WBA世界L・ヘビー級王者。マリオ・ローサ戦、デイブ・リー・ロイスター戦、ジェリー・マーチン戦を紹介します。
エディ・ムスタファ・ムハマド(アメリカ)
身長183cm:オーソドックス(右構え)
①エディ・グレゴリー 8R KO マリオ・ローサ
(ミドル級戦、1974年)
(ダウンシーン)
6R:左ストレートでグレゴリーがダウン
7R:左フックでグレゴリーがダウン
8R:右フックでローサがダウン
(感想:「エディ・ムスタファ・ムハマド」というのは改名後の名。本名は「エディ・グレゴリー」。ニューヨーク・ブルックリン出身の黒人で、イスラム教徒(改名したのは世界王者になった後)。アマチュア時代はニューヨークの大会で優勝するなどの活躍。1972年にプロ入り。連勝だったが、ラダメス・カブレラ(プエルトリコ)にダウンを喫して判定負け(初黒星)。そこからユージン・ハートらに連勝。ローサはニュージャージー州の黒人サウスポーで、国籍はプエルトリコ。ボビー・ワッツ(後、マービン・ハグラーに勝利)に2-1で敗れたことがあるが、戦績はまずまず。ニューヨークでの一戦。正統派のグレゴリー。ダッキングしながらジャブ、ワンツー、接近して左右フック。打ち方は良いが、攻めるときのディフェンスに甘さがある印象。ローサはリズミカルなフットワーク&右ジャブでポイント狙い。時折左ストレートをカウンターでヒットさせる。6R、連打からの左ストレートでグレゴリーがダウン。立ったが、ラウンド終了間際にも連打を浴びる。7R、今度は左フックでダウン。8R、攻めるローサにグレゴリーは右ストレートで応戦。その右パンチが効いたローサ。攻めるグレゴリー。右フックでローサがうつぶせにダウン。立てず、KO。グレゴリーが逆転勝利。真っ直ぐ攻めるクセを突かれてダウンを喫したが、パンチは正確で強かった。ローサは正直なところ魅力に乏しい戦い方。ミドル級で「ポイント狙いのボクシング」は迫力不足。その後、ローサはエディ・デービス、カルロス・デ・レオンらに敗北。階級を上げたことにより苦戦が続いて引退。)
その後のグレゴリー
中堅相手に連勝。実力者ベニー・ブリスコに2-1で敗北。そこから連勝。後のWBC世界ライトヘビー級王者マシュー・フランクリン(マシュー・サァド・モハマド)に2-1で勝利。しかし、ビクトル・ガリンデスのWBA世界ライトヘビー級王座への挑戦は3-0で王座奪取ならず。連勝後、実力者ジェームス・スコットに3-0で敗北(78年、最後の試合。10月)。
②エディ・グレゴリー 5R KO デイブ・リー・ロイスター
(ライトヘビー級戦、1979年)
(ダウンシーン)
4R:左フックでロイスターがダウン
5R:右ボディ、右ストレート、左ボディで3度、ロイスターがダウン
(感想:ジェームス・スコット戦後、二連勝のグレゴリー(負けても諦めず、現役続行)。ロイスターはフロリダ州の黒人。1972年のデビュー戦は判定負け。ジェームス・スコットとドロー。このところマシュー・フランクリン、ロッテ・ムワーレらを相手に連敗中。アトランチックシティでの一戦(リングアナはエド・デリアン、レフェリーはラリー・ハザード)。身長で上のグレゴリー。ワンツー、フック、左ボディ打ち。正確な左パンチを多用。ロイスターは豪快なフックを振るう男。相手から距離を取りながらジャブ、右ストレート、大きなフック。当たったら一発でKOになりそうな迫力のあるパンチだが、パワーを込める分、打ち終わった後のディフェンス、バランスに問題が。接近戦。パワフルなロイスター。グレゴリーは左ボディなど隙を突く攻撃。4R、グレゴリーが左フックからの右ストレート。これが効いたロイスターは劣勢になり、左フックでダウン。5Rには右ボディでダウン。強打で反撃するロイスターだが、さらに二度のダウンでKO。グレゴリーが正確な攻撃&ディフェンスで勝利。ただ、強打を食うなど危ないシーンも。ロイスターはプロらしいパンチを持った強い選手。しかしその後、ロイスターはマービン・ジョンソン、ジェームス・スコット(再戦)に敗れるなどさらに多くの敗北。パワフルだが、ディフェンスに問題。個人的にはそういう選手がいてもいいと思うが、実力がありながら負けが多いキャリアになったのは残念。)
その後のグレゴリー
ロイスター戦後、連勝で二度目の世界挑戦(80年、初試合。3月)。ターゲットはWBA世界L・ヘビー級王者マービン・ジョンソン。インディアナ州インディアナポリス出身の黒人サウスポー。アマチュアで優秀な成績。1972年のミュンヘン・オリンピックではミドル級で銅メダル。プロ入り後は連勝だったが、マシュー・フランクリンとの北米L・ヘビー級王座決定戦でKO 負け(1977年)。ロッテ・ムワーレに判定負け。マーテ・パルロフ(ユーゴ)をTKOで下してWBC世界L・ヘビー級王座獲得。しかし、初防衛戦でマシュー・フランクリンにまたしてもKO負け。ビクトル・ガリンデスをKOしてWBA世界L・ヘビー級王座獲得。グレゴリーを下して初防衛なるか、といったところだったが、TKOでグレゴリーが新王者に。勝ったグレゴリーは「エディ・ムスタファ・ムハマド」に改名。ジェリー・マーチンと初防衛戦。
③エディ・ムスタファ・ムハマド 10R TKO ジェリー・マーチン
(WBA世界L・ヘビー級タイトル戦、1980年)
(ダウンシーン)
4R:連打でマーチンがダウン
10R:右カウンターでマーチンがダウン
(感想:ムハマドがタイトル初防衛。これまで35勝(30KO)5敗1分の王者ムハマド。挑戦者マーチンはカリブ海の島国アンティグア・バーブーダのボランズ出身の黒人。ニックネームは「The Bull」。主戦場はアメリカ。なかなか優秀な選手で19勝(12KO)1敗。北米王座、全米王座を獲得し、残すターゲットは世界王座のみ。直前の試合は実力者ジェームス・スコットに3-0で勝利。ニュージャージー州マカフィーでの一戦(レフェリーはトニー・ペレス。会場では世界王者になる前のトーマス・ハーンズ(WBA世界ウェルター級2位)が観戦)。互いにジャブ、右ストレート。前に出るマーチン、王者らしく応戦するムハマド。共に動きはそれほど速くはないが、パンチは速い。ジャブが中心のマーチンだが、接近戦ではクリンチされてしまう。ムハマドは左ボディ打ちなど隙を突く攻撃、ワンツー。ジャブを打ち合う比較的静かな展開。4R、右ストレートが効いたマーチン。ラウンド終了間際、ムハマドのワンツー、フックが次々にヒットしてロープ際でダウン。「試合終了」と思ったムハマド陣営は盛り上がったが、これは早とちり。5R、ムハマドが左フックからの右ストレート。マーチンはフックで反撃するが、目に見えて勢いが落ちた動き。その後も自分のペースで試合を進めるムハマド。10R、右カウンターでマーチンがダウン。立ったが、連打を浴びてレフェリーストップ。ムハマドが正確なパンチで相手を弱らせる老獪な試合運びで勝利。もっと勢い良く攻めてもよかったようにも見えたが、じっくりと試合を進めた。マーチンは一発のパンチは悪くはなかったが、「攻める激しさ」に欠けていた。その後、マーチンはマシュー・サァド・ムハマド、ドワイト・ムハマド・カウィのWBC世界L・ヘビー級王座に挑戦したが、いずれもTKO負け。ジョニー・デービス、プリンス・ママ・モハマッドに敗れて引退。世界王者になってもおかしくないパンチを持っていたが、世界王座にはついに手が届かなかった。)
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