。映像ではダオルンが手数(コンビネーション、ボディ打ち)で優勢に見えるが、ラクヒンのジャブ、ストレートカウンター、左フックも時折ヒットする(10Rほか)。12R終了。判定はドロー。ダオルンが勝ったように見えたが、ラクヒンの左フックも良かった。判定はともかく、強打のタイ人同士の対決らしい激しさがあった好試合だった。その後、ラクヒンはPABA王座(バンタム級)を獲得、連続防衛。しかし、意外なことに二度目の世界挑戦は無し。通算戦績は27勝(18KO)2分で無敗だった。)


その後のダオルン

三度目の防衛戦で同じタイのウィーラポンに判定負け、王座陥落。再起して連勝。ナナ・コナドゥ(ガーナ)から負傷判定でWBA王座奪回。またしても「負傷」で王座を獲得したダオルン。コナドゥはWBC世界J・バンタム級王座を文成吉に負傷判定負けで奪われたことがある。「負傷」に縁がある似た者同士の二人。


ダオルン・チョーシリワット 12R 判定 フェリックス・マチャド

(WBA世界バンタム級タイトル戦、1997年)

「負傷で世界王者に」ダオルン・チュワタナ「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

10R:右ジャブでマチャドがダウン

(感想:ダオルンがタイトル初防衛。奪回した王座の初防衛戦。マチャドはベネズエラの黒人サウスポー。デビュー戦はTKO負け。連勝してベネズエラ王座(バンタム級)獲得。WBCの地域王座戦(J・バンタム級)で反則負け。WBAの地域王座(J・バンタム級)を獲得してダオルンに挑戦。タイでの一戦。身長差がある二人。スラリとしたマチャド(身長170cm)はボクサータイプ。ガードを固めてジャブ、左ストレート、右フック、斜め下からのしなう左フック。手数を出すが、パンチが軽い印象。背が低いダオルンはパワーでは勝っているが、ディフェンスされて空振りが目立つ。10R、右ジャブでマチャドがダウン。その後、ダオルンがパワーで押し気味。12R終了。判定は2-1。互いにディフェンスし合って有効打が少ないように見えたが、ダオルンのパワーが評価されたか。マチャドのアウトボクシングは世界王座の挑戦者にしては迫力不足。良いパンチを持っていただけにもったいない負け方。その後の二人。マチャドはIBF世界スーパーフライ級王座獲得、連続防衛。王座陥落後も多くの試合に出場したが、負けが多くなっていった。ダオルンは次の試合でコナドゥと再戦。7RでTKO負けして王座陥落、引退。二度世界王者になったが、いずれも負傷によるものであるため「世界王者」としてあまりインパクトを残せず。ただ、力強いパンチを持っていたことは確か。引退後は軍に入隊したらしい。) 

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