2023年11月26日日曜日

「ラカンドンのラフファイター」ビクトル・ラバナレス①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

WBC世界バンタム級王者。世界挑戦&暫定王座。グレグ・リチャードソン戦、李勇勲戦、呉張均戦ほかを紹介します。

ビクトル・ラバナレス(メキシコ)

身長164cm:オーソドックス(右構え)

グレグ・リチャードソン 12R 判定 ビクトル・ラバナレス

(WBC世界バンタム級タイトル戦、1991年)

「ラカンドンのラフファイター」ビクトル・ラバナレス①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:リチャードソンがタイトル防衛。ラバナレスはメキシコ・チアパス州出身。ジャングル奥地に住む先住民族「ラカンドン」の男。実にタフ。大きく振り回す左右フックは見た目は雑な印象だが、当てるテクニックがあるため意外によく当たる。また、ディフェンスも微妙に巧い。アマチュアでは負けたことがなかったという。プロデビュー戦に勝利したが、その後に連敗。連勝したり連敗したりといった不安定なキャリアではあるが、アルマンド・カストロ(後、カオサイ・ギャラクシー、鬼塚勝也と世界戦)をKOするなど実力は確か(後のWBC世界フェザー級王者セサール・ソトには判定勝ち)。負けながら戦い方を覚えたようでこのところ連勝中。「WBC7位」として初の世界挑戦。王者リチャードソンはオハイオ州ヤングスタウン出身の黒人(ヤングスタウンはレイ・マンシーニ、ハリー・アローヨ(共に元世界ライト級王者)も輩出)。典型的なアウトボクサー。「打たせずに打つのが目標」といった感じの試合ぶり。ジェフ・フェネックのWBC世界J・フェザー級王座に挑戦したときは押しまくられてTKO負け(1987年)。その後、ラウル・ペレスを速いジャブで攻略し、WBC世界バンタム級王座獲得。ラバナレス戦は初防衛戦となる。カリフォルニア「グレート・ウェスタン・フォーラム」での一戦。リチャードソンがパンチのある選手ではないため、ラバナレスが初回から左右フックで前進。リチャードソンはディフェンスしながらジャブ、右ストレート。ラバナレスが打たれながらも粗い連打を決める(7Rなど)。攻めるラバナレス、アウトボックスしようとするリチャードソン。12R終了。ラバナレスは両手を上げて自身の勝利をアピール。判定は2-1。よく攻めたが、ラバナレス敗北。リチャードソンのジャブが評価されたもよう。ボクシングで難しいのは「ディフェンスの評価」。「どの程度パンチが当たっているのか」はTV映像ではわかりにくい。そういう場合はリングサイドのジャッジを信用するしかない。辛くも逃げ切ったリチャードソン。次の防衛戦は日本で、相手は辰吉丈一郎。若い挑戦者に追い回されて王座陥落。その次の試合は韓国で文成吉のWBC世界J・バンタム級王座への挑戦。これに判定負けして、それが最後の世界戦に。パワーがあるタイプではなかったため王者としては短命に終わったが、実力者相手にスピードで勝負する面白い存在だった。)

   

ビクトル・ラバナレス 9R 負傷判定 李勇勲

(WBC世界バンタム級暫定王座決定戦、1992年)

「ラカンドンのラフファイター」ビクトル・ラバナレス①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

2R:右フックで李がダウン

(感想:ラバナレスがタイトル獲得。リチャードソン戦後、四連勝のラバナレスにチャンス。リチャードソンを破った新王者の辰吉が網膜裂孔で休養。本来ならばタイトル返上のところ「暫定王座」なるものが作られ、ラバナレスがその決定戦に出場することに(元々ボクシングには「暫定王座」などは無かったような気がする。今では当たり前のように暫定王座戦が行われ、「タイトルの大安売り」になっている)。李はこれまで全勝。韓国バンタム級王座を獲得しているが、これまでの試合は全て地元。アメリカでどんな戦いを見せるか? 「グレート・ウェスタン・フォーラム」での一戦。ジャブ、連打で攻める李。ラバナレスは足を使いながら振りの大きいフックで応戦。李は上半身が固く、あまり器用ではない印象。そのためゴツゴツした打ち合いに。2R、大振りの右フックで李がダウン。その後、共にバッティングで負傷。2-0の判定でラバナレス。ラバナレスはぎこちない選手だが(良く言えば「変則的」)、タフで、どこから飛んでくるかわからないフックを打つ。相手からすれば実にやりにくいタイプ。動きに固さがあった李はそれに対応できず。その後、李は連勝したが、意外なことに二度目の世界挑戦のチャンスは無かった。)

   

ビクトル・ラバナレス 4R TKO ルイス・アルベルト・オカンポ

(WBC世界バンタム級暫定王座戦、1992年)

「ラカンドンのラフファイター」ビクトル・ラバナレス①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(感想:ラバナレスがタイトル初防衛。WBC10位の挑戦者オカンポはアルゼンチンのベテラン選手。グスタボ・バリャスにアルゼンチン王座戦(J・バンタム級)で判定負け、サントス・ラシアルにTKO負け。これらが良い経験になったか、その後、連勝。南米王座(バンタム級)を獲得し、連続防衛中。メキシコでの一戦。小柄なオカンポ。忙しく動きながら距離を取り、意表を突くタイミングでフックを打つ。ラバナレスはいつものように前進、フック連打。ちょこまか動くオカンポ(本人は真剣だが、コミカルな雰囲気も)。ブロックもできるため、ラバナレスのパンチが当たらない。ところが接近戦。フックでの打ち合いに応じるオカンポ。3R、ワンツー、フックでラバナレス優勢。4R、ラバナレスのフックがよく当たり、最後はワンツーが入ったところでレフェリーストップ(観客席が大いに沸いた)。同じように打ち合うのであれば体格が大きい方が有利。ラバナレスが当てるテクニック、タフネスで勝利。オカンポは左フックからの右ストレートといったコンビネーションも使ったが、粗い王者の勢いに飲み込まれてしまった。その後、アルゼンチン王座戦、南米王座戦(いずれもバンタム級)に敗れるなどピークを過ぎていった。)


ビクトル・ラバナレス 12R 判定 呉張均

(WBC世界バンタム級暫定王座戦、1992年)

「ラカンドンのラフファイター」ビクトル・ラバナレス①「世界チャンピオン列伝:ボクシングブログ」

(ダウンシーン)

5R:左フックで呉がダウン

(感想:ラバナレスがタイトル防衛。暫定王座の二度目の防衛戦。WBC1位の挑戦者、呉。デビュー戦の相手はあの李東春(日本では「グレート金山」と呼ばれたことも)で判定負け。その後も負けはあったが経験を積み、韓国王座(バンタム級)を獲得、防衛。日本で後の世界王者、畑中清詞とドロー。このところ無敗で初の世界挑戦。「グレート・ウェスタン・フォーラム」での一戦。共にジャブ。1Rから右フックをヒットさせるなどパワー、手数でラバナレス優勢。呉はよく鍛えられた身体をしているが、攻撃が単発。4R、バッティングでラバナレス出血。それにキレたか、ラバナレスが猛攻、呉はクリンチ。 5R、左フックで呉がダウン。さらにローブローで呉は減点。その後も接近戦。ラバナレスがジャブ、ワンツー、フック連打。ぎこちないが当てる巧さがある。10R、今度はバッティングで呉が減点。12R終了。判定は3-0。手数で決着。呉は李勇勲と同様、タフだが身体が固い。そのため畳み掛ける攻めができない欠点があった。その後、呉は東洋太平洋バンタム級王座を獲得したが、ピークを過ぎて最後は連敗でキャリア終了。世界戦はラバナレス戦のみとなった。)

辰吉丈一郎戦(初戦・再戦)、ダドイ・アンデュハル戦、辺丁一戦、ウェイン・マッカラー戦 

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